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夫側の離婚調停モデルケース ~第4回期日~

【第4回期日】

期日間で調査官調査が行われました。
調査の内容が調査報告書にまとめられました。

調停委員:田中

調停委員
田中

調査官調査はいかがでしたか。

健太との生活をしっかり確認してもらいました。
健太からも調査官の方に自分の考えを伝えることができたようです。
調査報告書を見ても、やはり、親権者は私単独の方がよいと思います。

申立人:佐藤一郎

申立人
佐藤一郎

調停委員:中村

調停委員
中村

わかりました。
それでは、親権者について、春子さんの意向も確認します。
一度、待合室でお待ちください。

交代
(調停委員が相手方待合室に佐藤春子さんを呼びにいく。)
調停委員:田中

調停委員
田中

調査官調査はいかがでしたか。

緊張してしまい、何を聞かれ、何を話したか忘れてしまいましたが、報告書で確認しました。
ちゃんと話せたと思います。

相手方:佐藤春子

相手方
佐藤春子

調停委員:中村

調停委員
中村

改めて、報告書を読んで、親権についてのお考えをお聞かせください。

健太がどのような生活をしているのか、報告書から知ることができました。
健太は、現在の生活を楽しんでいて、変えたくないと思っていることがわかりました。
また、残念ながら、私に対して苦手意識を持っていることもわかりました。
夫も家事に挑戦しているようですね。
残念ではありますが、健太のためです。親権者は夫単独とすることを受け入れます。

相手方:佐藤春子

相手方
佐藤春子

調停委員:中村

調停委員
中村

わかりました。重い決断だったと思います。
親権は一郎さん単独とすることに同意することを、一郎さんにお伝えしてもよろしいですか。

はい。お願いします。

相手方:佐藤春子

相手方
佐藤春子

調停委員:田中

調停委員
田中

わかりました。お伝えします。それでは、一度、待合室でお待ちください。

交代
(調停委員が申立人待合室に佐藤一郎さんを呼びにいく。)
調停委員:中村

調停委員
中村

さきほど、親権について春子さんのお考えを伺いました。
春子さんは、報告書を読んで、健太さんの現在の生活を知りました。健太さんのために、親権者を一郎さん単独とすることを受け入れるとのことです。

そうなんですか! 妻は、健太のことを考えてくれて決断してくれたんですね。
ありがたいと思います。

申立人:佐藤一郎

申立人
佐藤一郎

調停委員:中村

調停委員
中村

前回の調停で課題となっていた、養育費、親子交流について具体的にご検討されましたか。

はい。 やはり養育費については月額5万円は欲しいです。
大きな決断をしてくれた妻には悪いですが、これまでのことがありますから、妻と健太を二人だけで会わせることには不安があります。

申立人:佐藤一郎

申立人
佐藤一郎

調停委員:中村

調停委員
中村

養育費については春子さんのお考えとすり合わせましょう。
親子交流については、お子さんの意向を尊重した取り決めができるよう話し合います。
お子さんにとって、お父さんもお母さんもかけがえのない親です。子どもが健やかに育っていくためには一方の親だけでなく、両親から成長を見守られ、愛されることが必要です。
あくまでも、お子さんの健全な成長のために行うことを忘れてはなりません。健太さんが心配なのであれば、いきなり春子さんと健太さんのお二人で会わせるのではなく、別の方法を考えましょう。

二人だけで会わない方法というのは、どういう方法でしょうか。

申立人:佐藤一郎

申立人
佐藤一郎

調停委員:中村

調停委員
中村

例えば、ファミレスで春子さんと健太さんの親子交流を行い、少し離れた座席から一郎さんが見守るのでしたら、健太さんにとっても一郎さんにとっても安心ではないでしょうか。
月に一回位、一回1時間位から始めたらいいと思います。

へえ、それでしたらできそうかなと思います。

申立人:佐藤一郎

申立人
佐藤一郎

調停委員:田中

調停委員
田中

一度、待合室でお待ちください。

交代
(調停委員が相手方待合室に佐藤春子さんを呼びにいく。)
調停委員:中村

調停委員
中村

一郎さんから、養育費、親子交流の希望をお聞きしました。
養育費は月額5万円希望されています。
親子交流は、例えばファミレスで春子さんと健太さんの親子交流を行い、少し離れた座席から一郎さんが見守る、という方法で、月に一回、一回1時間から始める、ということではどうかということでした。
これをお聞きになって春子さんのご意見はいかがですか。

養育費は月額2万円が限界です。
親子交流については、もっと健太に会いたいですが、そうですね、それくらいから始めたほうが良さそうですね。

相手方:佐藤春子

相手方
佐藤春子

調停委員:田中

調停委員
田中

わかりました。
一郎さんにお伝えします。

交代
(調停委員が申立人待合室に佐藤一郎さんを呼びにいく。)
調停委員:田中

調停委員
田中

春子さんからは養育費は月額2万円でお願いしたいそうです。
一郎さんが希望する5万円と春子さんの希望する2万円と少し開きがあります。
こういう場合に、裁判所から「養育費の算定表」が提案されています。
縦軸が義務者(春子さん)の年収金額、横軸が権利者(一郎さん)の年収金額で線を引いて、交わった金額が妥当と考えられる養育費の金額です。
佐藤さんの場合、この辺り(養育費の算定表を示しながら)の2万円になるのではないでしょうか。

