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2021月2月 お客様の声

当事務所を御利用いただいたお客様へのアンケートから、 掲載許可をいただいたものについてご紹介しています

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匿名希望 様

スタッフの対応

スタッフの対応

■ ご意見・ご感想をお聞かせください。
⇒ 時間がない中で速やかに動いていただき、とても感謝しています。
他事務所にも相談をしましたが、楠野先生との会話のペースや初動の速さに依頼を決めて本当に良かったと思っています。
次にお願いすることは無いかもしれませんが、友人や知人が困った時には、是非紹介をしたいと思います。

「ハンコ廃止」の流れで婚姻届・離婚届も「脱ハンコ」?

「脱ハンコ」「ハンコ廃止」の流れ

政府が、IT・デジタル化を推し進める中で、「脱ハンコ」「ハンコ廃止」の流れが出ています。

河野太郎行政改革大臣は、行政手続きでハンコを使用しないよう要請しています。河野大臣は、行政手続きの9割以上の行政手続きでハンコの使用を廃止できるとしています。

政府が「脱ハンコを」の方針を進める中、上川陽子法務大臣は、婚姻届と離婚届の押印を廃止する方針を表明しました。

ハンコ

現在、婚姻届・離婚届には、本人の署名と押印が必要です。

婚姻・離婚は役所に届け出る必要がありますが、必要事項を記載し、これに署名し、押印しなければならないと、戸籍法(第二十九条)に規定されています。

第二十九条 届書には、左の事項を記載し、届出人が、これに署名し、印をおさなければならない。

  1. 届出事件
  2. 届出の年月日
  3. 届出人の出生の年月日、住所及び戸籍の表示
  4. 届出人と届出事件の本人と異なるときは、届出事件の本人の氏名、出生の年月日、住所、戸籍の表示及び届出人の資格

戸籍法(第二十九条)

上記のように、戸籍法で押印が必要とされていますが、法務省は法改正で押印を廃止しても問題ないとみています。

「脱ハンコ」に対する意見

「脱ハンコ」「ハンコ廃止」のニュースのインタビューを見ていると、意見はさまざまです。

  • 離婚となると一刻も早く手続きしたいと思うので、一つ手間が省ける
  • 結婚するときに、2人で婚姻届にハンコを押して、結婚したことを実感したい
  • 婚姻届にハンコを押すこと自体に憧れがある
  • 自分の時はハンコを押したい

肯定的な意見もある一方で、どちらかというと脱ハンコに否定的な意見もあるようです。

脱ハンコというと、手続きが簡素化されていいように思いますが、こと婚姻届・離婚届に関しては意外とメリットを感じていないひとたちも多いのかもしれません。

養育費の逃げ得は許さない!?

近年、離婚後の養育費の不払いが大きな社会問題となっています。

1.厚生労働省による実態調査

2016年に、厚生労働省は、全国の母子世帯・父子世帯の生活の実態を把握するため、全国の母子世帯・父子世帯を対象に、実態調査を行いました。

当該実態調査の結果を踏まえると、まず、注目すべき点は、養育費の取り決め状況の低さにあります。

実態調査を行ったところ、母子世帯の母親で、「養育費につき取り決めをしている」と回答したのは、全体の42.9%でした。

また、実際に養育費について取り決めがされている母子世帯であっても、「離婚した父親から現在も養育費の支払いを受けている」と回答したのは、全体の24.3%にとどまりました。

つまり、実に半数以上の母子世帯が、養育費についての取り決めがなく、取り決めがされている母子世帯であっても、現実に養育費の支払いを受けられているのは、わずか4組に1組の世帯しかない状況にあります。

母子世帯の生活が、いかに厳しい状況にあるか、お分かりいただけると思います。

2.政府の動向

こうした深刻な状況を受け、政府も、養育費の不払をなくすべく、様々な取り組みを打ち出しています。

その代表的なものが、「民事執行法の改正」と「女性活躍加速のための重点方針2020」です。

2019.5.10 民事執行法改正(2020.4.1施行)
2020.7.1 女性活躍加速のための重点方針2020

①民事執行法の改正

これまでは、養育費につき不払があったとしても、預金口座や給与債権等、執行の対象となる財産を特定することが困難であり、実際には泣き寝入りせざるを得ないことが多くありました。

2019年の民事執行法の改正により、債務者の財産を特定する手続が手厚くなり、民事執行法がより利用しやすく実効的なものとなりました。
(詳しくは、民事執行法改正へ

同改正法は、2020年4月1日より施行されており、今後、同手続を利用することにより、養育費の回収が促進されることが期待されています

②女性活躍加速のための重点方針2020

政府は、2020年7月1日、女性活躍に関する重点方針2020を決定し、その指針の中に、養育費確保に向けた法改正の検討を明記しました。

法務省と厚生労働省は、2020年6月より定期的に支援策を議論しており、国による養育費の立替払いや強制徴収の制度化など、年内をめどに取りまとめを行う方針です

なお、立替払い制度については、国に先駆け、兵庫県明石市が、上限5万円で養育費を立替払いする制度を2020年7月より試験的に導入しています。
明石市のHP

今後は、明石市にとどまらず、多くの自治体による活性化が期待されています。

3.まとめ

子どもたち

上記厚生労働省の調査によると、養育費の取り決めをしていない理由として、「相手と関わりたくない」という理由が一番多かったです(全体の23.1%)。

離婚の理由は人それぞれですが、相手が好きで離婚する夫婦はいないと思います。少なからず、相手に不満があり、今後の関係を断つため離婚を決意する方も多いと思います。

確かに、養育費は、将来にわたって継続的に支払いを受けていくものです。そのため、離婚後も、相手との関わりが続いてしまうことは否定できません。

しかし、相手との関わりとはいったいどのようなものを想定されているでしょうか。

養育費の支払方法を、例えば指定する銀行口座への入金と取り決めてしまえば、直接相手と顔を合わせる必要はありません。

相手と関わりたくないと思うのは当然のことですが、離婚時の一時の感情で、今後何年間にわたる養育費の取り決めをしないことは、あまりにもったいないことのように思われます。

