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住宅ローンが残っているマイホーム 離婚するとどうなりますか?

マイホーム

念願のマイホームを購入したあとに、残念ながら夫婦関係が悪くなり、離婚を考えるようになった場合、マイホームをどう扱うのか、残りの住宅ローンはどうなるのか、お尋ねが多い問題です。

夫婦が婚姻期間中に築いた共有財産を離婚するときには、公平に分配する(「財産分与」と言います)ことになります。

マイホームについて確認する

  • まず、不動産の名義はどなたになっているか、確認します。
    夫のみであったり、夫1/2・妻1/2で共有であったり、夫のあるいは妻の親の持ち分が含まれていたり
  • また、住宅ローンの契約内容がどうなっているか、確認します。
    債務者が夫で妻が連帯保証人になっているのか連帯保証人はいないのか、夫婦で連帯債務者なのか、ペアローンなのか
  • それから住宅の査定書を取り、住宅の価値がいくらか、住宅ローンの残債がいくらか、確認します。
  • オーバーローン(住宅の価値より残ローンのほうが多い)なのか、アンダーローン(住宅の価値が残ローンより多い)なのか、確認します。

これらの情報を集めた結果より選択肢を考えます。

財産分与の選択肢

もっとも、財産分与は、マイホームだけではなくその他の財産も含めて全体としてどのように分けるのかが問題となりますので、マイホーム以外の財産の整理も必要となります。

それら財産を整理したうえで、

  • 夫と妻どちらが所有権を取得するのか
  • 住宅ローンの債務者を変更することができるのかどうか(借り換えができるのかどうか)
  • 住宅を売却して財産分与をするのかどうか

マイホーム購入後に離婚する場合は、さまざまな選択肢が考えられます。一生に一度の大きな買い物で資産額も大きいので、しっかり話し合いましょう。あなたにとって、どの選択肢が良いか、よく考えましょう。

ご参考までにこちらもご覧いただけますと幸いでございます。
https://www.nagoyasogo-rikon.com/rikon-loan/

別居・調停を経て財産分与と養育費を取得した事例

更新日:2025.03.05

50代女性

Aさん/50代女性

解決内容

離婚成立、財産分与、養育費・婚姻費用の取得

職業

会社員

婚姻期間

25年
(別居期間3年)

離婚の種類

調停離婚

子ども

あり

相談内容

Aさんは、およそ2年前から夫と別居をしていましたが、夫から離婚の申し出を受けました。しかし、正式に財産分与等を取り決める必要があると考え、当事務所にご相談にいらっしゃいました。

弁護士の対応

Aさんの希望としては、離婚をするのであれば、財産分与や、長女の養育費について正式に取り決めをしたうえでなければ難しいというものでした。そこで、当事務所が代理をして、離婚の条件についての協議を申し入れしましたが、協議段階では話し合いが難航しました。

そこで、調停の申立てをし、調停において離婚条件・生活費について話し合うことになりました。なお、婚姻費用については、請求した時から支払いが認められるという裁判所の考えに基づき、交渉段階で内容証明郵便を送付しておきました。

調停においては、財産分与の基準時について争いがありましたが、最終的には、夫側からの提案を承諾し、財産分与として一定額の支払いを受けて離婚を成立させることとしました。

また、養育費については、双方の収入を基準に決定しました。

弁護士の所感・補足

財産分与の基準時については、婚姻生活中に築いた財産を清算するという財産分与の制度から、夫婦の協力関係が解消されたときとすることが一般的です。その多くが別居を開始した時になるのですが、本件は別居に至る経緯が少し特殊であったため、この点が争いになりました。

本件のポイント

本件における解決のポイントは、財産分与額の見通しをつけておくことにありました。
調停においては、財産分与等の金額の提示がなされることがあります。その際に、その金額が財産分与の額として適正かどうか分かっていなければ、提示を受け入れるかどうかを判断することができません。結果として、不十分な額しか受け取れなかったという事態も想定されるところです。

そのうえで、減額を受け入れる等、柔軟な解決を模索することが、調停を成立させるために必要になってきます。
そうしますと、財産分与に限らず、可能な限り結果の見通しを付けておくということが重要になってくると考えられます。

おわりに

離婚でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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離婚を弁護士に依頼すべき人は?弁護士に依頼するメリットは?