妻の収入がそんなに多くないという実情は私も分かります。 私の方でも、養育費と親子交流について再度検討します。

申立人:佐藤一郎

申立人
佐藤一郎

このあと財産分与についても双方から考えを聞いた。
お互いに落としどころを検討することで、第4回の調停終了。
約1か月後に第5回の調停が設定された。

夫側の離婚調停モデルケース ~第3回期日~

【第3回期日】

調停委員:田中

調停委員
田中

親権についてお考えになりましたか。

当然、私は単独親権獲得を主張します。

相手方:佐藤春子

相手方
佐藤春子

調停委員:田中

調停委員
田中

わかりました。
親権については調査官調査をすることで、裁判官に確認しましょう。

それから本日は、親子交流についての話をしましょう。

調停委員:中村

調停委員
中村

現状、春子さんは健太くんと会えていませんが、親子交流について、いかがお考えでしょうか。

月に1回は健太と二人で会いたいです。ショッピングモールで半日程度過ごしたいです。仮に夫が単独で親権者になっても、この親子交流はしてほしいです。

相手方:佐藤春子

相手方
佐藤春子

調停委員:田中

調停委員
田中

春子さんのお考えはわかりました。

交代
(調停委員が申立人待合室に佐藤一郎さんを呼びにいく。)
調停委員:中村

調停委員
中村

春子さんは単独親権獲得を主張されるそうです。
親権については調査官調査をすることで、裁判官に確認しましょう。
それから本日は、親子交流についての話をしましょう。
春子さんと健太くんの親子交流についていかがお考えでしょうか。

健太は妻のことを嫌っています。妻がパニックになって暴れたことが健太のトラウマになっているようです。
健太と妻が二人きりで顔を合わせる親子交流をするのは無理だと思います。 健太が妻と会うなら、私も同席したいです。

申立人:佐藤一郎

申立人
佐藤一郎

調停委員:中村

調停委員
中村

わかりました。

その後、裁判官より調査官調査の実施が告げられたため、調査の日時が決まりました。
また、お互いに財産を開示し、養育費、親子交流、財産分与を検討することで第3回の調停終了。約1か月後に第4回の調停が設定される。

財産開示

期日間で双方財産目録を提出する

夫側の離婚調停モデルケース~第2回期日~

【第2回期日】

調停委員:田中

調停委員
田中

前回の第1回の調停から約1か月経ちましたが、今のお気持ちはいかがですか。

あれからいろいろ振り返りましたが、夫に対して人権を無視した発言をしてしまったかもしれません。夫が精神的苦痛を感じたこともわかる気がします。
私も子どもに対して騒ぎたてたことについても、反省しています。
離婚を受け入れなければならないのかしらと思い始めました。
でも子どものことが心配でやっぱり踏み切れません。
「共同親権」という考えもあるようですが、ろくに家事をしていなかった夫に子育ては無理です。
「母親優先の原則」ではないでしょうか。

相手方:佐藤春子

相手方
佐藤春子

調停委員:中村

調停委員
中村

親権を決めるポイントは、これまでの監護実績・監護の継続性・今後の監護体制の見通し・ 子どもの意思の尊重と言われます。必ずしも、母親であれば優先されるというわけではありません。
春子さんとしては、離婚については検討していただけているということでよろしいですか。

はい、でも親権はやはり私が単独で取りたいです。
男手で子どもは育てられませんよ。

相手方:佐藤春子

相手方
佐藤春子

調停委員:田中

調停委員
田中

子どもの親権は子どもが自分の意思を表明することができる年齢になっている場合、子ども自身の意思が最大限尊重されます。
監護実績や子どもの意思を確認する方法として、「調査官調査」というものがあります。
心理学・社会学・教育学などの専門的知見を収めた専門家である家庭裁判所調査官が、直接、子どもに会って話を聞いたり、自宅へ行って生活状況をみたり、通学する学校へ行って先生に話を聞いたりします。


佐藤さんの場合は、調査官調査をすることになるかもしれません。

そうなんですね。

相手方:佐藤春子

相手方
佐藤春子

調停委員:田中

調停委員
田中

では、一郎さんにも調査官調査のことを提案してみます。
一度、待合室でお待ちください。

交代
(調停委員が申立人待合室に佐藤一郎さんを呼びにいく。)
調停委員:田中

調停委員
田中

春子さんからお話を伺いました。
離婚についても検討されているとのことです。 ただ、親権は単独で春子さんがとりたいと希望されています。

また、「こんな事もできないのなら、いっしょに死のう」と言い出すに違いないです。
健太が進学したくても、「こんな偏差値の低い学校はだめだ」とか言い出して認めないに違いありません。
私は、健太がどこに進学したくても応援するつもりです。だから、仮に共同親権になっても、夫婦喧嘩が生じるのは目に見ています。
健太も、自分に過剰な期待をして騒ぎたてる妻に苦手意識を抱いています。
親権は、私が単独で取りたいです。

申立人:佐藤一郎

申立人
佐藤一郎

調停委員:田中

調停委員
田中

子どもの親権は子どもが自分の意思を表明することができる年齢になっている場合、子ども自身の意思が最大限尊重されます。またこれまでの監護実績も大切です。
監護実績や子どもの意思を確認する方法として、「調査官調査」というものがあります。
心理学・社会学・教育学などの専門的知見を収めた専門家である家庭裁判所調査官が、直接、子どもに会って話を聞いたり、自宅へ行って生活状況をみたり、通学する学校へ行って先生に話を聞いたりします。

