夫婦が不仲となり別居する際、父母のどちらが子供の監護者となるのかについて、夫婦間で取り決めたうえで別居するのが望ましいとは思いますが、取り決めができない場合、やむを得ず父母のどちらかが子を連れて出ていくこともあると思います。
配偶者のどちらかが勝手に子を連れて出て行ってしまった場合、子を連れていかれてしまった側の配偶者は、子の監護者指定・子の引渡しの審判を申立て、子を自分のもとに引き渡すよう請求することができます。
上記の申立てがなされると、裁判所は、父母のどちらかを子の監護者に指定することになります。
子を連れて別居した側の配偶者が監護者と指定された場合は、子の監護を継続する(子と一緒に暮らし続ける)ことになります。
一方、子を連れていかれてしまった側を監護者に指定する場合には、子を連れて行った配偶者に対し、子を監護者に引き渡すよう命じることになります。
子供を連れていかれた側の配偶者が監護者に指定され、かかる審判に基づいて相手方配偶者に子を引き渡すように求めたけれども、応じてもらえない場合には、強制執行を検討することになります。
子の引渡しを求める強制執行には
①執行裁判所が決定により執行官に子の引渡しを実施させる直接的な強制執行の方法
②義務の履行まで一定の金銭の支払いを命ずる間接強制の方法
という2つの方法があります(民事執行法174条1項)。
もっとも、①の直接的な強制執行の方法は、子の心身に与える負担を最小限にとどめる観点から
・間接強制の決定が確定した日から2週間を経過したとき
・間接強制を実施しても、債務者が子の監護を解く見込みがあるとは認められないとき
・子の急迫の危険を防止するため直ちに強制執行をする必要があるとき
のいずれかに該当する時でなければ、まずは間接強制から始めることになります(民事執行法174条2項)。
子の引渡しを求める側からすれば、直接強制によって一刻も早く子供を取り戻したいと思われるかもしれませんが、経験上、直接強制が認められるまでには相応の時間と費用がかかりますし、間接強制の方法は、子供を引き渡さない配偶者に対し、結構な経済的負荷を与えますので、思いのほか効果が認められる場合もあります。
そのため、差し迫った緊急性がない場合には、ひとまず間接強制を申立てたうえで、直接強制の準備を進めるのもいいのではと思います。
それでは、子供が引き渡しを拒んでいる場合にも間接強制が認められるのでしょうか。
この点については、参考となる最高裁判所の判例があります。
最高裁判所平成31年4月26日
子の引渡しを命ずる審判は、家庭裁判所が、子の監護に関する処分として、一方の親の監護下にある子を他方の親の監護下に置くことが子の利益にかなうと判断し、当該子を当該他方の親の監護下に移すよう命ずるものであり、これにより子の引渡しを命ぜられた者は、子の年齢及び発達の程度その他の事情を踏まえ、
子の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ、合理的に必要と考えられる行為を行って、子の引渡しを実現しなければならないものである。このことは、子が引き渡されることを望まない場合であっても異ならない。したがって、子の引渡しを命ずる審判がされた場合、当該子が債権者に引き渡されることを拒絶する意思を表明していることは、直ちに当該審判を債務名義とする間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではない。
上記判例は、上記の基準を掲げ、当該事案については、①長男(9歳7カ月)が執行の際、拒絶して呼吸困難に陥りそうになり執行が不能とされた、②人身保護請求の期日において、長男が引き渡し拒絶の意思を明確に示し、自由意思に基づいてとどまっているものとして人身保護請求が棄却された、との事情から、長男の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ長男の引渡しを実現するため合理的に必要と考えられる抗告人の行為は、具体的に想定することが困難であるとの評価をして、間接強制の申立てを権利の濫用にあたるとしました。
これに対し、最高裁判所令和4年11月30日は、上記基準にしたがって判断した結果、間接強制の申立てを権利の濫用には当たらないと判断しました。
いずれも最高裁の決定が出た時点
令和2年8月 父が子らを連れて別居
令和2年12月 和歌山家庭裁判所が子らの監護者を母と指定
令和3年4月5日 母が相手方の自宅に赴き、二男の引渡しを受ける
長男は、2時間にわたり説得したが応じなかった
令和3年5月30日 長男と二男を面会させる機会を設けたところ、二男と一緒に母がいたことに長男が強く反発した。
令和3年6月9日 抗告人が間接強制の申立て
家庭裁判所
長男を引き渡すまで1日につき2万円を支払うよう命じた
↓ 相手方である父が抗告
高等裁判所
現時点において、本件子の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ本件子の引渡しを実現するために合理的に必要と考えられる抗告人の行為を具体的に想定することは困難というべきである。
本件審判では考慮することができなかった本件審判確定後に明らかとなったこのような事情の下において、本件審判を債務名義とする間接強制決定により、抗告人に対して金銭の支払を命じることで心理的に圧迫を加えて本件子の引渡しを強制することは、過酷な執行として許されないと解するのが相当である。
そうすると、このような決定を求める本件申立ては、権利の濫用に当たるものであって認められない
↓ 抗告人である母が抗告
最高裁判所
家庭裁判所の審判により子の引渡しを命ぜられた者は、子の年齢及び発達の程度その他の事情を踏まえ、
子の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ、合理的に必要と考えられる行為を行って、子の引渡しを実現しなければならないものであり、このことは、子が引き渡されることを望まない場合であっても異ならない。
