相手方と離婚条件がまとまり、ほっとしている方もいると思います。しかし、離婚条件がまとまったらそこで終わりではありません。
離婚後にやらなければならない手続は以外と多く、中には期間制限が定められているものもあります。
今後、数回にわたり、離婚後の手続きを紹介していきますので、離婚後の手続きをされる際に、参考にしていただけますと幸いです。
今回ご紹介するのは、①離婚届けの提出と②氏の変更手続きです。
(1) | 提出期限があるということ |
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代表的な離婚手続として、「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」があります。
ア 協議離婚の場合 |
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協議離婚は、当事者の合意と離婚届の提出によって離婚が成立するものであり、当事者で特に期限を定めない限り、離婚届の提出期限はありません。 |
イ 調停離婚・裁判離婚の場合 |
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しかし、調停離婚と裁判離婚の場合、離婚届の提出期限につき、法律上の定めがあります。
調停離婚の場合には、離婚調停が成立した日から10日以内に、離婚届を提出する必要があります(戸籍法77条1項、同法66条)。 裁判離婚の場合は、判決が確定した日から10日以内に、裁判離婚のうち和解による離婚の場合は、和解が成立した日から10日以内に、離婚届を提出する必要があります。 |
ウ 提出期限が過ぎてしまった場合 |
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提出期限が過ぎてしまった場合でも、離婚自体は受理されます。
もっとも、正当な理由なく上記提出期限が過ぎてしまった場合には、簡易裁判所から、5万円以下の過料が科される可能性はあります(戸籍法137条)。 |
(2) | 離婚届出先によって必要書類が異なること |
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離婚届の提出は、提出する区役所によって、必要書類が異なりますので注意が必要です。
ア 区役所によって違いがないもの
イ 提出先が本籍地の区役所かそれ以外で違いのあるもの
離婚届の提出先の役所が本籍地に該当していない場合には、
が必要となります。
戸籍謄本は、原則として本籍地のある役所で取得することになります。
つまり、離婚届は本籍地ではない役所にも提出することができますが、事前に本籍地のある役所から戸籍謄本を取り寄せておく必要があります(郵送でも可)ので、注意が必要です。
氏の変更手続に関しては、誰の氏をどう変更したいのかにより、手続が異なってきます。
以下、便宜上、妻が結婚にあたり名字を変更したと仮定し、妻の立場から見ていきます。
(1) | 妻が自身の氏を旧姓に戻したい場合 |
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離婚により、名字を変更した妻は、旧姓に戻るのが原則です。
また、旧姓に戻る場合、妻は離婚前に入っていた親の戸籍に戻ることができます。
この場合、妻は、離婚届の「婚姻前の氏に戻る者の本籍」欄の「妻はもとの戸籍に戻る」にチェックを入れ、親の本籍を記載するだけで足ります。
(2) | 妻が婚姻中の氏を使い続けたい場合 |
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離婚すれば原則として旧姓に戻りますが、離婚から3ヶ月以内に届け出をすれば、婚姻中の氏をそのまま使い続けることができます。
この場合、妻は、離婚届の「婚姻前の氏にも戻る者の本籍」欄には何も記載せず、「離婚の際に称していた氏を称する届」を本籍地又は住所地に提出することになります。
なお、婚姻中の氏を使い続ける場合には、妻は新たに戸籍を作る必要があります。
(3) | 子の氏を妻の旧姓と揃えたい場合 |
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離婚をしても、子は父親の戸籍に入ったままとなります。
妻が離婚にあたり自身の旧姓に戻し、子も妻の旧姓に揃えたい場合には、以下の手続を踏む必要があります。
ア ①家庭裁判所にて、「子の氏の変更」の申立て |
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まず、家庭裁判所に、「子の氏の変更」の申立てをする必要があります。
当該申立てにあたり、子の戸籍謄本(全部事項証明書)と夫と妻の戸籍謄本(全部事項証明書)が必要となりますが、この場合、離婚の記載のある戸籍謄本が必要であることは注意が必要です。 離婚届の提出により夫婦は離婚となりますが、通常、離婚したことが戸籍に反映されるまで、1週間~10日かかるといわれています。そのため、本申立てをするには、離婚届の提出後、戸籍が反映されてから、戸籍謄本を取得する必要がありますので、ご注意ください。 |
イ ②役所への届け出 |
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①により、子の氏の変更許可が出たとしても、それだけで子の氏が変更されるわけではありません。
子の戸籍を移動するためには、家庭裁判所にて許可を得た後、改めて子の本籍地又は届出人の住所地の役所に届出をする必要があります。本届出にあたっては、審判書謄本のほか、戸籍謄本などの資料の提出を求められることがありますので、事前に役所にて必要書類を確認しておいた方がよいと思われます。 本届け出により、戸籍上も子の氏が妻の旧姓と揃うことになります。 |
(4) | 妻も子も婚姻中の氏を使い続けたい場合 |
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ア 妻について |
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妻については、上記のとおり、離婚から3ヶ月以内に、「離婚の際に称していた氏を称する届」を本籍地又は住所地に提出することになります。 |
イ 子について |
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子については、離婚により、氏が変更されるわけではありませんので、何も手続きを取らなくても、婚姻中の氏を名乗り続けることはできます。
もっとも、上記のとおり、離婚をしても、子は父親の戸籍に入ったままとなります。つまり、離婚により、子の戸籍と妻の戸籍がバラバラになることになります。 妻が、子を自身の戸籍に入れるためには、上記と同様、子につき、「子の氏の変更」申立てをする必要があります。 形式上、子の氏は何も変わりませんが、この場合にも、①「子の氏の変更」申立てをした後、②役所に届け出る必要がありますので、ご注意ください。 |
今回は、①離婚届けの提出と②氏の変更手続につき、紹介しました。
いずれも、どのご夫婦においても関係し得る事情です。
①離婚届には提出期限が定められていること
②氏を変更する場合には、裁判所等で手続きを踏む必要があること
は、押さえておいていただけますと幸いです。
事務所外観
令和6年4月25日に名古屋家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停申立事件 について家事調停を申立てました。
令和6年4月10日に名古屋家庭裁判所に婚姻費用分担調停申立事件 について家事調停を申立てました。
令和6年4月3日に名古屋家庭裁判所岡崎支部に離婚請求事件 について審判が出ました。
令和6年4月2日に名古屋家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停申立事件 について家事調停を申立てました。
令和6年4月2日に岐阜家庭裁判所に離婚等請求事件 について審判が確定しました。
令和6年4月1日に名古屋家庭裁判所一宮支部に離婚等請求事件 について人事訴訟を提起しました。
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