佐藤さんの場合は、調査官調査をすることになるかもしれません。

裁判所の方が子どもに話を聞くのですか。
私たちの家に来るのですか。学校の先生にも話を聞きに行くのですか。

申立人:佐藤一郎

申立人
佐藤一郎

調停委員:田中

調停委員
田中

普段の一郎さんと健太さんの生活の様子をそのままお話しすれば大丈夫です。

そうなんですね。

申立人:佐藤一郎

申立人
佐藤一郎

調停委員:中村

調停委員
中村

裁判官に調査官調査の実施について確認します。

夫側の離婚調停モデルケース ~第1回期日~

ケース概要

夫
申立人:夫
佐藤一郎
会社員
妻
相手方:妻
佐藤春子
契約社員
  • 子ども1人(12歳・中学1年生)
  • 妻の夫へのモラハラ発言、夫婦間での教育方針の違い、妻から子への教育の強要が過ぎ、ある日、妻は取り乱したため警察沙汰になった。そんな出来事が続き、夫と子どもが家を出た。
  • 自宅は賃貸

調停が開かれるまでの流れ

Step01
夫より夫婦関係調整(離婚)調停と婚姻費用分担請求調停を申し立てました。
Step02
裁判所より、申立人へ調停期日通知書が送られます。
Step03
また裁判所より、相手方へ出頭を求める書面(調停期日通知書)が送られます。原則として、同時に申立書の写しが送付されます。 また、事情説明書の提出を求められます。
Step04
申立人である夫も、裁判所より、事情説明書の提出が求められます。 申立人と相手方は期日の2週間前までに事情説明書を記入し、裁判所へ提出します。
なお、相手方は申立人の記載した事情説明書を、申立人は相手方が記載した事情説明書を閲覧・謄写することができます。
Step05
調停は平日に行われ、1回の時間はおおむね2時間程度です。申立人待合室、相手方待合室でそれぞれ待機(二人が顔をあわせることはありません)し、原則として交互に調停室へ入り、調停委員と話し合いを進めていきます。
ウェブ会議の方法を用いる場合は、自分の番になったら調停室のパソコンで開かれた会議に自分のパソコンからアクセスします。
必要に応じて、家庭裁判所調査官が、調停期日に立ち会ったり、調停期日の間に未成年の子の監護の状況などについて調査を行う場合もあります。

【第1回期日】

調停委員:中村

調停委員
中村

それでは、1回目の調停を始めます。
申立人の佐藤一郎さんですね。
私は調停委員の中村と申します。
よろしくお願いいたします。
調停委員:田中

調停委員
田中

調停委員の田中です。よろしくお願いいたします。
まずご本人確認をさせていただきたいので、本人確認証を見せていただけますか。

(申立人が運転免許証を提示する。)

調停委員:田中

調停委員
田中

ありがとうございます。
調停委員:中村

調停委員
中村

まず調停についてご説明させていただきます。
調停とは、裁判と違って、どちらが良い悪いを裁判所が判断するということではなく、話し合いを通じて、できるだけお互いが納得のいくような解決策を見つけていこうとするものです。 私たち調停委員は、そのためのお手伝いをさせていただきます。
調停委員:田中

調停委員
田中

調停では、ご自身のお考えやお気持ちをお話しください。
調停で話された内容については、家庭裁判所外部に漏れることは一切ありませんが、相手方には伝わりますので、相手方に伝えたくないことはそのようにおっしゃってください。
調停委員:中村

調停委員
中村

では、今回佐藤一郎さんから提出された申立書の内容についてお話ししましょう。
一郎さんが提出された申立書の趣旨のところに、「相手方と離婚する、長男の親権者は申立人」とありますが、間違いありませんか。
間違いありません。
日頃から妻は子どもの教育に一生懸命でした。ある日、妻の納得がいかない結果を出した子どもに対して「いっしょに死のう」と騒ぎ立て、警察沙汰になりました。警察沙汰はその前にも何度もありました。妻とこれ以上一緒に生活できないと思い、私が家を出ようとしたら、子どもが「僕もついていく」と言ったため、私と子どもが家を出ました。離婚して、早く子どものために落ち着いた環境で生活したいです。
申立人:佐藤一郎

申立人
佐藤一郎

調停委員:田中

調停委員
田中

申立の実情に記載された内容に間違いはありませんか。
間違いありません。
私は家族のために、仕事をがんばってやってきました。
妻は日常的に私に対して人格を否定するような言動を繰り返していました。
それにより私は精神的苦痛を受け続けてきました。
また、妻は教育熱心なことはいいですが、子どもに過度というほどの学習を求める一方、私は本人の自主性を尊重したいと考えるため、教育方針を巡って夫婦間で対立することが何度もありました。子どもも妻の前ではビクビクして、本心を言えずにいて可哀想です。
次第に夫婦の協力関係は失われ、これ以上、婚姻関係の継続は難しいと感じ、離婚調停を申し立てました。
申立人:佐藤一郎

