- 離婚したいが自分の収入では子を育てられるか不安・・・
- 養育費が支払われておらず、日々の生活に困っている
- 給料が下がってしまった、養育費の支払いを減らしたい
- 子が私立大学に行くことになり、養育費を増額してほしい
お子様がいらっしゃるご家庭で離婚を決意した時、問題となってくるのは「養育費」のことです。
ここでは、養育費にまつわる様々なギモンにお答えしていきます。
まずは、「養育費とは何か」をご説明いたします。
養育費とは
養育費とは、子供が社会人として自立するまでに必要となる費用(未成熟子に対する生活費)です。
衣食住の経費、教育費、医療費、娯楽費など、自立するまでに必要となるすべての費用が養育費にあたります。
養育費の算定
では、養育費の金額はどうやって決まるのでしょうか。
養育費の額は、負担する側の経済力や生活水準によって変わってきます。
基本的には、双方の収入のバランスに応じて養育費を算定していきます。財産分与や慰謝料は一括で支払うのが原則ですが、養育費は通常定期的に負担していきます。
裁判所が示している養育費の目安となる「早見表(算定表)」で、養育費が大体いくらになるのかを確認してみましょう。
養育費早見表(算定表)
〈画像をクリックするとPDFが開きます〉
子供が3人など、そのほかのケースについては 裁判所ホームページ (外部サイト) をご確認ください。
ご自身がどの表に当てはまるかは、子供の人数・年齢で決まります。
義務者は養育費を支払う側、権利者は養育費を受け取る側です。
自営業の方は内側の列で課税対象の所得額を元に確認し、自営業以外の方は額面(税金が引かれる前の年収)で確認してください。
例) 権利者は妻(パート・年収200万円)、義務者は夫(会社員・年収450万円)、17歳の子供がいる場合、表の交わっている部分から、養育費は4〜6万円/月が基準となります。
「経済力や収入によって変わってくるんですね」
「後々トラブルになることもあります。離婚する前によく話し合って具体的に決めておきましょう」
親の『子の扶養義務』とは
経済的に自立が難しく、親に養ってもらう必要のある子供のことを『未成熟子』といいます。未成熟子の扶養は親の義務です。親には自分自身と同程度の生活を子供に保障して維持する「生活保持義務」があります。
養育費は子供の生活を守るためのものです。離婚後は”親権者とならなかった親”も、”親権者となった親”と同様、第一次的に子供を扶養する義務を負います。
親権者の監護教育の権利義務とそれに必要な費用(養育料)の負担とは、別個 の問題であり、未成熟の子に対する親の生活保持義務は親子関係そのものか ら生じるものであるから、雑婚後においても両親は親権の有無にかかわら ず、それぞれの資力に応じて子の養育料を負担すべき義務を負うものと言わ なければならない。抗告人は離婚後における子の扶養義務については、第一 次的には親権者となった親(本件では相手方)が負担すべきであると主張する が、右抗告人の見解は採用できない。
福岡高裁決 昭和52年12月20日 家月30巻9号75頁
「親は、離婚後においても親権の有無にかかわらず、それぞれの資力に応じて未成熟子の養育費を負担することになります」
養育費はいつからいつまでもらえるか
「養育費は、いつからもらえますか? 早く振り込んで欲しいし、⻑く払って欲しいです! 」
離婚調停で定めたときは、離婚をした時から貰えます。
特に定めず離婚した場合で、養育費の調停・審判の申し立てをしたときは、そのときからの養育費が認められる事例が多いようです。
ただし、始期(法的な効力が発生するタイミング)については、それ以前の請求内容、交渉状況によって異なる場合もあります。
養育費はいつまで払い続けるの?