したがって、子の引渡しを命ずる審判がされた場合、当該子が債権者に引き渡されることを拒絶する意思を表明していることは、直ちに当該審判を債務名義とする間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではないと解される(最高裁平成30年(許)第13号同31年4月26日第三小法廷決定・裁判集民事261号247頁参照)。
そうすると、長男が抗告人に引き渡されることを拒絶する意思を表明したことは、直ちに本件申立てに基づいて間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではなく、本件において、ほかにこれを妨げる理由となる事情は見当たらない。原審は、上記意思が現在における長男の真意であると認められ、長男の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ長男の引渡しを実現するため合理的に必要と考えられる相手方の行為を具体的に想定することが困難であるとして、
本件申立てが権利の濫用に当たるというが、本件審判の確定から約2か月の間に2回にわたり長男が抗告人に引き渡されることを拒絶する言動をしたにとどまる本件の事実関係の下においては、そのようにいうことはできない。
したがって、本件申立てが権利の濫用に当たるとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法がある。
子の引渡しについての間接強制の申立ては、一般的に、比較的近い時期に裁判所が適正な監護者であるとしてお墨付きを与えた監護者の申立てによるものですので、執行裁判所は、
監護者指定の審判後に余程の大きな事情の変更がない限りは、審判内容をそのまま実現する方向になると思われます。
上記の平成31年と令和4年の判例で結論が別れたのは、平成31年の事案は、単に当事者間での引渡しが実現しなかったというだけでなく、
直接強制が執行不能となっていることや、裁判所の前で長男が明確に引き渡されるのを拒絶する意思を明らかにしたことで人身保護請求が認められなかったという、裁判所の目から見て、長男が引き渡しを拒んでいることの客観的に明白な事情があったからだと思われます。
重要なのは面会交流が適切に実施されることですから、慰謝料請求には慎重になるべきだと考えることもできます。
したがって、単に子供が引き渡されるのを拒んでいたとしても、間接強制の申立てが認められないということは、可能性としては少ないと思われますので、子供を引き渡すことがどうしても困難だという場合には、早い段階で、再度、監護者を定める調停や審判を申立て、裁判所の判断を仰ぐなどことが必要になるものと思われます。
財産分与の審判や離婚訴訟において、自分が支払いを受ける側だと思って財産分与を申し立てたけれども、財産を整理していく中で、実は、財産分与の申立人が支払う側であることが判明することもあります。
逆に、財産分与を申立てられ、てっきり財産分与を支払う側だと思っていたけれども、財産を整理していく中で、実は支払ってもらえる側だったということもあると思います。
最近は、共働きの夫婦が増え、共有財産中、妻名義の財産が占める割合が高くなってきていますので、こういったケースは、以前よりも増えているかもしれません。
それでは、一方の配偶者が財産分与の給付を受ける側の権利者であると考えて財産分与の申立てをした場合において、裁判所は、財産分与の申立てをしていない相手方配偶者への財産分与を命ずることができるのでしょうか。
この点が問題になった裁判例を紹介します。
下記裁判例は、「少なくとも相手方が、当該審判の手続において、自らが給付を受けるべき権利者であり、申立人に対して給付を求める旨を主張しているときは」、「申立人に対して相手方への給付を命じることができる」としています。
財産分与を申立てた側が、逆に支払う側になってしまう可能性もあるということです。
財産分与に関する処分の審判事件においては、分与を求める額及び方法を特定して申立てをすることを要するものではなく、単に抽象的に財産の分与の申立てをすれば足り(略)、また、裁判所は申立人の主張に拘束されることなく自らその正当と認めるところに従って分与の有無、その額及び方法を定めるべきものであるところ(略)、当該審判事件の審理の対象が、基本的に離婚の際の夫婦共有財産の清算であって、当事者の一方から他方に対する分与の是非並びに分与の額及び方法は、裁判所が当該清算の結果等一切の事情を考慮してこれを定めることとされていることからすると、裁判所において、財産分与に関する処分の審判の申立人が給付を受けるべき権利者となるように財産分与の内容を定めるか、そうでなければ当該審判の申立てを却下しなければならないものと解すべき理由はなく、相手方が給付を受けるべき権利者となるような財産分与を定めることも可能であると解される。
このような解釈は、財産分与に関する処分の審判事件において審判を得ることについて、申立てを受けた相手方の正当な利益を保護するため、相手方が本案について書面を提出し、または期日において陳述した後は、申立ての取り下げについて相手方の同意を得なければ、その効力を生じないものとする特則を定めた家事事件手続法153条とも符合するといえる。
もっとも、財産分与に関する処分の審判の申立てが、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができない時にされるものであること(民法768条2項本文)に鑑みると、審判の申立人が自らが給付を受けるべき権利者であると主張して相手方に対して給付を求める趣旨で申立てをし、かつ、申立ての相手方が給付を求める意思を有していない場合、すなわち、相手方が申立人から給付を受けないものとすることにつき当事者間に争いがない場合にまで、申立人に対して相手方への給付を命じる必要はないと解される。