申立人
佐藤一郎

調停委員:中村

調停委員
中村

お話しいただいてありがとうございます。
ご事情は理解できました。
今お話しいただいた内容を相手方の春子さんにもお伝えし、春子さんのご事情も伺いたいと思います。
一度、申立人待合室でお待ちください。
交代
(調停委員が相手方待合室に佐藤春子さんを呼びにいく。)
調停委員:中村

調停委員
中村

はじめまして。
相手方の佐藤春子さんですね。
私は調停委員の中村と申します。
よろしくお願いいたします。
調停委員:田中

調停委員
田中

調停委員の田中です。よろしくお願いいたします。
まずご本人確認をさせていただきたいので、本人確認証を見せていただけますか。

(相手方がマイナンバーを提示する。)

調停委員:田中

調停委員
田中

ありがとうございます。
調停委員:中村

調停委員
中村

裁判所から突然、調停期日通知書と申立書の写しが届いてびっくりされたでしょう。
調停とは、裁判と違って、どちらが良い悪いを裁判所が判断するということではなく、話し合いを通じて、できるだけお互いが納得のいくような解決策を見つけていこうとするものです。
なかには申立人から訴えられたという被害感情を持たれる方がいらっしゃいますが、調停は家庭裁判所の場を使って話し合うというご理解をいただけたらと思います。
私たち調停委員は、そのためのお手伝いをさせていただきます。
調停委員:田中

調停委員
田中

調停では、ご自身の率直なご意見をお聞かせください。
調停で話された内容については、家庭裁判所外部に漏れることは一切ありませんが、申立人には伝わりますので、申立人に伝えたくないことはそのようにおっしゃってください。
調停委員:中村

調停委員
中村

先ほど、申立人の一郎さんより今回調停を申し立てた事情などを伺いました。
一郎さんからお聞きした内容としては、家族のためにがんばる一郎さんに、春子さんが一郎さんの人格を否定するような言動を繰り返しされたことにより、精神的苦痛を受けてきたこと、また、お子様の教育方針を巡って夫婦間で度重なる対立が生じたこと、健太くんが春子さんの前では萎縮してしまっていることを話されました。
このような事情から夫婦の協力関係は破綻しているため、離婚をしたいと思うようになったそうです。
調停委員:田中

調停委員
田中

これを聞いて、春子さんのご意見はありますか。
そうですか。
夫を応援する気持ちが行き過ぎた言動になってしまったようで、申し訳なかったと思います。
また、健太のテストの結果を見て驚き、混乱して、パニックを起こしてしまったのかもしれません。
健太には将来のために偏差値が高い学校に進学してほしいので、教育にはつい熱が入ってしまいました。
それに子どもにとっては両親が揃っていたほうがいいと思いますので、離婚なんて・・・。
相手方:佐藤春子

相手方
佐藤春子

調停委員:中村

調停委員
中村

先ほど一郎さんとお話した限りでは、一郎さんは離婚の意思は固いようですが。
やはり子どもには両親が揃っていたほうがいいし、離婚だなんて、世間体もありますし、考え直してほしいです。
私としては今まで通り家族3人、仲良く暮らしていきたいです。
それに健太が新しい学校に馴染めているか心配です。
相手方:佐藤春子

相手方
佐藤春子

調停委員:田中

調停委員
田中

春子さんのお気持ちはわかりました。
今お話しいただいたことを一郎さんにお伝えします。
もう一度、相手方待合室でお待ちください。
交代
(調停委員が申立人待合室に佐藤一郎さんを呼びにいく。)
調停委員:田中

調停委員
田中

お待たせいたしました。
先ほど、一郎さんからお聞きした内容を春子さんにお伝えしました。
一郎さんを応援する気持ちがどうやら、行き過ぎてしまったようです。それについては謝罪をされていました。
教育熱心なのも健太くんの将来を考えてのことだそうです。
離婚については一郎さんにもう一度考え直してほしいとのことです。
転校先での健太くんのことの心配もされていました。
妻の意見はわかりました。
でも私としてはやり直すつもりはありません。
健太は新しい学校で元気でやっていますし、テストの点数も心配ないです。
健太は私に懐いています。妻がいなくてもちゃんと私が育てていきます。
申立人:佐藤一郎

申立人
佐藤一郎

調停委員:中村

調停委員
中村

離婚された後、今後どうやって暮らしていこうとお考えですか。
仕事でご帰宅が遅くなったりしませんか。
私の実家が近くにあり、また両親も健在で、母は働いていないので援助を受けられると思います。
申立人:佐藤一郎

申立人
佐藤一郎

お互いに、今後について考えてくるということで第1回目の調停終了。 申立人と相手方の都合を確認した上で、第2回期日が約1か月後に指定された。

熟年離婚のお悩み~退職金が出るのを待つべきか~

弁護士 渡邊 佳帆

1 熟年離婚を検討されている方のご相談

熟年離婚を検討されている方からのご相談の際、よく聞かれることがあります。
それは、「配偶者はあと数年で定年です。ここまで我慢したのですから、財産分与のことを考えると、退職金が出るまで離婚は待った方がよいのでしょうか?」ということです。