弁護士
  • 相手と顔を合せたくない、会話がない
  • 相手が怖くて話し合えない
  • 離婚については双方同意しているものの、離婚条件について何をどのように決めたら良いかわかりません
  • 相手が話合いに応じない
  • 離婚そのものを拒否されている

離婚したくてもこのような場合では話し合いができず、離婚を進めることができません。

離婚を進めようとお考えならば、あなたが弁護士をつけることで、離婚したいという真剣な思いを相手に伝えることができるのではないでしょうか。

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一人で調停に臨んでも、調停委員に伝えたいことが伝わらないと希望する結果になりません。 自分の思いを弁護士に伝えたら、弁護士があなたのために尽力して交渉します。 ましてや相手に弁護士がついた場合、自分ひとりで弁護士に対応することは大変な労力が必要です。

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離婚を考え始めたら、弁護士に相談しましょう。
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  • 出来事を時系列に整理しておく
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もっとも相談時間には限りがあります。
弊所では、初回相談時には、相談票というものをご用意しております。

相談票にご記入いただくことで、事前に弁護士が相談内容を把握し、充実したご相談をさせていただくことができるようにしております。

弁護士への離婚相談はこちらまで。
https://www.nagoyasogo-rikon.com/flow/

離婚することは決まっていますが、離婚条件の決め方がわかりません

喧嘩している男女
  • 離婚については双方同意しているものの、離婚条件について何をどのように決めたら良いかわかりません
  • 何も決めずに離婚したのですが、今からでも条件を決めることはできますか

このような内容のご相談をご希望される方がいらっしゃいます。

離婚するときに定める条件はご夫婦ごとに異なるとは思いますが、一般的には、

お子様に関する定めておくべき離婚条件

  • 親権者・監護権
  • 養育費
  • 面会交流

財産やお金に関する定めておくべき離婚条件

  • 財産分与
  • 年金分割

※慰謝料に関する定めておくべき離婚条件

  • 不貞についての慰謝料
  • 物理的な行為もしくは精神的に追い詰める言動等についての慰謝料

が挙げられます。

「親権者」を記入しないと離婚届が受理されません。
「養育費」は裁判所のHPに掲載されている「養育費算定表」という表を参考にすると養育費の目安の金額がわかります。
「面会交流」の方法や頻度を決めておかないと、会わせてもらえなくなる可能性が出てきます。「財産分与」の請求・「年金分割」の請求には期限があるため、時間の経過により請求できなくなる可能性があります。
「慰謝料」は、相手方配偶者に婚姻関係を破綻させた原因がある場合に請求することができます。また、「慰謝料」の請求にも時効があります。

とにかく早く離婚したいからといって、
何も決めないで離婚する
相手の言いなりの条件で離婚する
と、変更することが困難になり、あとで後悔することになります。
譲れない条件について順位をつけて決めていくことをご提案いたします。

こちらもご参照ください。
https://www.nagoyasogo-rikon.com/three-problem-eight-point/

不貞の慰謝料を支払いましたが、不貞相手に対し求償できますか。 ~不貞の慰謝料の負担割合~

不貞慰謝料通知

不貞行為をした二人は、被害者である配偶者に対し、共同不法行為者として慰謝料全額を支払う義務があります。

例えば、慰謝料が300万円のとき、被害者である配偶者は、不貞行為をした自分の配偶者もしくは不貞相手のどちらか片方に300万円全額を請求することもできますし、それぞれに150万円ずつ請求することもできます。そして、請求をされた者は、請求額全額を支払う義務があります。

一方、不貞行為をしたうちの一人が、他の共同不法行為者である不貞相手との責任割合に従って定められるべき自己の負担部分を超えて被害者である配偶者に損害を賠償したときは、他方の不貞相手の負担すべき部分について求償することができます。 これを求償権といいます。

それでは、不貞行為をした二人の責任割合は、どのように決まるのでしょうか。

まず、不貞配偶者と不貞相手との間の合意で、自由に負担割合を決めることができます。

負担割合を合意で決めることができない場合には、訴訟で裁判所に負担割合を決めてもらうことになります。

裁判所が負担割合を決める際、一般的に、

①もっとも重視されるのは、不貞行為についての積極性や主体性です。

②不貞配偶者と独身の不貞相手とでは、不貞配偶者の責任の方が大きいとされる傾向にあります。

③妻と離婚する予定であるなど、不貞相手を欺罔して不貞関係をもった不貞配偶者の責任は、特に重くなる傾向にあります。

以下、求償割合について判断した裁判例をご紹介します。

①不貞配偶者が、配偶者と離婚すると装って不貞関係を継続した事案

東京地方裁判所 令和3年2月25日

慰謝料額130万円

不貞配偶者 対 不貞相手

7 対 3

事案の概要

控訴人 夫(不貞配偶者)(昭和39年生まれ・既婚者・看護師)