以上を踏まえると、財産分与の処分に関する審判の手続において、その審判の申立人が、自らが給付を受けるべき権利者であると主張し、相手方に対してその給付を求めたが、審理の結果、申立人が給付を受けるべき権利者であるとは認められず、かえってその相手方が給付を受けるべき権利者であると認められる場合において、少なくとも相手方が、当該審判の手続において、自らが給付を受けるべき権利者であり、申立人に対して給付を求める旨を主張しているときは、審判の申立てを却下するのではなく、申立人に対して相手方への給付を命じることができるというべきであり、このことは、上記の場合において、申立人がその申立後に財産分与に関する処分の審判を求める意思を有しなくなったとしても、そのことに左右されるものではない。
上記裁判例と関連する問題として、財産分与を支払う側の配偶者が、自分が相手方配偶者に対し、財産分与を支払うべきであることを求めて財産分与の申立てをすることができるのか、という問題もあります。
わざわざそのような申立てをする人がいるのかと思われるかもしれませんが、離婚訴訟において、相手方配偶者が離婚自体を争っている場合、当該配偶者は、離婚を拒んでいる立場ですので、自らは離婚を前提とした財産分与の申立てをしてこないことがあります。
かかる場合、仮に判決で離婚が認められたとしても、財産分与についての問題は解決されていませんので、離婚後、相手方が財産分与の申立てをしてくることが予想されます。こういったケースでは、せっかく苦労して離婚が解決しても、次は財産分与の争いが続いてしまい、何年も裁判所と関わり続けなければならないといった事態もあり得ます。
そのため、どうせ財産分与を支払わなければならないのであれば、離婚訴訟のなかで一回ですべてを解決してしまいたいと思う当事者さんもいらっしゃいます。
今回の裁判例は、かかる論点については触れていませんが、上記裁判例の差し戻し前の最高裁判所令和3年10月28日決定は、財産分与の申立てがなされた場合の相手方は、たとえ財産分与の申立てが却下された場合でも(相手方にとって何等の不利益もないように思える場合にも)、かかる結果に対して、相手方が即時抗告をすることもできるとしています。
本論点については、明確に肯定した最高裁の判例はなく、学説上も肯定説否定説に分かれているようですので、裁判所にも相談しながら進めていくのがいいと思われます。
財産分与は、一度申立てをすると、自己に不利益な結果となる可能性があることを踏まえ、慎重に申立てをするか否かを判断する必要があるといえます。
逆に、財産分与を申立てていない側は、自らが申立てをしていなくても財産の給付を受けられる可能性はありますが、この点の裁判所の扱いが統一していない部分がありますので、そのような場合には、相手方からも財産分与について予備的反訴をしておくのが安全といえます。
なお、離婚訴訟において、離婚を拒んでいる当事者が、財産分与の整理に消極的な姿勢でいる場合がありますが、財産分与を含む離婚判決が確定した後は、再度の財産分与の申立てが認められない可能性があることにも十分注意をすべきといえます(参考 東京高等裁判所決定令和4年3月11日)。
以上のとおり、財産分与には、裁判所の扱いが必ずしも明確ではない争点が多数ありますので、疑問に思われることがある場合は、弁護士に相談してみることをお勧めします。
財産分与において、自宅不動産の所有権を取得した場合には、自宅の所有権を取得したことを、第三者にも主張できるようにするため、相手方配偶者の名義になっている登記を、ご自身の名義に移転してもらう必要があります。
なお、自宅の住宅ローンが完済されていないまま登記を移転してしまうと、金融機関との間で大変な問題になることがありますので、ご注意ください。詳しくは、こちらをご覧ください。
登記手続に関し、協議で離婚した場合には、離婚後に、元夫と元妻とが共同で登記申請手続きをする必要があるのに対し、裁判所を介して離婚し、財産分与について意思表示したことを犠牲する文言を記載した判決や調停調書などがある場合には、自宅を取得する側の配偶者が、単独で登記申請手続きをすることができるという、大きな違いがあります。
権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
登記義務者というのは、自宅の登記を移転される側のことをいい、登記権利者とは、自宅の登記を移転してもらい登記名義人となる側のことをいいます。
例えば、離婚による財産分与の協議がまとまり、元夫名義の自宅不動産の登記名義を元妻に移転する場合、登記義務者である元夫と、登記権利者である元妻の両方からの申請がなければ登記を移転することができません。
このように記載すると、離婚後の元配偶者が協力してくれるのかしらと心配になる方がいらっしゃるかもしれませんが、多くの方は、離婚後の登記手続を、司法書士に依頼されると思います。依頼を受けた司法書士は、元配偶者と連絡をとり、意思確認のうえ元配偶者から必要書類の提供を受けてくれます。司法書士というワンクッションがあることで、離婚した元配偶者が冷静になることが多く、手続きに協力してくれなくて登記ができないということはそれほど多くはないと思います。
このように、登記手続には司法書士を利用することは有益ですから、協議離婚後のトラブルを回避するため、当事者間の協議でまとまりそうな事案であっても、離婚する前から司法書士や弁護士に相談し、離婚協議書の内容のチェックを受けたり、手続きの流れを確認しておくことをお勧めします。
上記のとおり、登記の移転は共同申請が原則なのですが、共同申請の重大な例外として、登記手続をすべきことを命ずる確定判決、和解調書、調停調書などによる登記の場合は、不動産を取得した側が、単独で登記申請することができます。