2 財産分与の考え方

財産分与とは、「婚姻期間中に、夫婦が協力して築いた財産の分与」です。原則、夫婦が協力して築いた財産は夫と妻とで半分ずつに分けます。別居を開始した時点で、夫婦の経済的な協力関係は終了したとみなされます。そのため、財産分与の基準時は別居開始日です。夫婦それぞれの別居開始日時点の財産を列挙して、それらを一度合算します。その合計額を2で割り、夫婦それぞれの財産額がその金額になるよう差額を埋めます。

財産分与の例
財産項目 夫名義 妻名義
不動産 20,000,000 0
預貯金 10,000,000 3,000,000
生命保険の解約返戻金 6,000,000 5,000,000
退職金 7,500,000 0
社内預金 6,000,000 0
株 500,000 1,000,000
車 300,000 400,000
ローン -18,000,000 0
計 32,300,000 9,400,000
足して2で割った額 20,850,000
分与額(受け取れる額) -11,450,000 11,450,000

これが財産分与です。
財産分与については、弊所サイト「離婚Q&A 」においてもご説明しておりますので、併せてご覧ください。

3 退職金と財産分与

退職金は夫/妻が労働した結果得られるお金です。夫/妻が労働できるのは、妻/夫の支えがあってのものと考えられるので、退職金も財産分与の対象になります(独身時代の労働の対価分は控除されます)。
退職金全額が分与の対象となるわけではなく、別居日に退職したと仮定し、その時点の退職金額を計上することになります。上記の表の、「退職金 7,500,000、5,000,000」は、別居日時点の退職金額を計上したものです。
なお、婚姻期間のほうが就職してからの期間よりも短い場合は、就職してからの期間と同居期間で按分する、あるいは婚姻時の退職金額を差し引くといった調整をします。

按分の場合の計算: 別居日時点の退職金額 ×(同居期間 ÷ 在職期間)

4 熟年離婚における特徴

離婚する夫婦が若年・中年の場合は、退職金と言っても、まだまだ先の話であり、数十年後、実際に定年退職する際にもらえる金額は不明です。転職をする可能性もあります。
一方で、熟年離婚の夫婦の場合は、すでに定年退職している場合や、まもなく定年退職を迎えるため、支払われる退職金の額がわかっていることがあります。これは、熟年夫婦ならではの大きな特徴と言えるでしょう。では、熟年離婚の場合、退職金は財産分与においてどう考慮されるのでしょうか。

⑴ すでに定年退職し、退職金を受領している場合

すでに定年退職して退職金を受領している場合は、上記表における「退職金」という項目はなくなります。「退職金」は「預貯金」等他の財産に姿を変えているからです。そのうえで、別居日時点の財産を列挙して分与をします。
もし退職金の一部を費消してしまっていた場合は、費消した分はないものとして分与することになります。


⑵ まもなく定年退職を迎えるため、支払われる退職金の額がわかっているが、まだ受領していない場合

この場合は、別居日が定年退職の日より前であっても、退職金全額を財産分与の対象額として計上できるか否かが問題となります。
実務においては、別居後の勤続については配偶者の寄与がないことから、別居から定年退職までの期間がわずかであったとしても、退職時に受け取る退職金の全額を基準額とすることには消極的です。定年退職時に受け取る全額を基準額とした裁判例(東京地判平成11年9月3日)もありますが、同裁判例においては、在職期間のうち、同居期間に対応する額を算定し(退職金全額×同居期間÷在職期間)、中間利息を控除して分与額を計算しています。

5.まとめ

熟年離婚の場合であっても、別居日時点の財産を基準として分ける、ということが原則であるのは若年・中年の離婚と変わりません。しかし、退職金が入ったとたん、配偶者が浪費してしまうことが想像できる場合は、財産分与を受ける側から見れば、退職金が預貯金等他の財産に変わってからでは遅い可能性もあります。また、同居期間が長ければ長いほど財産分与において計上する退職金の額は大きくなりますが、そのために耐えがたい同居に耐え続けるか、それで精神的にもつのか、という問題もあります。このあたりの判断には、長年の婚姻生活により、配偶者の性格を熟知なさっていることが活きるでしょう。
弁護士は、離婚を悩んでいる方に法的な視点から道筋を示すことができますが、大事なのはご自身のお考えです。わたくしどもの法律相談が、お考えの構築の一助になればと思っています。

共同親権について

弁護士 渡邊 佳帆

1 はじめに

令和8年4月1日から、共同親権について定めた改正民法が施行されます。

共同親権について、注目すべきと考えられる点を紹介します。

なお、この記事は改正民法施行前に記載されたものです。記載している弁護士の私見が含まれ、実際の裁判所の運用は異なる可能性があることをご了承ください。

2 共同親権のポイント①

親権者でなくても子の養育に責任を負う旨の明記

共同親権導入の理由は、子の利益を確保するためには、父母双方が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが望ましいことから、離婚後の父母双方を親権者と定めることを例外なく一律に禁止していることの見直しが必要というものでした。

しかし、当然のことではありますが、親権者でなければ子の養育に関わらなくていい、何の責任も負わないというものではありません。その旨が改正民法では明文化されています。


改正民法817条の12

第1項 父母は、子の心身の健全な発達を図るため、その子の人格を尊重するとともに、その子の年齢及び発達の程度に配慮してその子を養育しなければならず、かつ、その子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養しなければならない。

第2項 父母は、婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利の行使又は義務の履行に関し、その子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならない。