被控訴人 女性(控訴人の不貞相手)(昭和51年生まれ・独身・看護師)

認定された事実関係

平成29年7月から9月にかけて複数回の不貞行為

平成30年11月1日 控訴人の妻と被控訴人との間で慰謝料50万円を支払う内容の和解が成立し、被控訴人は控訴人の妻に対し50万円を支払った。

平成30年12月1日 控訴人は、妻に対し、慰謝料として80万円を支払う約束をし、2回に分けて全額を支払った。

本件では、不貞行為をした控訴人と被控訴人とが、控訴人の妻に対し、総額130万円の慰謝料を支払いました。そして、130万円のうち50万円を支払った被控訴人が、自分の負担割合はもっと少ないんだと主張して、控訴人に求償をしました。
なお、本件では、控訴人が、離婚する意思がないにも関わらず妻と離婚する意思があるかのように装ったとして、被控訴人の信頼及び貞操権を侵害したことを理由に、控訴人から被控訴人に対し、慰謝料として70万円を支払うよう命じられています(軽率に信じた被控訴人の過失も認定)。

求償割合についての裁判所の判断

前記認定事実によれば、控訴人は、平成29年7月頃、被控訴人に対し、結婚したい旨のLINEメッセージを送信するなどして、積極的に被控訴人との不貞関係を発展させたことが認められ、これによれば控訴人の妻に対して負う損害賠償債務の割合は、控訴人がその過半を負うべきものといわざるを得ない。
他方、被控訴人は、控訴人が婚姻していることを知りながら、また、婚姻関係が破たんしている等の控訴人の言について確たる根拠を伴うものであるか否か確認することなくこれを信じ、不貞行為に及んだことが認められるのであるから、控訴人とその妻との間の婚姻共同生活の平和の侵害に対する被控訴人の寄与の程度も軽視すべきではない。その他諸般の事情を考慮すると、控訴人と被控訴人が控訴人の妻に対して負う損害賠償債務の負担割合としては、控訴人7割、被控訴人3割とするのが相当である。

②ダブル不倫の事案

東京地方裁判所 令和3年2月5日

慰謝料額140万円

不貞配偶者 対 不貞相手(既婚者)

1 対 1

原告 Aの妻

被告 Aの不貞相手方女性・夫Bの妻

A 原告の夫(AとBの子供のサッカーのコーチ)

B 被告の夫

事案の概要

原告・A夫婦

平成17年4月3日婚姻・子ども4人

被告・B夫婦

平成17年9月26日婚姻・子ども3人

認定された事実

平成30年4月13日頃 不貞行為2回

平成30年7月21日 被告とAとが箱根の温泉に宿泊し不貞行為

平成30年8月6日 原告がAと別居

平成30年9月3日、AがBに対し、全慰謝料として250万円を支払った

求償割合についての裁判所の判断

本件不貞行為は、平成30年4月13日及びその他の日(ただし、同年7月20日までの日である。)に池袋のラブホテルで2回並びに同年7月21日から同月22日にかけてのCでの宿泊の際に1回であると認められるが、被告及びAが本件不貞行為に及ぶ際に他方当事者から脅されたなど、任意の選択を妨げられたといった事情もうかがわれないから、本件不貞行為は、被告とAの任意の意思と判断によるものというべきである。そうすると、本件不貞行為に係る被告とAの責任割合は、50パーセント対50パーセントと認めるのが相当である。

なお、本件では、

原告に対する被告とBの慰謝料 140万円

Bに対するAと被告の慰謝料 100万円

と異なる金額が認定されました。

金額の違いは、原告夫婦が別居しているのに対し、被告夫婦は、婚姻関係を継続していることを理由としています。

この点、Aは、本件訴訟に先立ちBに対し慰謝料250万円を支払っていますが、裁判所は、本来の慰謝料額は100万円であり、差額の150万円は、Aが早期解決のために支払ったものであり、求償の対象となるのは100万円のみであるとしています(被告の負担分は50%の50万円)。