第60条(略)の規定にかかわらず、これらの規定により申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、当該申請を共同してしなければならないものの他方が単独で申請することができる。
条文上は、「確定判決」としか記載されていませんが、確定判決と同一の効力を有する、調停調書、和解調書、審判なども含みます。
なお、公正証書は含みませんのでご注意ください。
裁判所を介して離婚をするご夫婦は、対立関係も激しく、共同して登記の申請をすることが困難となる場合がありますので、単独で登記の申請ができることは大きなメリットとなります。もっとも、判決や調停調書で不動産の財産分与を受けていれば、常に単独申請が可能であるというわけではなく、法務局が登記の申請を受理してくれるような条項の記載になっていなければなりません。
この点について、裁判所は登記の専門家ではありませんので、必ずしも登記に対応した和解調書を作成してくれるとは限りません。
そのため、弊所の弁護士は、合意前に条項案を司法書士にチェックしてもらい、問題なく登記の申請ができることを確認するようにしています。
先ほど、裁判所を介して離婚をした場合には、確定判決等をもって単独で登記申請ができるとお伝えしました。
この点、判決や調書の文言が、引き換え給付条項となっている場合には、執行文の付与が必要となりますのでご注意ください。
引き換え給付条項というのは、例えば、自宅を取得する側の配偶者が、自宅を手放す側の配偶者に金銭を支払うこととなっている場合に、
「原告は、被告に対し、前項の代金の支払いを受けるのと引き換えに、別紙物件目録記載の不動産について、本日付け、本件離婚に伴う財産分与を原因とする所有権移転登記手続きをする」
というような形式の条項のことをいいます。
経験上、裁判所は引き換え給付条項を好むように思います。
かかる趣旨は、所有権移転登記と代金の支払いの同時履行を確保しようとするものだと思われますが、実際には、同時履行の関係にはならないことに注意する必要があります。
本来、登記手続は、共同申請が必要であるところ、判決の確定もしくは調停等の債務名義が成立したときに登記義務者の登記申請意思が擬制されることによって(民事執行法177条1項本文)、単独で申請することが可能となります。
これに対し、引き換え給付となっている場合、例外的に、条件成就執行文が付与されたときに登記義務者の意思表示が擬制され(民事執行法177条1項但書、同条2項)、単独での登記申請が可能となります。
そのため、一見、引き換え給付判決は、代金の引き換えと登記手続が同時履行の関係にあるように見えますが、手続き的には、必ず代金の支払いが先履行となります。
登記権利者は、代金を支払い、登記義務者から代金を受領したことを証明する書面(領収書等)を受け取り、裁判所で執行文の付与を受けることで、ようやく単独申請が可能となります。
せっかく財産分与で自宅を取得しても、登記の移転でトラブルになってしまうと大変困りますので、登記の移転が必要となるような財産分与をする場合には、事前に司法書士もしくは弁護士に相談されることをお勧めします。
さらに、具体的な登記手続の方法について知りたい方は、こちらをご覧ください。
離婚をする際、相手方配偶者に対し、慰謝料を請求したいと思われる方も多いと思います。
かかる離婚慰謝料を請求する際、支払いがなされるまでの遅延利息も請求することで、よりたくさんの慰謝料を取得することができます。
では、離婚慰謝料は、どの時点からの遅延利息を請求することができるのでしょうか。言い換えれば、離婚慰謝料の支払いは、どの時点から遅滞に陥ることになるのでしょうか。
不貞行為などの行為が行われたとき、婚姻関係が破綻したとき、訴訟を提起したとき、離婚が成立したとときなど、様々な起算点が考えられます。
この点につき、離婚慰謝料債務が履行遅滞となる時期について、最高裁判所が明らかにしました。
最判令和4年1月28日
離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務は、離婚の成立時に遅滞に陥ると解するのが相当である。
一般に、離婚時に請求する慰謝料の意味合いを分析すると、次のように分けることができます。
不貞や暴力など、当該行為自体による精神的苦痛
相手方配偶者の不貞行為や暴力などから離婚へと発展する契機となった精神的苦痛に対する慰謝料
相手方配偶者の有責行為によって離婚せざるを得なくなったという結果そのものから発生する慰謝料
例えば、相手方配偶者の不貞行為に起因して離婚に至った場合、ひとえに慰謝料を請求すると言っても、慰謝料には様々な意味合いが込められていると思います。
不貞行為自体によって傷ついたことについての慰謝料(①)、不貞行為に起因して夫婦関係が悪化し離婚に至るまでの過程で被った精神的損害についての慰謝料(②)、②の積み重ねの結果、離婚することになったこと自体から被った精神的苦痛についての慰謝料(③)などがあり、これらを全体としてひとまとめにして離婚慰謝料として請求するというのが、一般的な感覚なのではないかと思います。
実務でも、上記①から③を一体のものとして捉えたものが、離婚慰謝料だと考えています。
つまり、相手方配偶者の具体的な有責行為から、最終的に離婚に至るまでの一連の経緯を全体として1個の不法行為として捉え、「当事者の一方の有責行為により離婚をやむなくされたことによる精神的苦痛」が離婚慰謝料だということになります。
そして、上記実務は、有責配偶者の不法行為によって侵害されるのは、「配偶者たる地位」だと解釈しますので、その地位を失うとき、すなわち離婚が成立したときに損害が発生し、遅滞に陥ることになります。
なお、上記は、不法行為の遅延損害金は、
「損害の発生と同時に、何らの催告を要することもなく、遅滞に陥る」(最判昭和37年9月4日)ことを前提としています。
