離婚の相談等において、配偶者が(性)風俗店を利用しているという話を伺うことがあります。
風俗店の利用が認められれば、不貞行為に該当するものとして、直ちに離婚や慰謝料請求が認められるのでしょうか。
そもそも不貞行為とは、何でしょうか。
不貞行為とは、「婚姻している者が婚姻外の異性と自由な意思のもとに性的関係を結ぶこと」であるといわれています。
法律上は、民法の770条1項1号に、離婚が認められるための原因として、「配偶者に不貞な行為があったとき」との規定があります。
したがって、配偶者の一方が不貞行為に及んでいたと認められる場合には、
離婚の訴訟において、離婚請求が認められるということになります。
また、夫婦は相互に貞操義務を負っていると考えられているため、これに反して他の異性と性的関係に及んだ場合には、
これにより生じる精神的苦痛について慰謝料の支払義務を負うことになります。
さらに、配偶者の一方と不貞行為に及んだ第三者(不貞相手)も、夫婦の婚姻共同生活の平和を害したものとして、
不貞に及んだ配偶者と共に(連帯して)慰謝料の支払義務を負うものとされています。
それでは、配偶者が風俗店を利用している場合には、離婚や慰謝料の請求が認められるのでしょうか。
以下では、参考になりそうな裁判例を紹介します。
事案としては、原告である妻が、夫と不貞行為に及んだとして、被告である風俗店(ホテルヘルス店)に勤務している女性に対して、
精神的苦痛についての慰謝料を請求したというものです。
なお、上記店舗は性交渉を伴う風俗店ではないため、性交渉に及んだかどうか自体についても争いがありましたが、
裁判所は、性交渉があったものと認定をしています。
結論として、裁判所は、3週間の間に二度上記店舗を利用したにとどまり、
店舗の従業員と利用客という関係を超えた個人的な男女の関係があったとまでは認められないとしたうえで、
そのような関係で行われた性交渉については、直ちに夫婦の婚姻共同生活の平和を害するものとは解し難く、
仮に害することがあるとしてもその程度は客観的に見て軽微であるとして、慰謝料請求を棄却しました。
なお、裁判所は、上記店舗が本来性交渉をサービスとして提供していない業態であることは、当該性交渉が、
夫婦の婚姻共同生活の平和を害するかどうかとは別問題であるとしています。
事案としては、原告である妻が、夫と不貞行為に及んだとして、被告である風俗店(いわゆるソープランド)に勤務していた女性に対し、
精神的苦痛についての慰謝料を請求したというものです。
被告は、原告の夫と知り合った当時は上記店舗に勤務しており、店舗のサービスとして性交渉に及んでいましたが、
上記店舗を辞めた後も、原告の夫から上記店舗に勤務していたときと同様に対価の支払いを受けて性交渉に及んでいました。
裁判所は、性的サービスの提供を業務とする本件店舗において、 利用客である原告の夫が対価を支払って被告と性交渉に及んでいたことについて、 それ自体が直ちに婚姻共同生活の平和を害するものではないとして、 被告が故意または過失によって精神的損害に寄与したものとは認めがたいとした一方で、 本件店舗を辞めた後については、原告の夫が、単に性的欲求の処理にとどまらず被告に好意を持っていたからこそ、 本件店舗の他の従業員ではなく、被告との本件店舗外での肉体関係の継続を求めたのであり、 被告もこれを認識し、又は容易に認識できたのに求めに応じていたものと認められるとして、 被告が専ら対価を得る目的で肉体関係にを持ったとしても、婚姻共同生活の平和を害し、 原告の妻としての権利を侵害することになることを十分認識していたものと認めるのが相当であるとして、 慰謝料の支払いを(一部)命じました。
事案としては、原告である妻が、離婚後の元夫に対し、風俗利用等を理由とする、離婚についての慰謝料を請求したというものです。
なお、原告は、風俗店利用の他にも浪費やモラハラといった原因を主張していますが、ここでは割愛します。
原告は、離婚する前に、
被告の財布の中や、居宅内等に複数の風俗店のポイントカードや会員証、割引券等を所持していることを発見し、
これらの各店舗の利用があったと主張したのに対し、
被告は、上記のうち一店舗を除いては利用しておらず、その他は友人から冗談半分に渡されたものであると主張しました。
裁判所は、風俗店の利用について、被告の認める1店舗以外については、利用を認めるに足りる証拠がないとして認定をせず、 上記1店舗についても、性的なサービスを受けたかどうかについては認めるに足りる証拠がないとして、 不貞行為を認定しませんでした。
以上の裁判例を見ていくと、性風俗の利用については、それが店舗のサービスとして従業員と利用客との範囲を超えたものでないかぎり、 例え性交渉を伴うものであったとしても、それ単独で不貞行為として離婚の原因や慰謝料の原因にはならない可能性が高いと思われます。
したがって、風俗店の利用行為を不貞行為として主張していくためには、
店舗外で会っていることや、私的な連絡をしていること等を立証して、
利用客と従業員という関係を超えた男女の関係に至っているということを明らかにしていく必要があると分析できます。
さらに、風俗店の利用以外の事情も併せて主張していくことで、
婚姻関係の破綻や精神的苦痛が生じたこと等を明らかにしていくといった工夫も必要になると思われます。
また、そもそも風俗店の利用について相手方が争う場合には、利用したことを立証できるかという問題もあります。 上記で見た通り、店舗のカードや会員証を持っているだけでは、 店舗を利用してサービスを受けたと直ちには認められない可能性がありますので注意が必要です。
事務所外観
令和6年4月25日に名古屋家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停申立事件 について家事調停を申立てました。
令和6年4月10日に名古屋家庭裁判所に婚姻費用分担調停申立事件 について家事調停を申立てました。
令和6年4月3日に名古屋家庭裁判所岡崎支部に離婚請求事件 について審判が出ました。
令和6年4月2日に名古屋家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停申立事件 について家事調停を申立てました。
令和6年4月2日に岐阜家庭裁判所に離婚等請求事件 について審判が確定しました。
令和6年4月1日に名古屋家庭裁判所一宮支部に離婚等請求事件 について人事訴訟を提起しました。
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