離婚事件の依頼者さんから、万が一、離婚調停中や離婚訴訟中に依頼者さんが死亡したときに備えて、配偶者が依頼者さんの財産を相続できないようにしておきたいというご相談を受けることがあります。
配偶者には、相続権があり、法定相続分は2分の1です。配偶者は、離婚をする場合にも、財産分与として原則2分の1の財産を取得しますが、財産分与の対象となるのは、共有財産のみですので、婚姻中に相続等で取得した特有財産は含みません。
そのため、特に、多額の特有財産を保有されている方や婚姻期間が短くて共有財産がほとんど存在しないような方は、離婚の係争中に死亡し相続が発生した場合に備えたいとの思いを抱かれるようです。
配偶者に相続させないような内容の遺言を作成しておくという方法があります。 しかし、配偶者には遺留分が認められていますので、遺留分相当額の財産は配偶者にわたってしまいます。
推定相続人である配偶者の相続資格を奪う制度である廃除を利用することが考えられます。 廃除を求める審判が確定することにより、配偶者の相続資格がなくなりますので、配偶者は遺留分も請求できなくなります。
被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
民法893条
配偶者への廃除を求めるパターンとしては、離婚を求めての離婚協議中の場合、離婚はしないけれども廃除を求める場合、相手方からの離婚を拒みつつ廃除を求める場合など、様々な状況があると思います
この点、生前に廃除を裁判所に申し立てた場合は、審判のなかで相手方配偶者と関わり合いをもつことになりますので、多くの方は、密かに遺言で廃除の意思表示をすることが多いのではと思います。 遺言で廃除をする場合には、遺言執行者をつける必要があるなど、注意点がありますので、詳しくは遺言書作成例12:財産を与えたくない相続人がいる!~相続人を廃除する遺言書~をご覧ください。
では、具体的にどのような場合に配偶者の廃除が認められるのでしょうか。
廃除が認められる要件は、
のいずれかに当てはまる必要があります。
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべきものをいう。以下同じ)が、被相続人に対して虐待をし、もしくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を裁判所に請求することができる。
民法892条
配偶者は、離婚すれば相続権はなくなりますので、配偶者の廃除を考える際には、離婚との関連性が問題となります。 この点につき、大阪高等裁判所決定 令和2年2月7日は、次のような基準を示しています。
推定相続人の廃除は、被相続人の意思によって遺留分を有する推定相続人の相続権を剥奪する制度であるから、廃除事由である被相続人に対する虐待や重大な侮辱、その他の著しい非行は、被相続人との人的信頼関係を破壊し、推定相続人の遺留分を否定することが正当であると評価できる程度に重大なものでなければならず、夫婦関係にある推定相続人の場合には、離婚原因である「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)と同程度の非行が必要であると解するべきである。
上記裁判例は、離婚原因である「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)と同程度の非行が必要としていますが、結論として、配偶者からの①離婚請求、②不当訴訟の提起、③刑事告訴、④取締役の不当解任、⑤婚姻費用の不払い及び⑥被相続人の放置が主張されながらも、
上記①ないし⑥の各事由は、被相続人と抗告人との夫婦関係の不和が高じたものであるが、上記事業を巡る紛争に関連して生じており、約44年間に及ぶ婚姻期間のうちの5年余りの間に生じたものにすぎないのであり、被相続人の遺産形成への抗告人の寄与を考慮すれば、その遺留分を否定することが正当であると評価できる程度に重大なものということはできず、廃除事由には該当しない。
配偶者には、共有財産について潜在的な持分が認められているところ、夫婦の財産の多くが廃除を求める側の名義になっていた場合に廃除を認めると、廃除された側は潜在的な持分までを否定されることになります。
配偶者の廃除を検討する際には、そういったところも考慮せざるを得ず、最低限の基準として離婚原因としての「婚姻を継続し難い重大な事由」と同程度の事情は必要となりますが、かかる要件を満たしているように思われるような事案においても、廃除についてはより厳格に判断されるのではないかと考えられます。
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