裁判で、離婚慰謝料を請求する際には、「離婚判決確定日の翌日」から遅延損害金を請求することになります。
また、法定利率については、離婚時の法定利率が採用されることになります(現時点では年3%)。
最高裁判所は、過去の判決において、離婚慰謝料の消滅時効の起算点を離婚時であることを明らかにしていますので、今回の判例とも整合性があることになります。
最二小判昭和46年7月23日
相手方が有責と判断されて離婚を命ずる判決が確定するなど、離婚が成立したときに初めて、離婚に至らしめた相手方の行為が不法行為であるとを知り、かつ、損害の発生を確実に知ったこととなるものが相当である。
夫(または妻)が財産を管理していて、自分は家計の状況を把握していない
夫婦それぞれが定額を生活費として出し合い、残りは各自で管理しているため、相手の財産状況を把握していない
このような夫婦においても、財産分与をする際には、互いに財産を開示し合い分与額を決めますので、本来は問題なく財産分与がなされるはずです。
しかし、うっかり開示するのを忘れていたり、財産を隠匿されていたために気が付かないまま財産分与をしてしまったということは、それほど珍しくはないと思われます。
では、財産分与が決まった後に、本来分与されるべき共有財産が新たに見つかった場合には、再度の財産分与を請求することができるのでしょうか。
この点、離婚判決後に新たに発見された財産について、再度の財産分与の申立てができるのかを判断した裁判例(東京高等裁判所決定令和4年3月11日)がありますのでご紹介します。
財産分与として、夫から妻に約4538万を分与する内容を含む離婚判決確定。
①の時に判断の対象とされなかった妻名義財産(有限会社の出資口数等)についての分与を求めて、夫が財産分与の調停を申し立てたが不成立となり、審判に移行
②について、横浜家庭裁判所が、夫の財産分与の申立てを却下
結論
たとえ当事者が,前件判決において,本件申立て理由に係る財産が財産分与の対象となる旨の認識を有しておらず,あるいは同財産の存在について何らの主張立証をしていなかったとしても,これらの財産について重ねて財産分与の申立てをすることはできない。
理由
財産分与請求権は,当事者双方がその協力によって得た一切の財産の清算を含む1個の抽象的請求権として発生するもので,清算的財産分与の対象となる個々の財産について認められる権利ではないのであるから,裁判所が,その協議に代わる処分の請求に基づいて,財産分与の額及び方法を定める内容の判決等が確定したときは,その効力として,当事者双方がその協力によって得た財産全部の清算をするものとして具体的内容が形成されるものである。したがって,上記判決等が有効に確定したものである限り,当事者は,上記判決等において考慮されていない財産があることを理由に,当該財産について,重ねて清算的財産分与を求めることはできないものと解するのが相当である。
上記裁判例によれば、離婚判決後に新たな財産が見つかった場合にも、再度の財産分与の申立ては認められないことになります。
そのため、財産分与をする際には、相手方が開示した財産の内容を慎重に検討する必要性がより高くなったといえます。
もっとも、上記裁判例は、紛争の蒸し返しを防ぐことを優先した側面があるともいえ、いかなる事案にも再度の財産分与の請求が認められないとまでは言い切れないのではないかとも思います。
この点について、上記裁判例とは異なる見解を取った裁判例も存在しますので、紹介しておきます。
広島高松江支決平2.3.26
右審判,判決が確定後に当該処分の審理中に現われなかつた新たな財産が判明するなど右裁判時に基礎とされた事情に錯誤があり,またはその後の事情の変更により当該審判,判決の確定による法的安定(家事審判法7条,非訟事件手続法19条3項参照)を考慮しても,これを維持して当事者を拘束することが著しく信義,衡平に反する場合は,これを取消し,変更することができるものと解するのが相当である。
財産分与は、上記以外にも、様々な論点を含んでおりますので、まずは弁護士に相談してみることをお勧めします。
面会交流について、審判前保全処分が認められたという珍しい裁判例
(福岡家庭裁判所 令和4年6月28日)がありましたのでご紹介します。
〇当事者
申立人 父 43歳
相手方 母 41歳
長男 7歳(自閉症のグレーゾーンとの診断あり)
長女 7歳
〇別居
母である相手方が子供二人を連れて別居
別居期間約1年半
(いずれも掲載された事実の概要から推定)
〇別居後の面会交流の状況
別居から3ヶ月半後、相手方の弁護士の事務所で2時間
申立人と子らは和やかな時間を過ごすことができた
それ以降の面会交流は一切なし
〇直接的な面会交流を認める上で不利になりそうな事情
・相手方の強い面会交流拒絶の意思
・同居時に、申立人が自宅のリビングルーム等で私的な会話を複数回にわたり録音していた
・調停終了後に相手方を尾行するよう申立人が興信所に依頼
・同居中に申立人が、長男や相手方に対し暴力を加えたという相手方及び子らの話
・別居後の面会交流実施後、子らの精神状態が不安定となり、長男については申立人からの暴力によるPTSDが再燃した。長女についてはPTSDを疑うとの良しの診断あり
一見すると直接的面会交流を否定されそうな要素を含む上記事案について、原審は、月1回3時間の直接的な面会交流を実施するよう命じる審判とともに、かかる面会交流を仮に実施するよう命じる保全処分を出しました。
なお、かかる保全処分は、高裁(福岡高決令和 4年12月21日)で取消のうえ却下されていますが、
上記の直接的面会交流を命じる審判は、高裁(福岡高決令和 4年12月21日)でも維持されていますので、面会交流ができなくて悩まれている方にとっては、励みになる裁判例だと思います。
以下、上記裁判例について、解説します。
審判前保全処分というのは、審判が効力を生じるのを待っていたのでは、権利の実現が困難になる蓋然性が高い場合に、いざ審判が確定したときに備え、権利を実現できる状態を保全しておくことをいいます。
