監護している子が一方の親により連れ去られた場合には、まず、現実に子を連れ戻すための方法について検討しましょう。
その方法としては、
があります(なお、審判には時間を要するため審判前の保全処分として子の引渡しを命じてもらう方法があります。)。
ここでは、「1.人身保護法の適用により、裁判所に子の連れ戻しを命じてもらう方法」についてご説明いたします。
「2.家庭裁判所に子の引渡しの審判を求める方法」については、下記『子の奪い合い紛争』をご参照ください。
離婚前別居中あるいは離婚後において、一方の親が他の親の下において監護・養育されていた子どもを連れ去った場合において、その子を連れ戻すための方法として、人身保護法に基づく引渡しを求めることができます。
人身保護法とは、現に不当に奪われている人身の自由を裁判所の判断により迅速かつ容易に回復することを目的として、法律上の正当な手続によることなく不当に身体の自由を拘束されている者について、その救済を裁判所に請求することができる旨を定めた法律です。
もっとも、人身保護法に基づく子の引渡しは常に認められるものではないことに注意しましょう。
婚姻中別居時における子の連れ去りのケースにつき、人身保護法の救済の要件である「拘束の顕著な違法性」(人身保護法規則4条)を認めるには、「拘束者が子を監護することが子の福祉に反することが明白であること」を要するものとされています(最高裁平成5年10月19日判決)。
これは非常に厳格な要件であり、その背景には、人身保護法は違法な身体拘束を受けている者を簡易・迅速な手続により救済するための緊急事態に対する救済措置のための法律であり、子の監護・養育に関する紛争の解決は基本的には家庭裁判所を通じて行われるべきものと考えられているからです。
人身保護法の適用により子の連れ戻しの請求が認められるために必要となる「拘束者が子を監護することが子の福祉に反することが明白であること」の具体的場合としては、たとえば家庭裁判所の手続において他方の親の親権の行使が制限されているのに、これに従わないような場合、あるいは、子が一方の親の監護下において安定した生活を送ることができるのに、他方の親の監護下においては著しくその健康が害され、若しくは、満足な義務教育を受けることができないなどの例外的場合であるものと理解されています(最高裁平成6年4月26日判決)。
なお、以上の人身保護法の適用による子の連れ去りの救済に関する厳しい要件は婚姻中別居時における子の連れ去りに関するものであり、離婚後の非監護権者による子の連れ去りの場合における人身保護法の適用においては、既に当事者の協議あるいは家庭裁判所の手続を通じて単独の親権者を決めた後の問題あることから別の判断のなされる可能性があります。
子の連れ去りの救済方法として人身保護法を使うことについて、少なくとも現在の実務においては、謙抑的であるべきとの考え方です。
その理由としては、先に説明したとおり、本来人身保護法は不当な身体拘束を救済するための緊急の必要性のある場合を想定した例外的措置のための法律であること及び子の連れ去りの問題の解決は、家庭の問題を解決する専門機関である家庭裁判所の手続によるべきであるとの考えによります。
したがって、現在では、子の連れ去りの問題については、家庭裁判所に対する救済の申立という方法を原則としています。
なお、親権者であることを理由として、連れ去られた子を裁判上の手続を経ることなく実力行使により連れ戻すことは、未成年略取罪(刑法224条)に問われる可能性があるため避けた方がいいと思われます。
事務所外観
令和6年4月25日に名古屋家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停申立事件 について家事調停を申立てました。
令和6年4月10日に名古屋家庭裁判所に婚姻費用分担調停申立事件 について家事調停を申立てました。
令和6年4月3日に名古屋家庭裁判所岡崎支部に離婚請求事件 について審判が出ました。
令和6年4月2日に名古屋家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停申立事件 について家事調停を申立てました。
令和6年4月2日に岐阜家庭裁判所に離婚等請求事件 について審判が確定しました。
令和6年4月1日に名古屋家庭裁判所一宮支部に離婚等請求事件 について人事訴訟を提起しました。
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