期間の目安は20歳です。
※2022年4月1日から成人年齢は18歳に引き下げられましたが、養育費の終期については、依然として20歳までが目安と考えられています。
養育費を支払う期間は一般的に『子どもが社会人として自立するまで』とされています。これは必ずしも未成年者を意味するものではありません。親の資力、学歴といった家庭環境など様々な事情を考慮して、話し合い・審判に基づいて決まります。
ポイントは『いつの時点であれば子供が自立したといえるのか』という点です。「未成年者が満18歳に達する月まで」「未成年者が満20歳に達する月まで」「未成年者が満22歳に達する月まで」など、状況によって判決が分かれています。
一般的には、両親が子の大学進学を承諾している場合には、大学の進学の費用も養育費として負担を求めることができます。また、承諾がない場合でも両親の学歴、職業、経済状況などに照らして大学進学の費用が認められる場合もあります。
支払いは月払いか一時払いか
相手が約束を守らないような性格で資力にも問題があるような場合には、額が低くても一時金で受け取るほうが結果的には得ということもありえます。また、総額を一括払いできる資力がある場合も全額前払いしてもらうほうが良いでしょう。 支払方法と金額を総合的に判断して慎重に考えましょう。
毎月定額を受け取る場合
養育費の支払いは大半が毎月の分割払いです。銀行や郵便局に子ども名義の口座を開き、そこに振り込んでもらうか、養育費を受け取る側の名義の口座に振り込まれることが一般的です。
一括で受け取る場合
養育費の振込み先については、実際に子供を引き取り育てる側である親名義の口座に振り込んだ方が良いという考えもありますが、養育費は子供を引き取り育てる親に支払うものではなく、子供に支払うといった趣旨から、金融機関に子供名義の口座を開設して、そこに振り込む方法でも良いでしょう。
養育費の未払い問題
「離婚の際に養育費を決めましたが払われていません。どうしたらいいでしょうか?相手とあまり関わりたくないのですが…」
現在、離婚後1年以内に約50%の事例で養育費の支払いが止まっており、また、養育費の支払いが約束どおり続いているのは約20%と言われています。
養育費は子供の権利です。子供のためにも諦めずに支払ってもらいましょう。
養育費をもらったら税金がかかる?
養育費を一括で入金してもらったら税金がかかるのでしょうか?この点について所得税法では、
「学資に充てるため給付される金品(給与その他対価の性質を有するものを除く。) 及び扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品」については、所得税を課さない(9条1項15号)
と規定しています。
養育費は扶養義務に基づき履行されるものですから、所得税はかかりません。
また、贈与税についても、
「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」については贈与税の課税価格に参入しない(相続税法21の3条1項2号)
と規定されています。
つまり、通常認められるものであれば、贈与税の課税対象とはなりませんので、毎月分割払いにより取得する養育費には贈与税は課されません。
実は、贈与税がかかる場合もあります
もっとも、養育費を将来分まで含めて一括として受け取り、銀行に預けると、「通常必要と認められる」範囲を超えると判断され、贈与税を課される可能性がありますので注意が必要です。
このような結果からすると、養育費は一括払いではなく、毎月もらった方が得策のような気がしますが、毎月払いの場合は、途中でもらえなくなるリスクもあり、一括払いが可能な場合は、まとめてもらった方がよいとも言えます。
過去の養育費は支払ってもらえるの?
「別居中の一年間、私が貯金を崩して子供のために払ったお金は、どうなりますか?」
養育費について合意がない場合は、過去にさかのぼって、一方の親だけが負担していた養育費についてもう一方の親に請求することができます。
また、別居状態が相当期間続いた後で離婚することになった場合、離婚後の養育費にくわえて離婚前の養育費を支払ってもらえるのでしょうか。
こちらは婚姻費用として請求が可能です。離婚するときには、財産分与に『過去の婚姻費用の清算』という要素も含まれていますので、財産分与に含めて請求することもできます。
しかし、請求できるからといって、実際に回収できるかは別問題です。養育費についてきちんとした取り決めをしておいた方がよいと思います。
養育費の変更
「再婚相手との間に子供が生まれて、前のように高額な養育費は工面できなくなってしまった…」