子の監護に関する処分との関係では、子の引き渡しを求める審判において、審判で決着がつく前に、仮に子供を引き渡してもらうよう求めるために審判前保全処分の申立てがなされることが多いです(家事事件手続法157条1項)。
かかる保全処分を、面会交流にも活用しようとしたのが本件の事案になります。
面会交流の調停や審判は、長期化する傾向にあります。
その間、監護親(子を監護している側の親)が面会交流の実施を頑なに拒んだ場合、非監護親は、審判が確定するまでの間、一度も子供に会うことができないことがあります。また、こういった事案では、
時間の経過とともに、両親の紛争の影響を受けた子供が面会交流への拒絶反応を示し始めることがありますので、審判の決着がつく前から、なるべく早期に面会交流を開始し、良好な親子関係を維持しておくことが望まれます。
なお、多くの場合、保全処分は本案審判と同日に出されることになりますので、保全処分を申立ててもすぐに面会交流が開始できるわけではありませんが、こういった事案は高裁に持ち込まれることが多いですので、 即時抗告の有無にかかわらず、確定を待たずに、審判を受ける者への告知により効力が生じることに意味があります(家事事件手続法109条第2項、74条2項)。
①保全の必要性
②本案認容の蓋然性
となります。
家事事件手続法157条によると、①の要件について、「子その他の利害関係人の急迫の危険を防止する」必要性が求められています。
本件では、原審は、かかる要件を緩やかに解釈し、「監護親の面会交流拒否の姿勢が明らかで、任意の面会交流実施の見込みが乏しいこと」
「父子の断絶がこれ以上長期化することは、未成年者らの心身の健全な発育に悪影響を及ぼす恐れがある」として「保全の必要性あり」と判断したのに対し、
高裁は、かかる要件を厳格に解釈し「保全の必要性なし」との判断を示しました。そして、これが結論の分かれ目となりました。
必要性の要件について、「子その他の利害関係人の急迫の危険を防止する」との文言を文字通り解釈すれば、面会交流がなされていないことをもって、 「子に急迫の危険」があると判断される事態は通常は考えにくいことから、今後も、この点の解釈が変わらない限り、面会交流の審判前保全処分を認めてもらうことはハードルが高いように思います。
〇直接的面会交流を命じた審判について
先に述べました通り、本件は一見すると直接的な面会交流を否定されそうな事案にも思えますが、本件原審は、一連の経緯を詳細に分析し、
夫婦間の問題と親子間の問題を区別することで、面会交流の実施が子らの利益に反するものということはできないと結論付けました。
経験上、監護親の面会交流拒絶の意思が強い場合、裁判所は、当面、手紙やメール等での間接的な面会交流を続け、子が○歳になったときに再協議しましょう、といった対応を促すことが多いと思います。
裁判所がこのような対応をする理由としては、監護親の意思に反して無理に面会交流を命じたところでなかなかうまくはいかないだろうということと、子らが再度の紛争に巻き込まれることを防止しようとの意図があるものと思われます。
本件事案においても、審判で命じられた毎月1回3時間の面会交流が継続的に実現されているかどうかや、審判後に父子関係の再構築を図ることができたのかどうかはわかりません。
しかし、正当な理由もなく面会交流が実施されていない事案が非常に多い実態を考えると、裁判所が積極的に面会交流を命じる旨の審判を出すことは、監護親の面会交流についての認識や社会の流れを変えるという意味で、有意義なことなのではないかと感じました。
なお、本件裁判例についても、それぞれの置かれた立場によってさまざまな主張や見方ができると思います。
面会交流に悩まれている方は、弁護士に相談してみるのも良いかもしれません。
更新日:2025.03.05
Aさん/50代男性
離婚成立/妻の自宅からの退去
職業
会社員
婚姻期間
15年
(うち別居期間4年)
離婚の種類
裁判離婚
(訴訟で和解、調停に代わる審判)
子ども
あり
依頼者は、精神不安定な妻と一緒に過ごすことが困難となり、当時小学生だった長男を連れて別居しました。
依頼者は、早期の離婚を希望し、受任時には、既に2度離婚調停を申し立てていましたが、いずれも妻に離婚を拒否され、別居が継続していました。
そのため、弊所が依頼を受けて、離婚訴訟を提起することとなりました。
家庭裁判所は,財産分与の審判において,当事者双方がその協力によって得た一方当事者の所有名義の不動産であって他方当事者が占有するものにつき,当該他方当事者に分与しないものと判断した場合,その判断に沿った権利関係を実現するため必要と認めるときは,家事事件手続法154条2項4号に基づき,当該他方当事者に対し,当該一方当事者にこれを明け渡すよう命ずることができると解するのが相当である。
裁判所において、財産分与に関する処分の審判の申立人が給付を受けるべき権利者となるように財産分与の内容を定めるか、そうでなければ当該審判の申立てを却下しなければならないものと解すべき理由はなく、相手方が給付を受けるべき権利者となるような財産分与を定めることも可能であると解される。
離婚でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
相談の流れはこちら
弁護士 渡邊 佳帆
裁判所において、婚姻費用と養育費は、標準算定方式・算定表に基づいて算定されます。
標準算定方式とは、平成15年に東京・大阪の裁判官が提案した、家庭裁判所の実務において採用されてきた方式を基本としつつ、統計資料等の結果に基づき、一定割合や指数を用いて婚姻費用・養育費を算定する簡易な計算方式です。算定表は、その方式に基づく婚姻費用・養育費の額を表にしたものです。標準算定方式・算定表の登場により、婚姻費用と養育費の算定が迅速かつ公平にできるようになりました。