3 共同親権のポイント②

共同親権と単独親権のどちらかが原則というわけではない

共同親権が導入された経緯は上記のとおりですが、共同親権か単独親権のどちらかが原則になるわけではなく、家庭ごとの個別具体的な事情を踏まえて、親権者(父母の両方か、父か、母か)を決めることになります。

親権者を決めるときに裁判所が考慮する内容が条文で明記されました。


民法819条7項

裁判所は、第二項又は前二項の裁判(筆者注:裁判上の離婚、親権者を定める協議に代わる審判、親権者変更の審判)において、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない。この場合において、次の各号のいずれかに該当するときその他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、父母の一方を親権者と定めなければならない。

一 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。

二 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(次項において「暴力等」という。)を受けるおそれの有無、第一項、第三項又は第四項の協議(筆者注:離婚の協議、親権者を決める協議、親権者変更の協議)が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。


この条文を字面どおりにとらえると、「DVや虐待がなければ、共同親権ということかな」というように読めますが、裁判所の判断によっては、DVや虐待がなくても、単独親権となる可能性があります。

父母の離婚後にその双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかといった判断の際には、①各父母が子との関係で親権を適切に行うことができるかどうかという観点での判断に加え、②父母が共同して親権を行うことができるかどうか、父母が子の養育について協力することができるかどうかという観点での判断が必要になると考えられます。

お父さんとお母さんはそれぞれ子にとっていい親でも、お父さんとお母さんの感情的な対立が大きく、子育てにおける協力が難しい状態であれば、共同親権とすることは「子の利益を害する」ことにつながります。そのため、共同して親権を行うことが難しいのであれば、DVや虐待がなくても、単独親権となり得ます。

また、「その他一切の事情」には子本人の意思も入ります。子が意見を表明した場合、その意見を適切な形で考慮することが求められています。

立法担当者の話では、この条文を作る際、共同親権・単独親権のどちらかが原則とされないようにかなり苦心したとのことでした。

4 共同親権のポイント③

子に関する全てを共同で決めないといけないわけではない

離婚が成立すれば、父と母はそれぞれ別の家で暮らし、お子様はどちらかの家で暮らすことになると思われます(もちろん、離婚成立後も同居する元夫婦もいらっしゃいます。)。しかし、仮に共同親権になった場合は、離婚後もお子様についてのことを逐一元夫・元妻に相談し、場合によっては一緒に住まなければならないのか? と心配されている方もいるかもしれません。

改正民法は、共同親権になっても、親権者の一方が単独で親権を行使できる場合を定めています。


ア 子の利益のため急迫の事情があるとき

改正民法824条の2第1項第3号は、「子の利益のため急迫の事情があるとき」には、親権者の一方が単独で親権を行使することができると定めています。これは、父母の協議を経ていては適時に親権を行使できず、その結果として子の利益を害するおそれがあるような場合をいいます。DVや虐待からの避難が必要である場合、緊急の医療行為を受ける必要がある場合などと考えられています。


イ 監護及び教育に関する日常の行為に係る親権の行使

改正民法824条の2第2項は、共同親権の場合でも、父母は「監護及び教育に関する日常の行為に係る親権の行使を単独ですることができる。」と定めています。監護及び教育に関する日常の行為に係る親権は、事実上、子と同居している親が単独で行使することになると思われます。

監護及び教育に関する日常の行為に係る親権とは、日々の生活のなかでできる行為で、子に重大な影響を与えないものと考えられています。例えば、食事、服装、短期間の観光目的の海外旅行、放課後のアルバイト、通常のワクチン接種の同意、日常的に飲む薬に係る親権行使が考えられます。

一方で、子の転居、子の心身に重大な影響を与える医療行為、子の進路に影響するような進学先の選択(私立小学校・私立中学校への入学や、高校への進学、長期間の海外留学など)、高校に進学せずに又は高校を中退して就職することなどに係る親権行使は、「日常の行為に係る親権の行使」に該当せず、共同で親権を行うことが想定されています。これらの事項において父母の意見が対立した場合は、裁判所が父母の一方を当該事項についての親権行使者と定めることができます(改正民法824条の2第3項)。

以上より、共同親権となれば、子の成長過程の節目節目で元配偶者と協議をすることが必要ですが、元配偶者と子に関するすべてについて連絡をとり、一緒に住まないといけない、ということはありません。

もちろん、単独親権であっても、子の進路について元配偶者に相談することを妨げるものではありません。

5.共同親権のポイント④ 後から共同親権にすることのハードル

改正民法施行後は、現在の単独親権を共同親権に変更するよう調停・審判の申立をすることができるようになります。申立さえすれば簡単に共同親権が認められるわけではなく、やはり、個別事情に基づいて変更を認めるべきか否かが考慮されます。

まず、先述の民法819条7項は親権者変更の審判においても適用されます。

そのため、例えば、養育費の支払い等、子の養育に関する責任を果たしてきたか、相手方(元夫・元妻)に対して誹謗中傷や人格を否定する言動をしていないか(改正民法817条の12第2項の定める人格尊重義務や協力義務に違反していないか)が考慮されます。