また、養育費をもらうことは、お子様の正当な権利です。上記のとおり、近年、政府も養育費の支払いをきちんと受けることができるように取り組みを進めており、今後もこの動きは加速するものと思われます。

養育費の支払いが滞ってしまったとしても、決して諦めないでください。養育費の逃げ得は決して許されません。

お困りの際は、一度、お話を聞かせていただければと思います。

面会交流の交渉

面会交流の協議にあたってどのように考えるべきか

現在の家庭裁判所は、面会交流について、原則として実施することを推奨しています。

子の福祉を害するおそれがあるといえる特段の事情がある場合について、例外的に面会交流の制限を検討するという運用をとっていると言われています。

子供と公園

原則実施論については、人的・物的な環境整備が不十分のままでは、かえって子の福祉を害する結果となりかねないという批判もあります。

そもそも、原則・例外として捉えるべきものか、という指摘もあります。

他方で、原則実施としなければ、面会交流の確保が難しいケースもあります。

いずれにせよ、面会交流は「親と子の関係をどうしていくか」という話ですから、「何が子の福祉にとって望ましいのか」という軸で考える必要があります。

両親の葛藤

面会交流を全く行わないことは、身体的・精神的暴力等、よほどの理由がない限り、子供にとって好ましくないと考えられています。

同居親は、別居親の人格を否定し、会わせることは子供にとって有害と安易に考えがちです。

別居親のために時間や労力をかけたくないとか、面会交流に協力しないことで仕返ししていたり、酷い場合には離婚条件を有利にしたいがための交渉材料と捉えている場合もあるかもしれません。

悩む女性

しかし、子供の視点に立ったとき、会えない期間が延びれば、実の親の記憶が薄れたり、愛情を受けられていない疎外感を覚えることにつながります。
これは、子供にとって果たして望ましいことでしょうか。

たいていの場合、面会交流中、別居親は良い親になります。同居時も、子供の前では いつも悪い親だったということは稀です。

面会交流にあたっては、子供の視点から、離婚協議とは別の視点で、ある種割り切った対応をしなければなりません。

夫婦喧嘩

他方で、別居親も、子供に会いたい一心で、一方的な要求を繰り返すことがあります。

面会交流をさせようと、別居親が実力行使や問題行為に及ぶ例も散見されます。
面会交流でルールをきちんと守ることができる別居親は多数ではありません。

別居親が同居親を非難する発言をすれば、子供にとって精神的負担が生じます。かえって面会交流が子供にとって有害なものとなってしまう可能性もあります。
形だけの面会交流は、別居親が望むことではないでしょう。

同居親の主張は、荒唐無稽なものであることは多くありません。
弁護士によって、今まで言えなかったことがはじめて言語化されるケースもあります。

別居親は、「そんなはずはない、自分に非はない」と一蹴するのではなく、同居親の指摘を真摯に受け止め、その上で、約束を守り、子供と向き合うことが、長い目で見たとき、望ましい面会交流を続けられることになります。

子供と親

子どものために、円滑な面会交流を実現するためには、双方の立場を尊重することが大切です。

「言うは易し」ですが、離婚が紛争化している夫婦間で、ただちに理解することは簡単ではありません。

ですが、相手方に対する不信感が強く、意識を改善することができない場合には、結局、子供にとっての負担という形で現れることとなります。早期の段階で面会交流に関して手を打たなければ、子供にとって取り返しのつかない影響を与えかねません。

双方が面会交流に関して相互に理解を進めることは、互いに譲歩や歩み寄りに結び付く可能性が増えることになります。

具体的な面会交流の協議

まずは、親子関係を振り返り、将来の親子像を描くこと、具体的な生活状況を整理することから始まります。
抽象的に空論を交わすだけではなく、具体的な数字や事実をもって協議をする必要があります。

似顔絵を渡す子供

  • 親がどのように育児に関与してきたか
  • 子供の生活リズムやスケジュール
  • 両当事者の生活環境

など、洗い出すべきです。

面会交流や親権に関する裁判になれば、「子の監護状況に関する陳述書」の作成を求められますが、裁判外で協議をする場合でも、自分と子の関係を改めて客観視するためにも、有益です。

現在の生活環境が明らかになれば、面会交流の実施方法も、様々な工夫をすることができます。
調停事件では、多くの場合、1か月に1回、休日に6時間を自由に過ごす、というような実施方法が主流です。

しかし、例えば、子の行事参加をするとか、平日に習い事の送迎、食事を一緒に採るといった方法で面会交流を実施してもいいのです。
日常に入り込む場合、子供にとって負担は小さくなることが期待できます。
別居親が、普段の同居親の苦労を理解するきっかけになるかもしれません。

家

同居親にとっては日常生活に入り込まれるとの懸念はあるかもしれませんが、引き渡しの方法の工夫によって回避できますし、ある種、自分の時間を確保したり、定期的な実施と比べても負担が小さくなることも期待できます。

どうしても折り合いがつかなければ裁判所に結論を出してもらうしかありません。

しかし、当事者双方が適切な協議を行うことによって、子供にとっても親にとっても良い解決を導く可能性があります。
両親がともに尊重しあう土壌がある場合には、合意を目指すべきでしょう。

養育費

Q.養育費なしを条件に親権を獲得しましたが、後から養育費を請求できますか?

通話で面会交流する父娘

Q.養育費なしを条件に親権を獲得しましたが、後から養育費を請求できますか?