この標準算定方式は社会実態の変化を受けて令和元年に見直されましたが、基本的な理念や考え方は変わっていません。
標準算定方式における婚姻費用・養育費は、統計上の平均的な家庭の生活費を想定して算定されています。教育費も例にもれません。標準算定方式においては、14歳以下の子がいる場合は、年額13万1302円(公立中学校学費)が、15歳以上の子がいる場合は、年額25万9342円(公立高校学費)が学校教育費として考慮されています。そのため、子が私立の学校に通っている場合や、大学に通っている場合は、別途計算が必要になります。
一方で、習い事代は標準算定方式においては考慮されていません。そのため、標準算定方式に基づく婚姻費用・養育費に加算して請求ができます。しかし、無制限に支払義務が認められるというわけではありません。
まず、婚姻費用や養育費を支払う側(義務者、と言います。)の承諾があった場合は、義務者は習い事代を支払う必要があります。支払う額は全額とは限らず、子を監護し、婚姻費用や養育費の支払いを受ける側(権利者、と言います。)と義務者の収入比で考える場合や、折半する場合があります。
義務者、権利者及び子が一緒に住んでいたころからその習い事をしていた場合は、その習い事について義務者の承諾があったとみなされることがほとんどです。義務者と権利者・子が別居した後に習い事を始めた場合でも、義務者が承諾すれば習い事代の負担を求めることができます。
ただ、承諾があったといっても、費用の支払を求めることができるのは、義務者が通常想定し得る範囲に限ります。たとえば、子が成長しても権利者が大会等に付き添う場合の付添費や、家でも習い事の練習ができるように家を改装した場合の改装代等は、必要性が乏しく、義務者が当初想定していたものでもないのであれば、支払を求めることは難しいと言えます。
仮に義務者の承諾がなかったとしても、当該習い事の必要性や、義務者と権利者の経済状況を鑑みて、義務者に負担させることが相当と判断される場合もあります。
標準算定方式は、子の年齢と数、権利者と義務者の年収さえわかれば、誰でも迅速に婚姻費用・養育費が計算できる画期的な仕組みです。しかし、あくまで「標準」の婚姻費用・養育費の算定方式を定めたものであるため、各家庭の個別事情に応じ別途修正が必要です。
修正事情として考慮していい事情と考慮できない事情の区別、考慮する際の方法等は、専門家であっても様々な文献・裁判例にあたって判断する必要がある複雑なものです。中には、複数の考慮方法があるため、実際の協議、調停や訴訟において議論になるものもあります。
現在は、様々なサイトで簡単に婚姻費用・養育費が算定できますが、それらは標準算定方式に基づくものであると言えるでしょう。ご家庭の個別事情を考慮に入れたい場合は、別途検討が必要になります。専門家にご相談ください。
弁護士 田中 優征
離婚の相談を受ける中で、配偶者のモラハラが原因で、離婚したいという話を聞くことがあります。
モラハラという言葉が一般化し、法律上は定義も明確にされていませんので、何をもって「モラハラ」とするかは一様ではありませんが、
例えば、「暴力は振るわず、言葉や態度で嫌がらせをし、いじめること。」(goo辞書)等のように表現されることが多いでしょう。
それでは、モラハラは離婚の原因となるのでしょうか。
まず、前提として、離婚の原因について確認しておきます。
離婚の原因は、民法770条1項各号に規定があります。
内容は以下のとおりです。
各号のいずれかに該当する場合には、離婚訴訟において離婚が認められることになります。
モラハラは、1号から4号に該当する事情にはなりませんので、5号に該当するかどうかが問題になります。
5号は1号から4号を包括する一般的な規定と考えられています。
5号の婚姻関係を継続し難い重大な事由がある場合について、日本の裁判所は破綻主義、すなわち、婚姻関係が破綻している場合には、婚姻関係を継続し難い重大な事由があると判断する立場であると理解されています。
したがって、明確な基準があるわけではありませんので、モラハラが離婚原因、すなわち婚姻関係の破綻を示す事情になるかどうかについては、程度問題であり、事案によることになります。
ここでは、参考として、いわゆるモラハラ的な言動を詳細に認定し、離婚原因があると判断した裁判例を紹介します。
元妻である原告が、元夫の被告に対し、被告のモラルハラスメント行為によって離婚を余儀なくされたと主張して、慰謝料の支払いを求めた事案です(本稿と直接の関連がない請求については省略します)。
裁判所は、被告の婚姻後の原告に対する一連の暴言がいわゆるモラルハラスメント行為に当たり、原告の人格権を侵害するものであることは明らかとしたうえで、被告が原告との交際開始時においては婚姻継続中であったこと、前妻との子がいることを秘匿し、婚姻後も自らの婚姻歴について正しく説明していなかったこととあいまって、婚姻関係を破綻させる要因になった(すなわち、離婚の原因となった)と判示し、慰謝料として200万円の支払いを命じました。
なお、被告による自己の発言を正当化する主張については、自信の言葉が相手を傷つける暴力的なものであるとの自覚を欠いているためであるとして排斥しています。
上記の裁判例では、被告による一連の行為が、メッセージアプリ上等に残されており、詳細に検討することができた結果、被告の行為の程度が社会的に見て相当程度問題のあるものであったことから、一連のモラハラ行為やその他の事情も含めて考慮すると、被告の行為が離婚の原因となったという認定をされたものと考えられます。
このように考えると、モラハラが離婚原因に該当すると主張する際には、以下の2点に留意する必要があるでしょう。
① 訴訟において、モラハラ行為があったことの立証ができるかどうか。
モラハラ行為があったという主張をする場合には、モラハラ行為の証拠を提出し、それによってモラハラ行為があったと認定される可能性があります。
