弁護士 杉浦 恵一
2020年3月13日に配信された日本経済新聞の記事で、無断出産に関する損害賠償などが認められたという報道がありました。
事案としては、ある夫婦が受精卵を凍結保存しており、その後、この夫婦は別居したようですが、別居中に、妻が、受精卵移植を行うクリニックに対して、夫の署名を自分で記入した移植同意書を提出した上、凍結保存されていた受精卵を妻に移植させ、妻が出産したという事案のようです。
なお、この出産の後で、この夫婦は離婚しているということでした。
元夫は、元妻と受精卵移植を行ったクリニックに対して2000万円の損害賠償請求を行い、これに対して大阪地方裁判所では、2020年3月12日、元妻に対して、慰謝料などとして880万円を支払うように命じる判決が出されたようです。
この事案では、受精卵の移植を行ったクリニックに対しては、虚偽の署名がされた同意書とは簡単には判断できないということで、請求は認められませんでしたが、元妻に対しては、子供をもうけるかどうかという元夫の自己決定権を侵害したとして、請求が認められたということです。
なお、元夫は、別件として、生まれた子が嫡出子でないことの確認を求めて、大阪家庭裁判所に裁判を起こしたそうですが、こちらは親子関係が認められるということで、元夫の請求は棄却されている模様です。
日本では、晩婚化の進展とともに、高齢出産が増えてきているようです。今後、技術のさらなる発展に伴って、受精卵を凍結して保存しておく事例が増えていくのではないかと思われますが、いったん受精卵を保存したものの、その後、夫婦関係が悪化して、受精卵の取り扱いで揉める事例も増えていく可能性があります。
今回の事例では、880万円の損害賠償が認められたようですが、おそらく80万円は弁護士費用相当額(損害の1割)ではないかと予想されます。そうすると、裁判所は、800万円の損害賠償を認めたと考えられますが、報道からだけでは、どのような理由で800万円になったのか不明です。
過去には、新生児の時に取り違えられた子の慰謝料として3000万円が認められたという判例もありますので、精神的な苦痛に対しても、事実関係によっては謝料が高額になる可能性はあります。
これ以外にも、別件で親子関係が否定されなかったということですので、裁判所は、親子関係が否定されなかったことも考慮して、800万円の損害賠償を認めた可能性も考えられます。
親子関係が認められた結果、その後どのようになったのかは、今回の事案では分からないのですが、親子関係が認められている以上、理屈の上では、生まれた子は父親に対して、養育費を請求することが可能です。
また、親子ですから、理屈の上では、父親が亡くなった場合には、相続権を主張して、遺産分割に参加したり、場合によっては遺留分を請求したりすることも考えられます。
このように、一度親子関係が認められますと、長期にわたって色々な法的関係が生じることになります。
生まれた子自身には落ち度はありませんので、生まれた子の権利は保障しなければなりませんし、かといって父親の方には何の補償もなくてもいいのか、という問題もあろうかと思われます。
例えば、月3万円の養育費が認められ、それが20年間続きますと、累計では720万円になります。
裁判所は、こういったところから、それなりに高額の損害賠償を認めたという可能性も考えられます。
生命に関する医療・科学技術が発達しますと、これまでの法律では想定していなかった問題が生じる可能性がありますので、今後もこのような問題は増えていくのではないかと思われます。
事務所外観
令和6年4月25日に名古屋家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停申立事件 について家事調停を申立てました。
令和6年4月10日に名古屋家庭裁判所に婚姻費用分担調停申立事件 について家事調停を申立てました。
令和6年4月3日に名古屋家庭裁判所岡崎支部に離婚請求事件 について審判が出ました。
令和6年4月2日に名古屋家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停申立事件 について家事調停を申立てました。
令和6年4月2日に岐阜家庭裁判所に離婚等請求事件 について審判が確定しました。
令和6年4月1日に名古屋家庭裁判所一宮支部に離婚等請求事件 について人事訴訟を提起しました。
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