質問に対する法的な回答

一般的には、養育費の不請求の合意をした場合でも、その合意が明らかに子の利益に反するような場合、また合意の時点の前提事項あるいは予測不能の事情の変更のある場合には、事後に養育費を請求することができます。

また、養育費の不請求の合意が有効であるとしても、子は親に対し扶養料を請求することができます。

その理由・根拠

2−1 養育費を請求する権利は誰の権利なのか?

離婚に際して養育費を請求しないことを約束することがあります。
このような約束は養育費の不請求の合意といいます。

養育費の不請求の合意は離婚後の子の養育者にとって不利益になるものなので、通常は親権を譲る、高額の慰謝料を払ってもらうなど、自己に有利な条件との引き換えになされることが多いです。

では、このような養育費の不請求の合意は有効なのでしょうか。

この問題を考える際には、そもそも養育費を請求する権利は誰の権利であるのかについて考える必要があります。

この点については、2つの見解が存在します。

1つは、養育費を請求する権利は親権者固有の権利であり、それは子固有の扶養料を請求する権利とは別であるという見解です。この見解によれば、養育費の不請求の合意のある場合でも子固有の扶養料を請求する権利は当然に行使することができます。

もう1つは、養育費を請求する権利は子の親に対する扶養料を請求する権利(実際には親権者が子の代理人として請求する。)と同一であるという見解です。この見解によれば、養育費の不請求の合意は扶養料を請求する権利の放棄を意味するため、扶養を受ける権利の処分を禁止する民法881条により無効となります。

2−2 そもそも養育費の不請求の合意は有効なの?

養育費を請求する権利は子の扶養料を請求する権利とは別の権利であると考える見解によれば、当事者の意思に基づく養育費の不請求の合意は原則として有効です。

しかし、過去の裁判例の中には、養育費の不請求の合意は子の利益に反するものであるとして無効であると判断したものがあります。

2-3 養育費と児童扶養手当はどのような関係にあるの?

仮に養育費の不請求の合意が有効であるとしても、そのことは子の扶養料を請求する権利に影響を与えません。つまり、親権者は養育費の不請求の合意をしたとしても、理屈上は、別途子の扶養料を請求する権利を代理人として行使することができます。

但し、養育費を請求する権利と子の扶養料を請求する権利は、現実には、親権者が他方の親に子を養育するための費用を請求することにより実現されるという意味では同じであるため養育費の不請求の合意のある事実を理由に事情変更のない限り扶養料の請求はできないと判断したり、また、請求できるとしても当該合意のあることを扶養料の額の算定において減額要素として考慮したりすることがあるようです。(参考 札幌高裁 昭和51年5月31日決定)

どうすればよいのか?

3-1 相手方との協議により養育費の支払

まずは相手方と協議しましょう。

事前に養育費の不払の合意をしている以上、通常であれば相手方は約束が違うじゃないか、という気持ちになっているはずです。

ですから、離婚時からの事情の変化や想定外の出来事の発生など、一度養育費の不払の合意をしながら事後に養育費を請求しなくてはならなくなった事情を説明しましょう。

また、養育費はあくまで子の扶養のための費用であり、両親の合意により子の扶養を受ける権利は奪われるものではなく、子のために支払してほしいと説得してみましょう。

3-2 養育費分担請求調停の申立

もし、当事者同士の話し合いではどうしても解決しないとき(不払の合意をしている以上は支払をしないと拒否された場合と支払自体はするとの回答を得たものの金額について折り合わない場合)には家庭裁判所に養育費分担請求調停の申立をします。

養育費請求調停について詳しくはこちら▶

調停では養育費の不払の合意をしているものの事情の変更により養育費を払ってもらう必要の生じたことを調停委員に説明しましょう。

その際には事情が変わったことがわかる資料を準備しましょう。

調停委員を介して相手方を説得してもなお解決しなければ、裁判官の審判により最終判断が下されます。

なお、養育費の額については実務上、裁判所が作成・公開している算定表(子の年齢・数、両親の収入に応じ算定)を目安に算定されます。

養育費の算定表について詳しくはこちら▶

3-3 もし養育費を払ってくれなかったら?

もし、相手方が審判により養育費の支払を命じられたにも関わらず、どうしても納得できないために養育費の支払をしてくれないときにはどうすればよいのでしょうか。

この場合には裁判所の作成する審判書に基づいて強制執行することができます。

具体的には、たとえば相手方の勤務先を知っていれば給料の差し押さえをします。

強制執行について詳しくはこちら▶

逆に、差し押さえるべき相手方の財産がないときには強制執行は功を奏しません。

強制執行はあくまでも最終の手段であり、できる限り相手方本人の納得を得た形の解決を目指すようにしましょう。

養育費について詳しくはこちら▶

養育費

Q.元夫が破産しました。もう養育費は支払ってもらえなくなるのでしょうか?

通話で面会交流する父娘

Q.元夫が破産しました。もう養育費は支払ってもらえなくなるのでしょうか?

質問に対する法的な回答

元夫が破産した場合でも養育費は支払ってもらうことができます。

むしろ、元夫が借金の支払いを優先したことで、破産前は約束した養育費の支払をしてくれなかったときには、破産して経済的に余裕が生まれて養育費の支払をしてくれるようになるかもしれません。

その理由・根拠

2-1 養育費とは?

養育費は未成熟の子の日々の生活に関する扶養のための費用です。

そして、養育費は子の父母により分担されるべきものです。

そのため、父母の離婚後は、子を養育する親は養育費の分担義務に基づき他方の親に対して養育費を請求することができます。

養育費の分担義務の内容は厳密に言えば未成熟の子の日々の扶養すべき程度及び父母の経済状況に応じ変化しますから、日々発生します。

しかし、逐一日々の養育費を算定して請求することは現実的ではないため、普通は離婚時の事情を踏まえ毎月の養育費の額を決め、子を扶養すべき期間まで、その支払を継続していくことになります。

但し、離婚の際に将来払うべき養育費をまとめて一括して払うことも可能です。

このような養育費の一括払いに関しては、それを支払った元夫が破産することになったとき問題視されることがあり、この点については後で説明します。

2-2 破産とは?