また、改正民法819条8項は次のように定めています。

改正民法819条8項

第六項の場合(筆者注:親権者を変更する場合)において、家庭裁判所は、父母の協議により定められた親権者を変更することが子の利益のため必要であるか否かを判断するに当たっては、当該協議の経過、その後の事情の変更その他の事情を考慮するものとする。この場合において、当該協議の経過を考慮するに当たっては、父母の一方から他の一方への暴力等の有無、家事事件手続法による調停の有無又は裁判外紛争解決手続(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成十六年法律第百五十一号)第一条に規定する裁判外紛争解決手続をいう。)の利用の有無、協議の結果についての公正証書の作成の有無その他の事情をも勘案するものとする。

現在は、離婚の際に親権者を父か母のどちらかに決めてから離婚することになりますが、改正民法施行後に共同親権に変更するか否かの判断においては、離婚前の事情も考慮されるということです。そのため、離婚時に父と母との間の対立が深かった場合は、その後、少なくとも子に関しては円満に協力できるようになったことを裁判所に伝える必要があると考えられます。

現在の実務においては、親権者を変更することは、現状の親権者の親権の行使に問題があることが必要になるため、ハードルが高いとされています。このハードルの高さが、単独親権から共同親権に変える場合にも当てはまるかは、改正民法施行後の裁判所の判断を待たなければわかりません。

6.筆者の私見(離婚は成立していないが別居している夫婦との比較)

共同親権が導入され、離婚後も自由に子どもに関わることができるようになる、と期待される方も多いと思います。

しかし、別居しているだけで離婚していない夫婦はいわば「共同親権」の状態ですが、それでも自由に別居しているお子様に会いに行くことができるわけではなく、面会交流調停等をしなければならないことがあるのが実情です。なぜなら、子を連れて別居を始めた親は、相手方(夫・妻)に会いたくないし、子を会わせたくないと考えている場合があるからです。

もちろん、離婚の話し合いは継続しつつも、調停等をせずに面会交流を順調に行えていることもあります。子は別居親が大好きだから、積極的に会ってほしいし、連絡も自由にしていい、という同居親もいらっしゃいます。しかし、別居を開始したら、原則としては、いつでも相手方の家、つまり子どもがいる家に入り、子どもと自由に交流できる、ということにはなりません(そのようなことをしたら、相手方と子の生活環境への配慮が足りないと評価されるでしょう)。

これまでは毎日子と会えて、自由に話して、一緒に遊び、相談にのり、眠る様子を見守ってきたのに、それらが突如できなくなり、会えるのは1か月に1回4時間場所はショッピングモールでどうでしょうかなどと言われる苦しみは察するにあまりあります。

子は別居親との積極的な交流を強く希望しており、子の利益のためにも別居親と会うべきだ、ということもあると思います。しかし、同居親は別居親とは事情の捉え方が異なり、子のためにも会わせるべきではないと考えているということもあるでしょう。また、別居親と子とが交流するたびに同居親が強い不安や恐怖を感じ、その結果として同居親のメンタル不調等を招くのであれば、子の利益にならないおそれがありますので、裁判所は子に会わせたくないという同居親の気持ちも考慮せざるを得ません。

上記のような、「離婚はしているけど別居している、事実上の共同親権」の状態が、改正民法の離婚後の共同親権になると変わるのか、ということには疑問があります。 共同親権が導入されても、実際にどのような形でお子様に関わることができるかは、父母間の関係や協力状況が重要になると思われます。

別居を継続して離婚を成立させた例

更新日:2026.02.02

50代男性

Aさん/50代男性

解決内容

相手方が離婚を拒否したため、最終的に裁判で離婚判決を得て離婚が成立した

職業

会社員

婚姻期間

25年

離婚の種類

裁判離婚

子ども

あり

担当弁護士: 杉浦恵一

相談内容

Aさんは、配偶者との性格や価値観、金銭感覚の不一致が著しく、また配偶者から暴言を言われていたため、その生活に耐えられず、離婚を考えて別居し、当事務所にご相談にいらっしゃいました。

弁護士の対応

Aさんの希望としては、配偶者から様々な金銭的な請求をされていたことから、まずは別居して平穏な暮らしをしたいということと、長期的な目線でいずれ離婚をしたいということでした。

そのため、当事務所では、配偶者に対して受任通知を送付するとともに、一定の婚姻費用を支払う旨を通知し、実際に婚姻費用は支払うとともに、当事者間の話し合いでは解決が難しそうであったことから、離婚調停を申し立てました。

離婚調停の申立てに対して、配偶者から婚姻費用分担の調停の申立てがあり、同時並行で話を進めましたが、配偶者は離婚を拒否したため、離婚調停は不成立で終わりました。また婚姻費用分担調停は、事前に婚姻費用額を計算していたことから、別居後の支払額と同額で婚姻費用分担調停が成立しました。

その後、別居期間が3年を経過したことから、配偶者に対して離婚訴訟を起こし、裁判所から離婚の判決を得て離婚が成立しました。

弁護士の所感・補足

本件では、配偶者が離婚を拒否することが予想されたことから、もともと長期的な視点に立って離婚に向けた手続きを粛々と進めていく方法がとられました。

離婚を求める側からすれば、早期に離婚することに越したことはないのですが、相手方が離婚を拒否した場合には、不貞行為や暴力などの分かりやすい離婚の原因がない限り、すぐに離婚することは難しい場合が多いですので、長期的な視点で進めていく必要があるでしょう。

