弁護士法人名古屋総合法律事務所
弁護士 後藤 奈津季
高額所得者が別居する際の婚姻費用について解説いたします。
算定表では、
を年収の上限としています。
では、当事者の年収がこれらを上回るような、いわゆる高額所得者の場合、婚姻費用は、どのように算定したらよいのでしょうか。
この問題については、次の通り、いくつかの考え方があります。
義務者の年収が、2,000万円(自営業者の場合は1,567万円)を上回る場合であっても、算定表の額を上限とする考え方があります。
一般的に、義務者の年収が、算定表の上限周辺(プラス500万円程)の場合にこの考え方が取られることが多い傾向にあるようですが、下記のように、上限から約900万円を超える場合にもかかる考え方が採用された例もあります。
大阪高決平17.12.19
別居状態 | 年収 | 認められた婚姻費用 | その他の事情 |
---|---|---|---|
夫 | 2,880万(歯科クリニック経営) | 月額37万円 (旧算定表) |
夫は、妻が住む自宅の住宅ローン月額10万円を負担 |
妻 子2人(15歳未満) |
71万円(雑収入) |
大阪家審平22.1.25
別居状態 | 年収 | 認められた婚姻費用 | その他の事情 |
---|---|---|---|
夫 | 2,895万円(役員報酬) | 月額35万円 (旧算定表) |
|
妻 子2人(15歳未満) |
300万円(給与) |
婚姻費用は、総収入から、
という考え方により算出しています。
具体的には
❶ | 基礎収入を算出 |
---|
総収入×基礎収入割合
❷ | 世帯収入を算出 |
---|
義務者の基礎収入+権利者の基礎収入
❸ | 世帯収入のうち、権利者世帯に割り振られる婚姻費用を算出 |
---|
(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)×権利者側の指数の合計権利者側、義務者側の指数の合計
❹ | 義務者の分担額を算出 |
---|
権利者世帯に割り振られる婚姻費用-権利者の基礎収入
大変すぎる…
上記の通り、基礎収入さえ決まれば、あとは流れに沿って計算していくことができます。
先ほどもお話ししましたが、基礎収入というのは、総収入から必要不可欠な支出(公租公課・職業費・特別経費)を控除したものとなります。
ただ、事案ごとに必要不可欠な支出を控除して基礎収入を算出していく作業は大変ですので、総収入に下記の通りの基礎収入割合をかけることで、基礎収入を簡単に算出する方法が取られています。
給与所得者(万円) | 割合(%) |
---|---|
0~75 | 54 |
~100 | 50 |
~125 | 46 |
~175 | 44 |
~275 | 43 |
~525 | 42 |
~725 | 41 |
~1,325 | 40 |
~1,475 | 39 |
~2,000 | 38 |
自営業者(万円) | 割合(%) |
---|---|
0~66 | 61 |
~82 | 60 |
~98 | 59 |
~256 | 58 |
~349 | 57 |
~392 | 56 |
~496 | 55 |
~563 | 54 |
~784 | 53 |
~942 | 52 |
~1,046 | 51 |
~1,179 | 50 |
~1,482 | 49 |
~1,562 | 48 |
この点、基礎収入割合は、上記の表のとおり、給与所得者で38%、自営業者で48%までしか類型化されていません。
しかし、算定表の上限を超える高額所得者の場合も、基礎収入割合を修正し、特定できれば、基礎収入を算出することができるといえます。
高所得者の場合は何%?
ただ、どの程度修正するのかは明確な基準はありませんので、難しいところですが、年収6,000万円の給与所得者の養育費の事案で、基礎収入割合を27%として計算した裁判例があります(福岡高決平26.6.30)。
先ほど、総収入から、生活していくうえで必要不可欠な支出(公租公課・職業費・特別経費)を控除したものが、基礎収入だとお話ししました。
高額所得者の場合には、収入のうち貯蓄・資産形成に回る部分が大きくなることから、さらに、貯蓄率を控除したものを基礎収入とすべきだとする考え方があります。
神戸家尼崎支審平19.10.5
別居状態 | 年収 | 貯蓄率 | 認められた婚姻費用 |
---|---|---|---|
夫 | 3900万円(給与収入1410万円、不動産収入等約2500万円) | 18.8% | 月額60万円 |
妻 子(10歳) |
無収入 | 考慮せず |
大阪高決平20.6.9
別居状態 | 年収 | 貯蓄率 | 認められた婚姻費用 |
---|---|---|---|
夫 | 4855万円(事業所得4749万円・給与所得150万円) | 21.2% | 不明 |
妻 子2人(15歳未満) |
250万円(給与収入) | 考慮せず |
東京高決平28.9.14
別居状態 | 年収 | 貯蓄率 | 認められた婚姻費用 |
---|---|---|---|
夫 子二人(大学生の長男と同居、一人暮らしの大学生の長女の生活費を負担) |
3940万円(給与収入2050万円・不動産収入等約1522万円) | 7% | 月額20万円 |
妻 | 約75万 | 考慮せず |
上記裁判例で、他の2つの裁判例と比べ、東京高決平28.9.14の貯蓄率が7%と低くなっているのは、算定表の上限内の世帯においても、貯蓄率がゼロというわけではないため、統計上の高額所得者の貯蓄率から、標準算定方式の範囲内の世帯の貯蓄率を控除するという考え方がとられたためです。
同居中の生活状況、実際に支払われていた婚姻費用、現在の権利者の支出状況等から、個別具体的に決めていくという方法があります。
義務者の年収が億単位の場合には、このような方法がとられる傾向にあるようです。
婚姻費用は、あくまで生活費であり同居中の贅沢な生活をそのまま保障しようとするものではないとの考えから、婚姻費用の上限は、100万円程度に留めるべきだとする考え方があります。
一方で、義務者と同程度の生活を保障するものだという側面を重視すると、婚姻費用に上限を定めることに反対する見解もあります。
実際のケースでは、月額100万円以上の婚姻費用の合意がなされることも少なくはないようです。
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令和6年4月25日に名古屋家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停申立事件 について家事調停を申立てました。
令和6年4月10日に名古屋家庭裁判所に婚姻費用分担調停申立事件 について家事調停を申立てました。
令和6年4月3日に名古屋家庭裁判所岡崎支部に離婚請求事件 について審判が出ました。
令和6年4月2日に名古屋家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停申立事件 について家事調停を申立てました。
令和6年4月2日に岐阜家庭裁判所に離婚等請求事件 について審判が確定しました。
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