破産とは借金等の多額の金銭の支払義務があり、その支払ができなくなった人が裁判所を通じて行う清算の手続です。

より具体的には、破産の手続においては、破産後の生活のために必要な最低限の財産(差押禁止財産を含む。)は残し、それ以外の高額な財産は換価(売却など)して借金等の返済に充て(配当といいます。)、なお残存する債務については法律の定めに従い裁判所の判断(免責許可決定といいます。)により免除されます。

2-3 養育費の支払義務と破産との関係は?

まず、免責許可決定により免除される金銭の支払義務は破産前に発生したものであるため破産後に発生する養育費の支払義務について元夫の破産は全く影響を及ぼしません。

次に、破産前に発生した養育費の支払請求権は免責許可決定の効力の及ばない非免責債権に該当するため(破産法253条1項4号ハ)、やはり元夫は破産前の養育費の支払義務を免れることはありません。

このように養育費の支払請求権は破産における免責許可決定の効力の及ばない債権として定められており、そのような例外的な扱いを受けるほどに未成熟の子が親から扶養される権利は保護されているというわけです。

以上を踏まえると養育費に関しては元夫の破産との関係では一切影響のないものであり当然のように支払をしてもらうことができるように思えますが、若干の注意点があります。 それは破産の手続において求められる債権者の平等という観点です。

養育費の支払請求権は破産により消えることはないけれども、破産の清算の手続においては他の債権者と平等に扱われるのであり、自由に未払の養育費だけ支払をするわけにはいかないのです。

また、離婚時に一括して養育費の支払をした場合、その金額があまりに高額であったり、破産の直前であったりすると、破産の手続においてその支払が否定されて払われた金銭を元に戻すように言われること(否認権の行使といいます。)があります。

以上のように元夫の破産により養育費の支払に関して若干の影響はあるものの養育費の支払は約束どおりしてもらうことができます。

むしろ元夫は破産により借金等の返済を免れるのですから破産後の養育費の支払については支払う余裕が生まれているはずです。

どうすればよいのか?

3-1 従前どおり養育費の支払を求める

養育費支払請求権は非免責債権であり破産した場合でも消滅することのない債権であるため、子を養育している母は破産後でも元夫に過去の滞納していた養育費の支払を求めることができます。

また、破産により免除される債務は破産前に発生した債務であるため、母は元夫に対し破産後に発生する養育費について当然請求できます。

3-2 元夫の弁護士等から破産の通知が来たら?

もし元夫の弁護士等から破産する旨の通知の来た場合には、過去の滞納している養育費の支払は破産の手続において他の債権者との平等を図りつつ清算するものであるから、それまでは支払ができないと言われることもあるでしょう。

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たしかに破産の手続では債権者平等の原則というものがあり、たとえ養育費の支払義務が破産により免除されないものであるとしても、破産手続を予定している元夫から他の借金の支払は止めている状態において滞納している養育費の支払だけをしてもらうこと(これを不平等弁済といいます。)は問題になり得ます。

しかし、養育費の支払をしてくれなければ子の養育に大きな支障が生じるような場合には、日々発生する毎月の養育費の支払をしたとしても、不当性のないものとして特に問題視されない可能性も高く、母としては養育費の支払がないと困る事情を元夫あるいはその代理人である弁護士等に伝えるようにしましょう。

養育費について詳しくはこちら▶

夫が無職で収入がありません。この場合、養育費はもらえないのでしょうか?

無職の夫 夫が無職で収入がありません。この場合、養育費はもらえないのでしょうか?

①Qに対する法的な回答

原則、無職の元夫から養育費をもらうことは困難でしょう。 しかし、元夫が働こうと思えば働くことができるのにあえて無職であることを選択している場合には、養育費の支払いが認められる場合もあります。

②その理由・根拠

2-1 養育費とは?

養育費とは未成熟の子を扶養するための金銭です。

そして、親の子に対する扶養義務は生活保持義務といい、これは子の親に対する扶養や兄弟間の扶養の義務より水準の高いものです。

具体的には、親は子が親と同程度の生活を送ることができる程度の扶養の義務を負担しているのです。

養育費について詳しくはこちら

2-2 離婚後の養育費の請求とは?

養育費は両親が分担すべきものです。

但し、婚姻中の夫婦は生計を同一にしているため、別居していない限り、養育費の分担は問題になりません。

しかし、離婚後は親権者が1人で子を養育することになるため、養育費の分担のためにもう一方の親に対して養育費の請求をすることができます。

2-3 養育費の算定はどのようになされるのか?

養育費の算定においては両親それぞれの生活費に回すことのできる収入を考慮します。 しかし、元夫が無職のため無収入のときには、仮に両親が結婚している場合でも養育費の負担は全面的に収入を得ている親が負うことになりますから、離婚後の養育費の請求をすることは困難でしょう。

養育費の算定について詳しくはこちら

2-4 例外的に無職のため無収入の元夫に養育費を請求できるのはどのようなケース?

無職のため無収入の元夫に対しては原則離婚後の養育費を請求するのは難しいのですが、例外的にこれが認められるケースがあります。

それは元夫が心身共に健康であり年齢的にも働こうと思えば働くことができるのにあえて無職による無収入の状況を選択しているようなケースです。


このようなケースにおいては、公平の観点から元夫には潜在的稼働能力があると判断され、平均賃金の収入のあることを前提として養育費は算定されることになります。

この潜在的稼働能力の有無の判断について、過去の裁判例では、「就労が制限される客観的、合理的事情がないのに主観的事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず、 そのことが婚姻費用の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される特段の事情」があるかどうかという基準が示されています(東京高等裁判所令和3年4月21日決定)。

③どうすればよいのか?