具体的な立証の方法としては、メールやLINE等のやり取り、録音などを提出することになります。
しかし、上記の裁判例のように、モラハラ行為の膨大な記録が、詳細に残っている例ということは多くないでしょうから、立証が困難なことも多いと思われます。
① モラハラ行為によって、婚姻関係が破綻しているとまでいえるかどうか。
最初に述べた通り、モラハラという言葉はかなり多義的な言葉です。
夫婦関係が良好ではなく、離婚を検討するような状況になっている夫婦においては、少なからずモラハラ的な言動が生じているといえるでしょう。
あまりに簡単に離婚が認められてしまうと、婚姻制度そのものが揺らぎかねませんから、その(一連の)モラハラ行為をもって法律上離婚を認めるべき程度に婚姻関係を破綻に陥らせたというには、高いハードルがあると考えられます。
上記のような問題点から、配偶者のモラハラ行為によって離婚を決意した場合であっても、その程度や立証可能性の程度に応じて、別居期間やその他の事情をも含め、総合的にみて離婚原因があるという構成をする必要がある場合がほとんどだと思われます。実際、上記裁判例においても、モラルハラスメント行為以外の事情も判断の理由として挙げています。
しかし、モラハラ行為の主張・立証が無駄になるというわけでもありません。どのような経緯で別居に至ったかということも重要な事情となりますし、離婚原因があるかどうかは総合的にみて判断されるからです。
離婚についてお考えの方は、一度ご相談ください。
【ご相談予約専門ダイヤル】
0120-758-352
平日・土日祝 6:00-22:00
【相談時間のご案内】
平日 | 9:00-18:30 |
---|---|
夜間 | 17:30-21:00 |
土曜 | 9:30-17:00 |
※夜間相談の曜日は各事務所により異なります
詳しくはこちら▶
事務所外観
より良いサービスのご提供のため、離婚相談の取扱案件の対応エリアを、下記の地域に限らせて頂きます。
愛知県西部(名古屋市千種区,東区,北区,西区,中村区,中区,昭和区,瑞穂区,熱田区,中川区,港区,南区,守山区,緑区,名東区,天白区,豊明市,日進市,清須市,北名古屋市,西春日井郡(豊山町),愛知郡(東郷町),春日井市,小牧市,瀬戸市,尾張旭市,長久手市,津島市,愛西市,弥富市,あま市,海部郡(大治町
蟹江町 飛島村),一宮市,稲沢市,犬山市,江南市,岩倉市,丹羽郡(大口町 扶桑町),半田市,常滑市,東海市,大府市,知多市,知多郡(阿久比町 東浦町 南知多町 美浜町 武豊町))
愛知県中部(豊田市,みよし市,岡崎市,額田郡(幸田町),安城市,碧南市,刈谷市,西尾市,知立市,高浜市)
愛知県東部(豊橋市,豊川市,蒲郡市,田原市,新城市,北設楽郡(設楽町
東栄町 豊根村))
岐阜県南部(岐阜市,関市,美濃市,羽島市,羽島郡(岐南町,笠松町),各務原市,山県市,瑞穂市,本巣市,本巣郡(北方町),多治見市,瑞浪市,土岐市,大垣市,海津市,養老郡(養老町),不破郡(垂井町
関ヶ原町),安八郡(神戸町 輪之内町 安八町),揖斐郡(揖斐川町 大野町 池田町),恵那市,中津川市,美濃加茂市,可児市,加茂郡(坂祝町 富加町 川辺町 七宗町 八百津町 白川町 東白川村),可児郡(御嵩町))
三重県北部(四日市市,三重郡(菰野町 朝日町 川越町),桑名市,いなべ市,桑名郡(木曽岬町),員弁郡(東員町))
三重県中部(津市,亀山市,鈴鹿市)
静岡県西部(浜松市,磐田市,袋井市,湖西市)
Copyright © 名古屋総合リーガルグループ All right reserved.
運営管理:名古屋総合法律事務所 弁護士 浅野了一 所属:愛知県弁護士会(旧名古屋弁護士会)
〒460-0002愛知県名古屋市中区丸の内二丁目20番25号 メットライフ名古屋丸の内ビル6階(旧丸の内STビル) TEL: 052-231-2601(代表) FAX: 052-231-2602 初めての方専用フリーダイヤル:0120-758-352
■提供サービス…交通事故,遺言・相続・遺産分割・遺留分減殺請求・相続放棄・後見,不動産・借地借家,離婚・財産分与・慰謝料・年金分割・親権・男女問題,債務整理,過払い金請求・任意整理・自己破産・個人再生,企業法務,契約書作成・債権回収,コンプライアンス,雇用関係・労務問題労働事件,対消費者問題,事業承継,会社整理,事業再生,法人破産■主な対応エリア…愛知県西部(名古屋市千種区,東区,北区,西区,中村区,中区,昭和区,瑞穂区,熱田区,中川区,港区,南区,守山区,緑区,名東区,天白区,豊明市,日進市,清須市,北名古屋市,西春日井郡(豊山町),愛知郡(東郷町),春日井市,小牧市,瀬戸市,尾張旭市,長久手市,津島市,愛西市,弥富市,あま市,海部郡(大治町 蟹江町 飛島村),一宮市,稲沢市,犬山市,江南市,岩倉市,丹羽郡(大口町 扶桑町),半田市,常滑市,東海市,大府市,知多市,知多郡(阿久比町 東浦町 南知多町 美浜町 武豊町)愛知県中部(豊田市,みよし市,岡崎市,額田郡(幸田町),安城市,碧南市,刈谷市,西尾市,知立市,高浜市) 愛知県東部(豊橋市,豊川市,蒲郡市,田原市,新城市,北設楽郡(設楽町 東栄町 豊根村)) 岐阜県南部(岐阜市,関市,美濃市,羽島市,羽島郡(岐南町,笠松町),各務原市,山県市,瑞穂市,本巣市,本巣郡(北方町),多治見市,瑞浪市,土岐市,恵那市,中津川市,大垣市,海津市,養老郡(養老町),不破郡(垂井町 関ヶ原町),安八郡(神戸町 輪之内町 安八町),揖斐郡(揖斐川町 大野町 池田町),美濃加茂市,可児市,加茂郡(坂祝町 富加町 川辺町 七宗町 八百津町 白川町 東白川村),可児郡(御嵩町))三重県北部(四日市市,三重郡(菰野町 朝日町 川越町),桑名市,いなべ市,桑名郡(木曽岬町),員弁郡(東員町))三重県中部(津市,亀山市,鈴鹿市)静岡県西部(浜松市,磐田市,袋井市,湖西市)