③未成年者に対し、既婚者であることを隠し不貞行為を持ちかけた事案

東京地方裁判所令和3年8月30日判決

慰謝料額 135万円

不貞配偶者 対 不貞相手

8.5 対 1.5

事案の概要

原告 女性 19歳独身(不貞当時未成年者)

被告 既婚の夫 38歳 婚姻期間約1年3カ月 子供二人

認定された事実

原告と被告は、新年会で接近し、被告は原告に対し、既婚者であることを隠して、その日のうちに性交渉をもった。

その2、3日後に、被告は、原告に対し、交際を持ち掛け、既婚であることを告げた

原告と被告は、平成31年1月から平成31年10月まで性交渉を含む交際

交際中、被告は妻との離婚をほのめかし、原告に離婚届を見せた

平成31年5月、被告の妻に不貞が発覚

令和2年1月 原告から被告の妻に対し135万円の慰謝料を支払った。

原告は、被告に対し、別れを告げ、職場も辞めた。

求償割合に対する裁判所の判断

原告は当初未成年であり、性交渉を含む交際を誘起した責任は主として被告にあり、原告の側におけるその動機に内在する不法の程度に比し、被告の側における違法性は、著しく大きいものと評価することができることからすれば、その責任割合は原告1割5分、被告8割5分とするのが相当である。

コメント

不貞の慰謝料では、被害者である配偶者から、不貞行為をした両者に慰謝料請求がなされ、ともに慰謝料を支払っている場合もあり、求償関係が複雑になることがあります。複雑になりそうな事案の場合は、合意をする前に、弁護士に相談しておくことをお勧めします。

財産分与と特有財産の立証|民法798条3項による合理的考慮が認められた裁判例

財産分与

財産分与の対象は、基準時(別居日などの夫婦の経済的協力関係がなくなった日)における共有財産です。
そのため、相続や親からの贈与金、婚姻前から保有していた預貯金などの特有財産については、財産分与の対象外となります。
しかし、実際には、長年の婚姻生活のなかで、共有財産と特有財産とが渾然一体となっていることも多く、このような場合、財産分与の対象財産の範囲が問題となってきます。

この点、夫婦のどちらに属するのか分からない財産については、共有財産であると推定されますので、(民法762条2項)、特有財産であると主張する側がそれを立証しなければなりません。
そして、実務では、単に相続で取得したことや婚姻前に預貯金を保有していたことだけを示しても、特有財産だとは認めてもらうことはできません。基準時に有する財産のなかに、特有財産が残存していることの立証までも求められます。
特に、特有財産が普通預金口座に入金されたあと、口座において生活費のために給与などが出入金を繰り返したなどの場合には、お金には色がついていませんので、基準時の財産のなかに特有財産が残存していることを立証するのは、非常に難しいです。

では、特有財産であることの明確な立証ができなかった場合、それでも何らかの考慮が働くことがあるのでしょうか。
この点について、原審と抗告審とで、判断が分かれた裁判例がありますのでご紹介します。

下記裁判例は、夫が、別居時の夫名義の預貯金残高のうち、2883万7500円については、父の相続で取得した特有財産であるから財産分与の対象外だと主張したことから、かかる主張が認められるのかが問題となりました。

事案の概要

原審:東京家庭裁判所 令和3年11月25日審判
抗告審:東京高等裁判所 令和4年3月25日決定

抗告人 夫 婚姻後、大学を卒業し大学院に通い、平成10年、税理士資格を取得
その後、税理士事務所を経営するとともに有限会社を設立

被抗告人 妻 専業主婦として3人の子を育てた

昭和60年12月 婚姻
平成20年 夫が父の相続で2882万7500円を取得
平成27年8月 夫が自宅を出るかたちで別居
令和元年8月 裁判離婚

原審も抗告審も、夫が父から2883万7500円の預金を相続したことを前提に、2つの定期預金(原審と抗告審とで認定額は多少異なりますが、約888万円)については、特有性を認めましたが、その余の口座については、特有性を否定しました。
原審も抗告審も、預金の流れを分析し、相続で取得した時点から別居時までの預金の流れを追うことができないものについては、基準時残高に特有財産が残存していたことを裏付ける資料がないとして特有財産性を否定しています。

そのうえで、原審と抗告審とでは、そのあとの判断がわかれました。
原審では、預金口座の特有財産性を否定したことで、それ以上特有財産について何らの考慮もしませんでした。
これに対し、抗告審は、次のように述べて、一部の特有財産性を考慮した財産分与を決定しました。