3-1 まずは働いてもらうよう促す

元夫が無職により無収入の場合には原則として養育費をもらうことが難しい以上、まずは元夫に子のためにも働くよう促しましょう。

そして、その際に仮に元夫が就労することを拒否した場合には、就労できない事情について聞いた上、必要であれば、その事情を証明する資料のコピーなどを渡すよう依頼しましょう。

3-2 どうしても働かないのであれば潜在的稼働能力について説明する

次に、元夫が働かない理由が単に本人のやる気の問題など主観的な事情に過ぎないような場合には、例外的に潜在的稼働能力を前提に養育費が算定されることがある点について元夫に説明しましょう。

そして、その説明をした上で、いずれにせよ養育費の支払義務があるのだから、任意の支払に応じるよう説得しましょう。

3-3 話し合いでは解決しないときは弁護士に依頼するなどの手段を講じる

3-3-1 弁護士に依頼して代わりに交渉してもらう!

当事者の話し合いでは解決しないときは弁護士に依頼して代わりに元夫と交渉してもらう手段が考えられます。


但し、この場合には当然、弁護士に依頼するとなれば弁護士費用が発生するため、相談する弁護士と解決の見通しを踏まえた費用対効果などについて事前によく話し合う必要があります。

また、元夫に働く気がない以上、交渉をしても応じないことも想定されます。

3-3-2 交渉では解決しないときには調停を申し立てる!

弁護士に依頼する場合でも、依頼しない場合でも、当事者の話し合いでは養育費の支払についての問題が解決しないときには、家庭裁判所に養育費分担調停を申し立てることになります。


この調停の申し立てにより話し合いの場は裁判所に移ります。

調停においては、元夫に潜在的稼働能力が認められる根拠になる資料を調停委員に見てもらい元夫に対し養育費を支払うよう説得してもらいましょう。

なお、調停においても問題が解決しない場合には、最終的に裁判所の判断(審判といいます。)により養育費の支払義務の有無及びその額が決まります。

養育費請求調停について詳しくはこちら

3-3-3 養育費の支払義務を履行しないときどうすればいいのか?

調停や審判により元夫の養育費の支払義務が認められたのに、なお元夫が養育費の支払をしてくれないようなときには、 裁判所により作成された元夫の養育費の支払義務の存在及びその内容の記載された調停調書・審判書に基づき強制執行することができます。


しかし、元夫が無職であり、強制執行の対象になる財産が存在しない場合には結局強制執行しても回収できないため、養育費の支払義務を必ずしも実現できるとは限らないことに注意しましょう。

養育費の未払い問題について詳しくはこちら

養育費を請求したいが夫の収入がわかりません。どうしたらいいのでしょう?

給与明細

夫の収入がわからない場合には、まずは収入を証明する資料の提出を求めたり、家庭裁判所から夫に対して提出を促してもらうことが考えられます。

それでも夫が収入に関する資料を提出しなかったり、提出したとしても内容がごまかされていると考えられる場合には、夫の収入を推計して養育費を決めることが可能となることもあります。

養育費について詳しくはこちら▶

養育費の金額は両親の収入によって決まる

夫婦は離婚しても、未成熟の子どもがいる場合には、その養育費を分担して負担していかなければなりません(民法766条1項、2項)。

適正な養育費の金額は子どもの年齢・人数によっても異なりますが、必要な金額を両親の収入に応じて分担するのが公平です。

そこで、裁判所が公表している養育費算定表では、子どもの年齢・人数および両親の収入に応じて、目安となる養育費の金額が掲げられています。養育費を請求する際には、この算定表を参照して具体的な金額を決めるのが一般的です。

そのため、適正な養育費を獲得するためには、夫の収入を正確に把握することが重要となります。

夫が収入はごまかす可能性

裁判所の養育費算定表は、世間にもある程度浸透しています。多くの場合、養育費を請求される側の人(義務者)も、収入に応じて養育費の支払い義務が生じることを知っています。

そのため、離婚問題になると、養育費の支払義務者は収入を隠したり、ごまかしたりすることがあり得ます。

「収入がわからなければ養育費の請求はできないだろう」と考えて収入を隠すケースもあれば、養育費の支払い額を抑えるために収入を低めに伝えてくるケースもあります。

このようにして収入をごまかされたままでは、妻(権利者)は適正な養育費を請求することが難しくなってしまいます。

収入の証明資料の提出を求めることが重要

夫から口頭で収入額を聞いたとしても、ごまかされている可能性が十分にあるのですから、収入を証明する資料の提出を求めることが極めて重要です。

収入の証明資料とは

収入の証明資料としては、会社員なら源泉徴収票、自営業者なら確定申告書の控えを用いるのが一般的です。

ただし、副業をしている会社員の場合、源泉徴収票には副業の収入が反映されていません。自営業者の場合も、納税額を抑えるために売り上げを過少申告したり、経費を過大申告したりして、実際の所得が確定申告書に正しく反映されていないことがあり得ます。

より正確な収入を把握するためには、市区町村の役所が発行する「課税証明書」の提出を求めることも考えられます。課税証明書にはその人のすべての収入が反映されているはずだからです。

とはいえ、自営業で、本人が収入や経費を正しく申告していない場合には、課税証明書の内容も信頼性に欠けることに注意が必要です。

収入の証明資料の提出を求める方法

課税証明書は、原則として本人でなければ取得できません。配偶者であっても、直接取得するためには本人が作成した委任状が求められます。

そのため、夫の課税証明書を取得するためには、どうしても夫に対して提出を求めなければなりません。

どうしても夫が提出しない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てた上で、調停委員から夫に対して提出するよう説得してもらうことも考えられます。