本件のポイント

今回の件でのポイントは、
・配偶者が離婚を拒否しそうな場合には、長期的な視点で準備を進める。
・まずは別居後の生活を安定させることを優先し、優先順位を設ける。
といったことが考えられます。

一般的な裁判所の考え方としては、不貞行為や暴力などの分かりやすい離婚の原因がない場合には、簡単には離婚を認めない傾向があります。また、配偶者が離婚を拒否している場合には、当事者の話し合い(協議・調停)では解決することができず、必然的に裁判所の判決等で強制的に離婚をすることを求めざるを得ないでしょう。

このような場合には、途中であきらめず、長期的な視点にたって粘り強く継続していくことが必要でしょう。

参考判例

大阪高等裁判所 平成21年5月26日判決

“

約18年にわたり大きな波風の立たないまま婚姻生活を送ってきていた夫婦の間で、日常生活の上で様々な形で軽んじるような行為や先妻の位牌を無断で親戚に送り付けたり,思い出の品々を勝手に焼却処分したりしたことなどから別居に至り,屈辱的出来事として心情を深く傷つけた上で精神的打撃を理解しようとする姿勢に欠けていること等から、婚姻関係は修復困難な状態に至っているとして,別居期間が1年余りでも離婚を認容した事例。 ”

おわりに

弊所では様々なリスクを踏まえ、依頼者の方に納得していただける解決を目指して業務を行っております。

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不動産収入や株の収入からも婚姻費用をもらえますか?

弁護士 劉 可心

1 はじめに

婚姻費用は、双方の収入を考慮して算定されます。典型的なケースでは、双方の給与収入から、裁判所が公表している算定表に基づき決定されます。他方で、中には、夫婦の一方が不動産を所有しており、ここから賃料を得ているケースも存在します。特に、当該不動産や株が相続や贈与によって取得した特有財産である場合、そこから得られる収入も、婚姻費用の算定において、考慮されるのでしょうか?

結論から言うと、考慮される可能性は高いです。

2 裁判例の紹介

大阪高決平成30年7月12日判時2407号27頁

【事例】

・申立人・抗告人(権利者側)の収入は元々96万円だったが、別居前後で退職扱い(義務者が経営する会社で勤務)。平成30年以降は年収100万円が相当と認定。

・相手方(義務者側)は会社役員で、平成30年の収入は、給与収入600万円、自社株の配当金200万円、年金収入128万円、不動産所得20万円として認定。

【裁判所の判断】

「イ また、相手方は、平成29年8月には、●●●からの株式配当として200万円を得ている。これは、税理士と相談の上、相手方への配当金の名目で支払われたものにすぎないのであるから(引用の上補正した原審判1(2))、婚姻費用分担額の算定に当たっては、相手方に対する給与収入と同視し得るとみるべきである。

ウ さらに、相手方は、配当金以外に、平成27年と平成28年に、公的年金として各年約128万円を受け取っていたから、平成29年以降も同程度の公的年金を受給しているとみることができる。年金収入は、職業費を必要としておらず、職業費の割合は、給与収入(総収入)の2割程度であるから、上記年金収入を給与収入に換算した額は、上記年金額を0.8で除した160万円となる(128万円÷0.8)。

加えて、相手方は、平成28年に不動産所得約20万円を得ており、これを標準的算定表の給与収入に換算すると25万円程度となる。

エ 以上によれば、標準的算定表に当てはめる相手方の収入は給与収入985万円となる。

(計算式 600万円+200万円+160万円+25万円)」

「相手方は、相手方の配当金や不動産所得に関し、『抗告人との婚姻前から得ていた特有財産から生じた法定果実であり、共有財産ではない』から、婚姻費用分担額を定めるに当たって基礎とすべき相手方の収入を役員報酬に限るべきである旨主張する。

しかし、相手方の特有財産からの収入であっても、これが双方の婚姻中の生活費の原資となっているのであれば、婚姻費用分担額の算定に当たって基礎とすべき収入とみるべきである。」

裁判例の意義

特有財産自体は原則として財産分与の対象とならないことから考えて、特有財産からの収入も婚姻費用算定上、考慮しないという見解も十分成り立ちそうではありますが、この裁判例はその立場を取らず、婚姻費用の算定で考慮したものです。ただし、「これが双方の婚姻中の生活費の原資となっているのであれば」という留保がついていることから、特有財産からの収入が生活費に全く充てられないような場合は除外されるでしょう。このため、必ずしも不動産収入等が婚姻費用の算定で考慮されるとは限りませんが、多くの世帯ではこれらの収入を生活費に充てていると思われますので、多くの場合は不動産等からの収入も考慮した婚姻費用が請求できる、という結論となるでしょう。

もう一つの重要な点は、給与収入と違い、特有財産からの収入には職業費がかかりません。一般的に、給与所得者は被服費、交通費、交際費など、就労するために様々な費用が掛かるので、この分を職業費として考慮し、基礎収入が算定されています。職業費はおおむね、総収入の20%と言われているので、職業費がかからない収入を給与収入に換算するときは、0.8で割り戻すこととされています。本件では、配当金は自社株からのものであり、実質的には給与収入と何も変わらないものであるため、割り戻しはされていませんが、年金収入と不動産収入については割り戻して給与換算されています。そのため、これらの収入については、実際の額よりも高額のものとして考慮されます。


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