養育費の支払いは、場合によっては⻑期間に及びます。その間に、事情が大きく変わることもあります。例えば、子供の進学の問題や支払う側の倒産・失業、受け取る側の失業、再婚などがそれにあたります。
基本的には、離婚時に決めた養育費の額や支払い期間を変更することはできません。しかし、上記のように経済的事情が大きく変化した場合には、養育費の増額や減額が認められることもあります。
まずは、お互いに話し合い、合意が得られない場合には家庭裁判所に調停を申し出ることができます。養育費の変更は、 理由が正当であれば認められるケースも多くみられます。
「私も再婚しました。でも子供は私学に進学するので、急に養育費を減らされると困ります」
「話し合いで合意できない場合は調停ができます。なるべく早めにご相談ください」
解決事例
解決事例1/ 女性Aさんのケース
夫は離婚を拒否していますが、もう耐えられません。子供が不自由なく生活を送るためにも養育費は絶対に払ってもらいたいです。
Aさんは、夫の親との対立や子育てに対する夫の非協力などから、結婚生活に耐えられなくなり、離婚を考え、ご相談にいらっしゃいました。
【解決内容】
離婚調停を申し立て、子供を連れて別居を開始。
調停で話し合いを進めるうちに夫も離婚に合意することとなりました。
という内容で最終的には合意し、調停離婚が成立しました。
【所感】
調停中、夫の態度が二転三転し、調停委員から調停の取下げを提案されるなど、なかなかうまく進まない場面もありましたが、具体的な条件を提示し、今離婚した方が得だと思わせることで調停を成立させることができました。本件のように相手方が離婚に難色を示す場合、調停の取下げを勧められることがありますが、安易に取り下げるのではなく、毅然とした対応が必要です。
【受任から解決までの期間】
1年2か月
解決事例2/ 男性Bさんのケース
転職で収入が減ってしまった。子供のためにも養育費を送り続けたいのに今まで通りの額では厳しい。減額は可能ですか?
Bさんは、離婚した際に公正証書で子の養育費を取り決めていましたが、転職による減収で支払いが難しくなったため、元配偶者に養育費の減額を相談しました。
しかし減額について話がまとまらず、当事務所にご相談にいらっしゃいました。
【解決内容】
調停を申し立て、また、並行して話し合いも試みました。しかし、離婚する際に決めた養育費の額が標準よりも高額であったこともあり、話し合いでは折り合いがつきませんでした。
最終的には裁判所の決定で、Bさんの減収、元配偶者の収入の増加、当初の養育費額といった要素をふまえ、養育費額がある程度減額されることになりました。
【所感】
一度取り決めた養育費であっても、収入の増減といった事情の変更があれば、増減額が認められることがあります。困ったら早めに調停を申し立てましょう。
【受任から解決までの期間】
約1年間
養育費Q&A
養育費を請求したいが夫の収入がわからない。どうしたらいいですか?
まずは収入がいくらあるかを証明する資料(源泉徴収票など)の提出を求めましょう。拒む場合には家庭裁判所から夫に対して提出を促してもらうことも可能です。
それでも夫が提出しなかったり、内容がごまかされていると考えられる場合は、夫の収入を推計して養育費を決めることが可能となることもあります。
離婚した妻が児童扶養手当をもらっている。自分は養育費を払う必要はある?
妻が児童扶養手当をもらっていても養育費はきちんと払いましょう。また、養育費を減らしていい
ということにもなりません。
ただし、実際には当事者同士の話し合いで養育費の額を決めることもできます。
”児童扶養手当をもらうことができるから養育費は払わない、あるいはその分だけ少なくする” と
いう内容で双方が合意できれば、実質的には『児童扶養手当の受給を理由に養育費の不支給あるい
は減額ができた』ことになります。
養育費に関するブログのご紹介
養育費のことなら名古屋総合法律事務所へ
親権の有無にかかわらず、親は子の扶養義務を負っているため、それぞれの資力に応じて養育費を負担しなければなりません。子供の健やかな成⻑のため、養育費の取り決めはきちんと行い、未払いなどがあった場合は早急な対応が必要です。
名古屋総合法律事務所は、
① 愛知・名古屋で数多くの養育費の請求、調停、審判、強制執行を経験し、多くのノウハウを蓄積・共有しております。
② 名古屋家庭裁判所での養育費算定についての審判事例も多数扱っております。
③ 男性と女性の弁護士がおりますので、両方の立場に立ってアドバイスいたします。
④ あなたに応じた様々な解決方法を提案することができます。
お一人で悩まず、ぜひ専門家にご相談ください。
「適正な養育費支払いのために、まずは早めにご相談ください。私達が必ず力になります」