また、離婚訴訟や審判手続にまで進んだ場合には、「文書送付嘱託」を申し立て、役所から裁判所に提出するよう裁判所から依頼するという手続きもあります。

夫の収入を推計する方法とは

課税証明書を入手できたとしても内容の信頼性が乏しい場合や、課税証明書が入手できない状態で養育費を取り決めるためには、次善の方法として夫の収入を推計するという方法があります。

生活状況などから収入を推計する

夫の収入を推計する方法として、第1次的には、生活状況などを考慮することが考えられます。

別居直前の家族の生活状況に照らして、「最低でもこれくらいの収入はあったはずだ」と推測する方法です。

その他にも、以前に夫の収入額を聞いたことがあれば、その金額を参考にして養育費の金額を話し合うことも考えられます。

これらの方法によれば、生活の実態に応じて妥当な金額の養育費を獲得しやすいというメリットがあります。

その反面で、夫に収入をごまかされても見抜くことは難しく、必ずしも適正な養育費を獲得できるわけではないというデメリットがあることにも注意が必要です。

賃金センサスで収入を推計する

より公平に養育費を取り決めるためには、信頼できる公的な統計資料に基づいて夫の収入を推計するという方法もあります。

日本の労働者の平均賃金に関する統計資料として「賃金センサス」というものがあります。これは、厚生労働省が毎年「賃金構造基本統計調査」を行い、性別や年齢、学歴別に平均賃金をまとめたものです。

家庭裁判所の審判や離婚訴訟でも、夫が収入の証明資料の提出に協力せず、他の方法で推計することも難しい場合には、最終手段として賃金センサスを用いて夫の収入を推計し、養育費の金額を決めることがあります。

例えば、令和3年の賃金センサスでは、大卒の男性で40~44歳の平均年収は674万7700円とされています。

仮に15歳と12歳の子どもがいて、妻が専業主婦で無収入だとすれば、算定表に基づく養育費の額は12~14万円となります。

夫話し合う際の注意点

養育費を取り決める際には、夫から適正な収入の証明資料の提出を受けて、話し合いで円満に解決することが望ましいことはいうまでもありません。

ただ、夫に「証明資料を提出してください」と言うだけでは、無視されたり、虚偽の資料を提出されたりする恐れがあります。

夫が適正な資料を提出しない場合には、「出す・出さない」でいつまでももめるよりも、ご自身の側で夫の収入を推計した上で養育費の金額を提示し、話し合いを進めるのもよいでしょう。

話し合いが進まない場合には、「賃金センサスに基づいて裁判所に決めてもらう」と申し向けてみましょう。

賃金センサスに基づく平均賃金は、実際の夫の収入よりも高いことが多いものです。夫としても、「賃金センサスで決められるくらいなら」と考え直し、適正な収入の証明資料を提出してくる可能性もあります。

まとめ

夫の収入がわからなくても、養育費の請求ができないということはありません。

最終的には家庭裁判所の手続きが必要となりますが、賃金センサスに基づき相応の養育費を獲得できる可能性もあります。

弁護士に依頼すれば、このような最終手段も視野に入れて夫と交渉しますので、早期に適正な養育費を獲得することも期待できます。

養育費に時効はあるのでしょうか?

弁護士

これから養育費を請求するという場合には、時効は問題となりません。離婚してから何年が経過していても、子どもが成人するまでは、将来に向かって養育費を請求できます。

ただし、 既に養育費を取り決めている場合、支払期限が過ぎても支払われていない部分については、5年の消滅時効にかかります。

なお、家庭裁判所の調停や審判、離婚訴訟といった裁判手続きで養育費を取り決めた場合には、取り決めた過去分の養育費についての消滅時効期間は10年に延びます。

養育費の未払いについて詳しくはこちら▶

養育費の取り決めをしていない場合

まだ養育費の取り決めをしていない場合は、将来発生する養育費の請求権が時効で消滅することはありません。

ただし、取り決めをしないといつ頃から発生し、請求できるかの問題が生じますので、過去の分まで遡って請求することはできない場合もあることに注意が必要です。

子どもが成人するまで養育費の請求が可能

養育費とは、夫婦間の未成熟の子を育てるために必要となる費用のことです。離婚して親権者とならなかった側の配偶者も法律上の親子関係は続くため、養育費の支払い義務があるとされています(民法766条)。

したがって、離婚してから何年が経過しても将来発生する養育費に関しては、時効は問題とならず、子どもが成熟するまで、基本的には成人するまで(最近では大学卒業など延長することもあります)は養育費の請求が可能です。

過去の分まで遡って請求することは難しい

例えば、離婚してから1年後に初めて養育費を請求したとします。この場合、離婚1年間に支払ってもらえなかった養育費を遡って請求できるのかという問題があります。

この点、家庭裁判所の審判例では、請求を認めたものと認めなかったものの両方があります。ですが、原則的には遡って請求することは認められないと考えられます。

なぜなら、養育費は子どもの日々の生活に必要なお金であって、今まで請求していなかったということは、元配偶者からの養育費がなくても生活できていたはずだと考えられるからです(東京家庭裁判所昭和54年11月8日決定など)。

その一方で、子どもの生活状況や、養育費の支払義務者の経済的余力などの状況によっては、公平に反しない限度で、過去も分についても請求が認められているケースもあります(宮崎家庭裁判所平成4年9月1日決定など)。

したがって、養育費を請求していなかった間に親権者が生活費のために借金をしていて、かつ、非親権者に過去の分も支払うことが可能な経済力がある場合には、過去の分の請求が認められる可能性があります。

