一度も同居をしたことがない配偶者から婚姻費用を請求されています。
支払わなくてはいけませんか。
結婚したものの、一度も同居することなく別居が続いているという方からのご相談は、それほど珍しくはありません。立場によってご相談の内容は様々ですが、今回は、婚姻費用についての興味深い裁判例を見つけましたのでご紹介します。
「一度も同居をしたことがない配偶者に、婚姻費用を支払わなくてはいけませんか」
→結論からお伝えすると、多くの場合、婚姻後一度も同居をしていなくても、婚姻費用を支払う必要があるといえます。
ご紹介する裁判例は、原審と抗告審とで、裁判所の判断が分かれました。
原審は、夫から妻に対し婚姻費用を支払う義務はないと判断しましたが、抗告審は、月6万円の婚姻費用を支払うように命じました。
判断が分かれた理由は、婚姻費用分担義務についての考え方の違いからきていると思われます。
原審は、婚姻費用分担義務が生じる理由について、単に入籍するだけではなく、実際に夫婦が同居して協力関係を築くという事実状態の存在を重視しましたが、抗告審は、婚姻費用分担義務を、婚姻という法律関係そのものから生じる義務だと捉えています。
実務上は、抗告審の考え方(分かりやすく言うと、信義則違反と認められるような事情がある場合は別として、婚姻した以上は、それが法的に継続している限り、別居していようが破綻していようが、婚姻費用の支払い義務がある)が採られているものと思われますが、原審の考え方に共感を持つ方もいらっしゃるのではないかと思われます。
夫
婚姻時37歳
会社員 年収536万円
うつ病との診断あり
妻
婚姻時41歳
行政書士
年収 102万円(抗告審の認定)
実家暮らし
AさんとBさんは、令和2年1月からよく会うようになり、令和2年6月から交際を開始すると同時に婚約し、令和2年8月に婚姻しました。
夫Aさんと妻Bさんは、入籍後も週末に会い、ホテルに宿泊したり食事をするなど一緒に過ごしましたが、すぐに同居はしませんでした。
令和2年9月、夫AさんとBさんは、二人で住むための希望に沿った住居が見つかったため、令和2年10月17日からの入居予定で、賃貸借契約を締結しました。
そうしたところ、令和2年10月12日、同居を開始することなく、妻Bさんが同居を拒否し、以後、夫Aさんとは会わなくなりました。
令和3年4月、妻Bさんは、夫Aさんに対し、婚姻費用を請求するため調停を申立てました。
これに対し夫Aさんは、妻Bさんには、夫Aさんと同居又は健全な婚姻生活を送る意思がなく、同居を拒んでいることを理由に、婚姻費用の支払を拒否しました。
夫婦が同居して共同生活を営むと、各自独立して生活していた時とは異なり、共同化した家事や育児を分担することで、夫婦の一方は就労の制約を受けながら、内助の功により他方の勤労を支え、これにより得た収入から扶助を受けるという相互的な協力扶助関係が成立する。そうした夫婦の同居協力関係の下での夫婦間の扶助は、自己と同程度の生活を保障するいわゆる生活保持義務となる。
夫婦が同居生活を始めた後で、後に夫婦の別居が開始した場合であっても、育児の分担関係が残っていれば、同居中からの協力関係は継続しているから、同居中の生活保持義務も継続させる必要が認められるし、そうでなくても、同居中の家事や育児の分担の犠牲で就労機会を逃した無責の主婦等に対しては、相当期間、同居中の生活保持義務を継続させる必要が認められる。
本件当事者は、婚姻前に互いの価値観を理解するのに十分な交流を踏まえていれば、そもそも婚姻が成立することもなかったと推認できる。当事者間の婚姻はあまりに尚早の婚姻届出であって、本件において当事者間の夫婦共同生活を想定すること自体が現実的ではない。
通常の夫婦同居生活開始後の事案のような生活保持義務を認めるべき事情にはないし,妻Bさんにおいて婚姻前と同様に自己の生活費を稼ぐことは可能であるから,夫Bさんに婚姻費用分担金の支払をさせる具体的な必要は認められない。
夫婦は、婚姻から生ずる費用を互いに協力し扶助する義務を負い(民法752条)、婚姻から生ずる費用を分担する(民法760条)。
この義務は、夫婦の他方に自己と同程度の生活を保障するいわゆる生活保持義務であり夫婦が別居しているものでも異なるものではない。
婚姻費用分担義務は、婚姻という法律関係から生じるものであって、夫婦の同居や協力義務の存在という事実状態から生じるものではない。
もっとも、婚姻関係の破綻について専らまたは主として責任がある配偶者が婚姻費用の分担を求めることは信義則違反となり、婚姻費用の分断請求が認められない場合や減額される場合がある 。
妻Bさんに婚姻関係を形成する意思がなかったということもできない。
妻Bさんが婚姻費用を請求することが信義則違反というような事情はない。
上記の裁判例からも分かるように、同居をしていなかったとしても、原則として法律上夫婦となることで、夫婦には、婚姻費用分担義務が生じます。
もっとも、夫婦関係が破綻したことについて責任のある配偶者に対してまで婚姻費用を支払ってあげる必要はないことから、例外的に、同居に応じない配偶者に婚姻費用を請求することが信義則違反だといえるほどの責任が認められる場合には、婚姻費用を支払う必要はないことになります。
どういった場合に信義則違反と認められるかですが、浮気などは、信義則違反と認められる可能性があるといえますが、上記の裁判例のように、同居前に不仲になったという場合には、婚姻費用を請求することが信義則違反とまでは認められない傾向にあると考えられます。
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