弁護士 劉華心
令和6年5月民法改正で、共同親権制度の導入が決まり話題となりましたが、その陰で養育費制度についても重要な法改正がされています。
それは、①養育費債権の先取特権化と②法定養育費制度の導入についてです。
②については、以下のページに解説がありますのでご参照ください。
https://bengoshi-okazaki.com/blog/_rikon/12962/
今回は、①について解説します。
先取特権(さきどりとっけん)とは、法定担保物権の一種であり、法律で定められている債権について、債務者の全財産から、他の一般債権者よりも優先的に弁済を受けられる、という権利です。この権利には2つの意味があります。
たとえば、Aさんの財産が100万円しかなく、BさんとCさんからそれぞれ100万円ずつ借金をしている状況で破産した、という場合、BさんとCさんは債権に応じた割合で配当を受けることになるので、50万円ずつ配当を受けます。
他方で、Bさんが100万の債権について先取特権を有する場合は、Cさんに優先し、100万全額について弁済を受けることができます。
もう一つは、Aさんの持っている財産を強制的に換価し、そこから弁済を受けられる権利であるということです。すなわち、Aさんが任意に債務を履行しない場合に、先取特権を有するBさんは、Aさんの許可や同意を必要とすることなく、Aさんの所有する不動産を強制競売にかけて、売却代金から自分の債権の回収に充てることができるのです。
このように、先取特権を持つ債権者は、一般の債権者と比べて有利な立場にあります。
今まで民法上、一般先取特権として認められていたのは、⑴共益費用(債務者の財産を保全させるのにかかった費用)⑵雇用関係の債権(給料など)⑶葬式費用⑷日用品の供給(光熱費など)の4種類でした。
法改正により、ここに、新たに養育費も加わります。ただし、養育費全額について先取特権が認められる訳ではなく、「子の監護に要する費用として相当な額」で、具体的にいくらかは、法務省令で定めることになります(改正民法308条の2)。たとえば義務者の収入が非常に多く、算定表によれば月50万円の養育費が支払われるべき場合でも、50万円満額について先取特権がある訳ではなく、50万円のうち、一部(たとえば10万円)についてのみ先取特権が存在し、残額は先取特権のない一般の金銭債権である、ということです。
ちなみに、先取特権同士の優先順位も⑴~⑷の順となりますが、養育費は⑵と⑶の間、すなわち第3順位の一般先取特権となります。この法改正は令和8年4月1日までに施行される予定です。
従来であれば、養育費が任意に支払われない場合には、「債務名義」を取得したうえで強制執行に及ぶ必要がありました。しかし、この「債務名義」の取得については、かなりの時間と手間を要する厄介な問題でした。
すなわち、「債務名義」となる文書には、強制執行認諾文言付きの公正証書での合意書や、調停調書や審判書などがありますが、単なる合意書では債務名義にはなりません。しかし、公正証書の作成には費用がかかりますし、調停調書や審判書等は裁判所での調停成立や審判を待たなければならないので、どうしても時間がかかってしまっていました。審判前の保全処分という手続を取ることもありますが、本案認容の蓋然性、保全処分の必要性、緊急性等が必要でなり、疎明資料も提出しなければならず、それなりに手間な上に、それでも確実に支払われるものとは限りません。
これに対し、先取特権であれば、「担保権の存在を証する文書」(民事執行法181条1項4号、同法193条1項)を提出すれば強制執行ができます。つまり、公正証書や調停調書等がなくとも、当事者や代理人弁護士が作成した合意書でも強制執行をすることが可能です。ただし、たとえば単に「相当額の養育費を支払う」としか記載のないものでは債権の特定性としては不十分で、他にも債権を特定するために必要な記載事項はありますので、少なくとも合意書の作成は専門家に依頼した方がいいでしょう。
今回の法改正により養育費が先取特権となり、法定養育費制度と相まって、最低限の生活費分は今までよりも支払われやすくなった印象はあります。ただし、適正な養育費額の算定方法や、決定に至るまでに踏むべき手続は従来のまま変わりません。離婚に際し養育費についてお悩みの方は、ぜひ専門家に相談することをお勧めします。
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