また、相手が合意すれば事情にかかわらず過去の分を支払ってもらうことが可能なので、請求してみる価値はあります。

>離婚協議書や公正証書で養育費を取り決めていた場合は5年で時効にかかる

離婚時や離婚後に、両親の合意によって養育費を取り決めていた場合は、契約に基づく債権として具体的な養育費の支払い請求権が発生しています。そして、この請求権は通常は5年で消滅時効にかかります。

2020年4月1日から施行された改正民法によって時効制度が変わりましたが、結論として養育費の時効期間に変更がない場合が多いでしょう。

民法改正前は定期給付債権として短期消滅時効が定められていた

改正前の民法では、一般的な債権の消滅時効は10年とされていましたが(改正前民法第167条1項)、「年またはこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権」(定期給付債権)については、5年で消滅時効にかかるものとされていました。

養育費は通常、毎月支払われるものなので定期給付債権に該当し、5年の消滅時効の対象とされていたのです。

民法改正後は一般的に消滅時効期間が5年に短縮された

改正民法では、一般的な債権の消滅時効について「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年」に短縮されました(改正民法166条1項1号)。養育費の請求権も、この条文に従って5年の消滅時効にかかります。

養育費を取り決めたにもかかわらず、支払義務者が不払いにすると、親権者はそのときに「権利を行使することができることを知った」ことになります。したがって、支払期限から5年で請求権が時効によって消滅してしまうのです。

不払いを放置していると、支払期限が到来したものから1ヶ月分ずつ順次、請求権が時効で消滅していきます。そのため、相手が養育費の支払いをストップした場合には、放置せず請求していくことが重要です。

家庭裁判所で養育費を取り決めた場合は消滅時効期間が10年となる

民法上、「確定判決または確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利」については、消滅時効期間が10年とされています(改正民法169条1項)。

養育費の請求権については、家庭裁判所の調停や審判、離婚訴訟で取り決められた場合がこれに該当します。

なお、「公正証書」も強制執行が可能という点では「確定判決と同一の効力を有するもの」に当たるのですが、消滅時効期間との関係ではこれに該当しないとされています(東京高裁昭和56年9月29日決定)。

したがって、養育費の取り決めを公正証書にしていても、消滅時効期間は5年であることに注意が必要です。
ただし、裁判所で決まっても、決まった時に弁済期が来ていないもの(将来に発生する養育費)には適用されませんので、注意が必要です。(改正民法169条2項)

時効が成立しそうなときは更新が必要

5年、10年という時効期間は長いようにも思えますが、実際にはあっという間に過ぎてしまうものです。

ですが、時効の成立が間近に迫っても、その進行をストップさせることが可能です。それが「時効の更新」という制度です。

時効の更新とは

時効の更新とは、それまで進行していた時効期間がリセットされて、そのときから新たに、ゼロから時効期間が進行する制度のことです。

「裁判上の請求」や「強制執行」、「債務の承認」によって、時効が更新されます。

家庭裁判所で調停や審判を行うことが「裁判上の請求」に当たります(民法147条1項1号)。ただし、養育費の請求については、審判の前に必ず調停を申し立てなければならないこととされています(調停前置主義)。

既に家庭裁判所で養育費を取り決めていた場合や、公正証書がある場合には、強制執行を申し立てることで時効が更新されます(民法148条1項1号)。

また、支払義務者が債務を承認した場合も、時効が更新されます(民法152条1項)。未払いの養育費について、支払義務者が支払いを約束したり、一部でも支払ったりすると「債務の承認」に当たります。

時効の一時完成猶予とは

時効の一時完成猶予とは、時効の更新とは異なり、時効期間が経過しても6ヶ月間は時効が完成しないものとする制度のことです。

裁判外で支払いを請求(催告)すれば、そのときから6ヶ月間は時効の完成が猶予されます(民法150条1項)。

したがって、養育費の消滅時効期間が迫った場合には、まず内容証明郵便などで相手に対して支払いを請求し、時効の完成を一時猶予させることが大切です。
その後の6ヶ月の間に調停や強制執行を申し立てるか、相手と話し合うことにより、時効を更新させることが可能となります。

時効が成立した後も養育費を請求することは可能

時効が成立しても、それだけで自動的に養育費の請求権が消滅するわけではありません。支払義務者が「時効の援用」をするまでは、請求すること自体は可能です(民法145条)。

ただし、調停や審判になると、相手が時効を援用して手続きが終了してしまう可能性が高いことにも注意しなければなりません。

養育費の不払いによって生活が困窮しているようであれば、その実態を相手に伝えて粘り強く交渉し、相手の理解を得て養育費を支払ってもらうことが重要となるでしょう。

まとめ

まだ養育費の取り決めをしていない場合、時効は問題となりませんが、過去の分まで遡って請求するのは難しいことに注意が必要です。

いったん養育費を取り決めた後、不払いがあれば5年または10年で消滅時効にかかってしまいます。

養育費の支払いがストップすると、生活が苦しくなる方が多いことでしょう。不払いが発生したら、早期に弁護士にご相談の上、相手に請求して養育費を回収することをおすすめします。

不倫をした妻にも婚姻費用を支払わなければなりませんか?

