近年、LGBTの方々が社会において認知・許容されてきていることにより、異性同士にこだわらない多様な性のあり方が広がってきました。
異性同士の交際だけでなく、同性同士の交際も増加してきている傾向にあります。
では、男女の夫婦の一方が、同性同士で不倫をした場合、民法における「不貞行為」に当たるとして、慰謝料の支払義務や離婚原因として認められるのでしょうか?
まず、離婚原因となる「不貞行為」とは、自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいいます。
ここにいう「性的関係」とは、性器の挿入を伴う性行為を指すと解釈されてきました。
そのため、これまでは配偶者以外の異性と性的行為をした場合にのみ「不貞行為」に該当と考えられてきました。
実際にも、「不貞行為」とは配偶者以外の異性との性的行為をすることを指すとされ、同性同士の性的行為は「不貞行為」には当たらないと判断された裁判例があります(名古屋地裁昭和47年2月29日判決)。
ただし、同性同士の性的行為によって夫婦の婚姻関係が破綻した場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するものとして、離婚原因になるとともに、慰謝料の支払義務があると判断されました。
もっとも、この裁判例は、夫が男性と同性愛の関係にあった事件ですが、このような夫について、「性的に異常な性格を有していることが明らかである」、「自身の努力と適確な医学的措置によって矯正することも可能ではないか」と指摘しています。
このように、「不貞行為」とは配偶者以外の異性と性的行為をすることを意味するとしていた一方で、裁判所は性的多様性への理解について十分ではありませんでした。
しかし、このような裁判所の考え方は近年変化してきました。
たとえば、同性同士の性的行為を「不貞行為」だとして慰謝料の支払義務を認めたもの裁判例として、東京地裁平成16年4月7日判決があります。
この裁判例では、「不貞」とは、性別の異なる相手方と性的関係を持つことだけでなく、性別の同じ相手方と性的関係を持つこと含まれるとした上で、
妻が3人の女性と性的関係を持ったことを「不貞」に該当するとして、妻は夫に対し慰謝料の支払義務がある
と判断されています。
また、
同性婚関係にあった女性が、男性(性同一障害であり、後に女性に性別変更)との間で不貞行為をしたことを理由とする慰謝料請求をした
という事件もあります(東京高裁令和2年3月4日判決)。
そこでは、まず、同性婚においても、「婚姻に準ずる関係から生じる法律上保護される利益を有する」ため、「両者間の合意により、婚姻関係にある夫婦と同様の貞操義務等を負うこと自体は許容される」と判断されました。
その上で、同性同士のカップルの一方が性的関係を結んだことについて、婚姻関係に準ずる本件関係を解消させたとして、慰謝料の支払義務があると判断しました。
この裁判例は、同性同士の不倫が「不貞行為」に当たるのかについて直接判断したものではありません。
しかし注目すべき点として、どのような行為をもって「性的関係」と認定されたかという点が挙げられます
すなわち、この裁判例では、
複数回にわたるペッティング(性器の挿入を伴わない性行為)に及んだことをもって、性的関係を結んだ
と判断されました。
このことから、
・異性同士だけでなく、同性同士においても「不貞行為」と認定される可能性があること
・一昔前と比べて、裁判所においても性の多様性について柔軟に考えるようになってきたこと
を読み取ることができます。
このような流れの中で、妻と不倫した女性に対して、夫が慰謝料請求をすることができるかどうかが争われた事件で、同性同士の性的行為でも「不貞行為」にあたるとして、女性に慰謝料など11万円を支払うよう命じる判決が出されました(東京地裁令和3年2月16日判決)。
この判決では、
「不貞行為」とは男女間の行為に限らず、「婚姻生活の平和を害するような性的行為」も「不貞行為」に当たる
と判断しました。
その上で、
同性同士の性的行為により「既存の夫婦生活が離婚の危機にさらされたり形骸化したりする事態も想定される」として、妻と女性の行為が「不貞行為」に当たる
と判断しました。
以上のように、一昔前までは社会的に性的少数者への配慮が不十分であったことも反映して、裁判所では同性同士の不倫は「不貞行為」に当たらないと判断されてきました。
しかしながら、近年では、性的多様性が広く認められてきており、同性婚への法的保護の要請が高まるとともに、同性同士の不倫も「不貞行為」であると判断されるようになってきました。
このように裁判所においても性別に関係なく、当事者の意思や生活実態を尊重する傾向が強くなってきており、今後は同性同士の不倫も「不貞行為」と判断され、慰謝料の支払義務が認められる可能性が高いと思われます。
また、同性同士の性的行為が「不貞行為」に該当しないとしても、それによって夫婦関係が破綻した場合には、性的行為をした当事者は、慰謝料の支払義務が認められる可能性があることにも注意が必要です。
余談にはなりますが、上記のような裁判所の判断が、異性同士における「不貞行為」の認定において、果たしてどのように影響してくるのか、つまり、異性同士の「不貞行為」においては性器の挿入を伴うことまで必要であるのか、それとも、同性同士のように性器の挿入を伴わない性的関係も「不貞行為」と認められる可能性があるのかについては、今後の裁判例の動静を見守っていくしかないと思われます。
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令和6年4月3日に名古屋家庭裁判所岡崎支部に離婚請求事件 について審判が出ました。
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