離婚のご相談をお受けするなかで、「モラハラ(精神的虐待)で慰謝料は取れますか」という質問を非常に多く受けます。
モラハラ(精神的虐待)で慰謝料を取ることはできます。
但し、モラハラは、身体的暴力や不貞を原因として離婚に至った場合と比べると、裁判において、慰謝料を認めてもらうのが難しい傾向にあるといえます。
慰謝料が認められにくい最大の理由は、証拠が少なく立証が難しいことにあります。
相談者さんが、モラハラを理由に離婚のご相談にいらした時には、既に長年にわたるモラハラが積み重なり、いよいよ精神的に限界を迎えた頃であることが多いです。
相談時期が遅くなってしまうのは、配偶者からのモラハラに耐え続けた方や、何かがおかしいと思いながらも、モラハラを受けていることに気が付かなかったというケースが多いからだと思われます。
また、そういった方の多くは、証拠をお持ちではなかったり、不十分であることが多いです。
一般に、モラハラ(精神的虐待)を理由に訴訟で慰謝料が認められる事案には、次のような特徴がみられます。
モラハラの程度にもよりますが、ある程度継続的に行われていたことが必要となります。そして、その事実を示す、客観的な証拠が存在することが望ましいです。
日記についても証拠とならないわけではないですが、下記のような証拠との組み合わせることでより信用度が増します。
全てのモラハラの証拠を取るのは、非常に難しいですが、一部でも客観的な証拠が存在することで、主張全体に与える信用度が増すこともあります。
モラハラは、日々の積み重ねではありますが、長年の婚姻生活のなかで、モラハラから引き起こされた複数のエピソードが存在しているのではないかと思います。
そういった具体的なエピソードは、裁判官の心証に与える印象が強いです。
慰謝料が認められた事案は、複数のエピソードをもってして、裁判官が、「常軌を逸した」とか「苛烈」などの表現を用いることもあり、そのように裁判官が感じる程度の精神的虐待行為については、慰謝料を認めてもらいやすい傾向があります。
裁判においては、夫婦が互いに言いたいことを主張し合いますので、モラハラをされた側の落ち度の程度によっては、どっちもどっちだと判断され、性格の不一致やコミュニケーション不足等の理由で、慰謝料を否定されてしまう可能性があります。
モラハラとの区別が難しい面もありますが、慰謝料が認められた事案には、不貞や怪我をするほどの暴力までいかなくとも、女性関係にだらしがない、浪費、暴力的言動がある、子供への躾が行き過ぎているなどの事実関係が認定されていることが多いです。こういった事実関係とモラハラ的言動が、不足する証拠を補完し合うことで、慰謝料が認められやすくなる傾向にあります。
また、モラハラをした側の主張(言い訳ばかりをして反省をしない)や裁判での態度が、そのモラハラ的な人格を自ら裏付けてくれることもあります。
一般に、離婚で求める慰謝料は、モラハラが原因で離婚に至ったことに対する精神的損害を求めるものですので、基本的には、モラハラが婚姻関係破綻の理由となっている必要があります。
こういった観点から、慰謝料を否定された事案のなかには、モラハラ的な事実が認定された時期が、婚姻関係破綻後であることを理由としているものもあります。
それでは、モラハラによって慰謝料が認められた裁判例をいくつかご紹介します。
原告 妻(38歳・フルート教師)
被告 夫(43歳・IT関連企業の役員)
平成29年9月17日 マッチングアプリで知り合い婚姻
平成30年1月29日 別居
平成30年2月10日 協議離婚 (原告は妊娠中)
・夫は、自分が不満に感じる出来事があると、相手に対して徹底的に攻撃的な態度を示し、「頭おかしい」「バカ」「キチガイ」等相手を罵倒する言葉を連発した。
・妻が言うことを聞かないと、すぐに「好きにしろ」「勝手にしろ」「別居する」「離婚して犬連れて帰れよ」「クズ」「離婚して子供もおろせ」「何様なんだよ、このクズ野郎」「マジで死んでくれないかな」「親の教育が悪すぎる」「こんな最低な女見たことがない」等の突き放す言葉を発したり罵倒した。などの事実が、複数のエピソードと一緒に認定されています。
モラハラについて
被告は、原告との婚姻後、次第に、原告の人格を否定して被告の価値観を押し付け、被告に従わなければ徹底的に罵倒するような暴言を吐くようになり、
その頻度や内容もエスカレートし、社会的に許容されるべき範囲を逸脱するものとなっていたことが認められるところ、
これら一連の暴言がいわゆるモラルハラスメント行為に当たり、
原告の人格権を侵害するものであることは明らか
というべきである。
慰謝料額について
原告は、被告の一連のモラルハラスメント行為及び離婚により、強度の不安を感じ、不眠や抑うつ気分等、精神科の治療を要する状態に陥ったことが認められる。
このような原告の精神面の状況や、被告のモラルハラスメント行為自体の悪質性の程度、原告と被告との婚姻期間の長さ、原告が妊娠中の離婚を余儀なくされたこと等、
一切の事情に鑑みれば、原告が被った精神的損害に対する慰謝料としては、200万円と認めることが相当である。
原告 夫
被告 妻(反訴でモラハラによる慰謝料を請求する側)
平成13年1月1日 婚姻
平成28年1月27日 別居
子供二人
判決時までの別居期間 5年半
※なお、離婚自体には争いがない事案です。
・夫が長男(当時11歳)に対し、謝罪を求め、謝罪している長男に対し頬から後頭部付近を平手で殴打
・夫が長男に土下座させることもあった
・夫が長男に立腹し、妻の胸倉をつかみ、それを静止しようとした長女の帽子を突き飛ばし、長男の髪を引っ張るなどの暴行を加えた(妻は警察に相談に行ったが、夫は警察からの呼び出しに応じなかった)
・家族での夕食中に、妻に対し頭を出せと言い、後頭部付近を平手で殴打する暴行を加え、妻に対し出ていけと述べた
・長男の態度について、妻に対し「母親に洗脳されているからこういう態度をとるんだ、出ていけ」と述べた
・長男に対し、「死ぬって言うのはこういうこと」などと述べながら、長男の背後からヘッドロックのような形で首を締めた。
原告・被告間の婚姻関係は、原告の被告及び子らに対する暴力・暴言により破綻したものであるところ、その態度は、原告の求めに応じて頭を下げて謝罪する被告を殴打する、 頭を下げて謝罪するだけでは足りず土下座を事実上強要する、出ていけというといったものであって、上記を逸した苛烈なものと言わざるを得ず、 夫婦間の喧嘩からは完全に逸れたものというほかはないことからすれば、これにより被告が被った精神的苦痛を慰謝するには、150万円が相当というべきである。
原告 妻(モラハラの慰謝料を請求する側)
被告 夫
平成20年6月22日 婚姻
平成23年4月13日 別居
婚姻後すぐから(正確には入籍前から)、別居前まで、夫から妻に対し「轢いてやる」「縄でくくりつけて引き摺るの」「少しずつ殺す」「限界まで搾り取ってやるから覚えておおき」など、 多数の威圧的かつ脅迫的なメールを送信した。(判決の中には、50ほどのメールの内容が記載されています。)
原告と被告との婚姻関係は、主として、被告の原告に対する執拗で苛烈な脅迫的言動によって破たんしたものと認められるのであるから、 被告は原告に対して離婚に伴う慰謝料を支払うべき責任があるところ、上記被告の言動の態様及び原告と被告との婚姻期間その他本件に現れた事情を総合すると、 被告から原告に対して支払われるべき損害賠償の額については、これを100万円とするのが相当である。
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