夫婦が別居に至った原因が主として妻の不倫にあり、夫に何ら非がない場合には、妻からの婚姻費用の請求は「権利の濫用」に当たるため、支払う義務がない場合もあります。

ただし、夫にも何らかの非がある場合には、標準的な婚姻費用の額よりも減額した金額を支払わなければならない場合もあります。

また、婚姻費用には「配偶者の生活費」と「子どもの養育費」が含まれています。そのため、不倫した妻が子どもと同居している場合には、少なくとも「子どもの養育費」に当たる部分は支払わなければなりません。

養育費について詳しくはこちら▶

婚姻費用は夫婦で分担するのが原則

婚姻費用とは、夫婦が生活していくために必要となる費用のことで、法律上、夫婦それぞれの収入や資産に応じて分担することとされています(民法760条)。

また、夫婦は互いに助け合って生活していかなければならないものとされており(民法752条)、この義務のことを「協力扶助義務」といいます。たとえ別居していても離婚が成立するまでは夫婦ですので、協力扶助義務は続きます。

そのため、法律上の原則としては、別居に至った原因を問わず、収入が高い側の配偶者は低い側の配偶者の生活を支えるために婚姻費用を支払う必要があります。どちらかが不倫をしたという事情は、慰謝料の問題として扱うべきであり、婚姻費用の問題とは切り離して考えなければならないのが基本です。

まずは、この原則を覚えておきましょう。

別居の原因が主として妻にあるときは婚姻費用の請求が権利の濫用となる

以上の原則を貫くと、夫婦間に著しい不公平が生じるケースがあることも否定できません。

妻が突然不倫をして家を出ていき、夫には何の非もないといったケースでは、夫としては妻に婚姻費用を支払いたくないと考えるのも当然のことです。

一方で妻は、他の男性と交際しながら夫からの婚姻費用で生活していくということもできてしまいます。このような状態を法律が容認することは、明らかに不当でしょう。

そこで家庭裁判所における実務では、別居の原因を主に作った配偶者からの婚姻費用の請求は、権利の濫用に当たるため認められないとしています(大阪高裁平成28年3月17日決定など)。

したがって、夫は妻から婚姻費用を請求されたとしても、権利の濫用を理由として支払いを拒否することができる場合もあります。

夫にも別居の原因がある場合は全額を拒否することはできない

現実には、別居に至った原因が夫婦のどちらか一方にのみあるというケースは、意外に少ないものです。

たとえ妻が不倫をして家を出ていったとしても、その背景には以下のような事情が認められることもあるでしょう。

  • 先に夫の不倫が疑われる状況があった
  • 夫がDVやモラハラなどで妻を精神的に追い込んでいた
  • 夫が妻に生活費を渡さず、経済的に困窮させていた

他にも様々な事情が考えられますが、夫にも別居の原因の一端が認められる場合には、不倫をした妻からの婚姻費用の請求を全面的に拒否することは公平ではありません。

実務上、このような場合には、妻からの婚姻費用の請求を認めているものの、標準的な額よりは減額される場合もあるようです。

どれくらい減額されるのかについては、具体的な事情を総合的に考慮して、夫婦双方の責任割合を判断することになります。

夫の責任割合が大きいと判断される場合には、原則どおり、標準的な額の婚姻費用の支払いが命じられる可能性もあることに注意が必要です。

子どもの養育費は事情にかかわらず支払う義務がある

妻が子どもを連れて別居している場合、婚姻費用には「配偶者の生活費」と「子どもの養育費」が含まれています。

たとえ妻が一方的に別居の原因を作ったとしても、子どもに非はありませんし、夫には子どもに対する養育義務があります。そのため、夫は「子どもの養育費」に当たる部分については、事情にかかわらず支払わなければなりません。

この場合の婚姻費用の金額は、算定表を参照しつつ、「生活費指数」を変更して算出します。簡単な事例を挙げて、実際に計算してみましょう。

【事例】
  • 夫の年収:600万円
  • 妻の年収:150万円
  • 子ども:15歳の長男と12歳の長女(いずれも妻と同居)

このケースでは、算定表に基づく婚姻費用の額は8~10万円です。

この金額は、以下の生活費指数を用いて算出されています。

  • 妻:100
  • 15歳以上の子:85
  • 15歳未満の子:62
    (注:平成30年度 養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究による)

通常のケースなら、妻と子ども2人の生活費指数の合計は(100+85+62)で247となります。しかし、妻からの婚姻費用の請求が権利の濫用に当たる場合は、子ども2人の生活費指数のみで計算します。

子ども2人の生活費指数の合計は(85+62)で147となりますので、標準の額に147/247をかけることになります。

8~10万円×147/247=約4万7000円~約5万9000円
(注:計算方法は一例です。)

この計算方法を取ったケースでは、妻からの婚姻費用の請求を権利の濫用を理由として拒否できたとしても、子どもの養育費として約4万7000円~約5万9000円は支払わなければなりません。

妻からの婚姻費用の請求を拒否するためには不倫の証拠が必要

不倫した妻からの婚姻費用の請求を実際に拒否するためには、不倫の事実を立証しなければならないという問題もあります。

妻が素直に認めればよいですが、否認した場合は夫の方で不倫の事実を立証しなければ、家庭裁判所の審判では原則に従って標準的な額の婚姻費用が認められてしまいます。

一般的に不倫の証拠としては、以下のようなものが有効です。

  • 2人でラブホテルに出入りする場面の写真
  • メールやSNSにおけるやりとりで肉体関係があったことがわかるもの
  • スマホに保存された性行為中の動画像
  • 当事者の不倫を認める発言を録音または書面化したもの

決定的な証拠がつかめない場合には、状況証拠を数多く集めることが重要となります。どのような証拠を、どのようにして集めればよいのかについては、弁護士に相談してアドバイスを受けた方がよいでしょう。

まとめ

妻が不倫をして別居した場合は、婚姻費用のうち「妻の生活費」に当たる部分については支払いを拒否できるか、少なくとも減額することが可能です。

不倫した妻が実際に婚姻費用を請求してきた場合には、まず支払いを拒否し、妻が家庭裁判所に調停を申し立ててでも請求するのかどうか、様子をみてもよいでしょう。ただ、調停を申し立てられた場合は、審理終結する前に不倫の証拠を確保・提出しなければなりません。

できる限り早めに弁護士にご相談の上、適正に対処されることをおすすめします。弁護士を通じて妻と交渉することで、早期に解決できる可能性も高まります。

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