抗告審:令和4年3月25日東京高等裁判所決定

「もっとも、抗告人の相続した2882万7500円の預金は高額であり、相手方には収入がなく、一方で抗告人の基準日までの収入に照らして、同相続預金の取得は、後記(3)の番号2-6の預金において考慮する部分を除き、資料上は特定できないものの、基準日における抗告人名義の財産を増加させ、あるいはその費消を免れさせたものと推認できるから、それを本件における財産分与において、合理的な範囲で考慮するのが相当であるので、後記認定のとおり、上記相続預金の取得の事実を財産分与における一切の事情として考慮することとする。」
(略)
「抗告人は、平成20年■月■■日の父死亡による相続により約2883万円もの多額の預金を相続しており、上記3(3)の番号2-6の預金において考慮した約888万円の預金を控除しても、約2000万円の預金を取得していたものであるから、これらの預金により、基準時財産が増加し、あるいは支出を免れたことが推認されるところ、これらの事情のほか、本件に現れた一切の事情を考慮すれば、抗告人から相手方に対し、財産分与として5000万円を支払うものとするのが相当である。」と改める。

コメント

一般的な感覚からすれば、基準時から7年前に約2883万円もの預金を相続したのであれば、仮に特有財産の立証ができなかったとしても、特段の事情がない限り、何らかの考慮が働いて然るべきだと思われるかもしれません。
しかし、上記原審のように、特有財産であることの厳格な立証を求め、立証ができなかった場合には一切の考慮もないという扱いがなされた事案を何度もみております。
このように、財産分与については、裁判所独特の考え方や進め方がありますので、財産分与において争いになりそうな不安を抱えていらっしゃる方は、弁護士に相談されることをお勧めします。

モラハラで慰謝料が取れますか

モラハラ

離婚のご相談をお受けするなかで、「モラハラ(精神的虐待)で慰謝料は取れますか」という質問を非常に多く受けます。

モラハラ(精神的虐待)で慰謝料を取ることはできます。

但し、モラハラは、身体的暴力や不貞を原因として離婚に至った場合と比べると、裁判において、慰謝料を認めてもらうのが難しい傾向にあるといえます。

慰謝料が認められにくい最大の理由は、証拠が少なく立証が難しいことにあります。

相談者さんが、モラハラを理由に離婚のご相談にいらした時には、既に長年にわたるモラハラが積み重なり、いよいよ精神的に限界を迎えた頃であることが多いです。

相談時期が遅くなってしまうのは、配偶者からのモラハラに耐え続けた方や、何かがおかしいと思いながらも、モラハラを受けていることに気が付かなかったというケースが多いからだと思われます。

また、そういった方の多くは、証拠をお持ちではなかったり、不十分であることが多いです。

慰謝料が認められる事案

一般に、モラハラ(精神的虐待)を理由に訴訟で慰謝料が認められる事案には、次のような特徴がみられます。

①継続的に精神的虐待が繰り返されていたことを示す客観的な証拠が存在すること

モラハラの程度にもよりますが、ある程度継続的に行われていたことが必要となります。そして、その事実を示す、客観的な証拠が存在することが望ましいです。

日記についても証拠とならないわけではないですが、下記のような証拠との組み合わせることでより信用度が増します。

  • 執拗に送信されてきた威圧的な内容のメールやLINE等
  • 警察が介在した事実
  • 録音データ
  • 診断書や通院した際の領収書等

全てのモラハラの証拠を取るのは、非常に難しいですが、一部でも客観的な証拠が存在することで、主張全体に与える信用度が増すこともあります。

②裁判官に、「常軌を逸している」と思ってもらえるような複数のエピソード(事件)が、詳細に示せること

モラハラは、日々の積み重ねではありますが、長年の婚姻生活のなかで、モラハラから引き起こされた複数のエピソードが存在しているのではないかと思います。

そういった具体的なエピソードは、裁判官の心証に与える印象が強いです。

慰謝料が認められた事案は、複数のエピソードをもってして、裁判官が、「常軌を逸した」とか「苛烈」などの表現を用いることもあり、そのように裁判官が感じる程度の精神的虐待行為については、慰謝料を認めてもらいやすい傾向があります。

③モラハラをされた側の落ち度が少ないこと

裁判においては、夫婦が互いに言いたいことを主張し合いますので、モラハラをされた側の落ち度の程度によっては、どっちもどっちだと判断され、性格の不一致やコミュニケーション不足等の理由で、慰謝料を否定されてしまう可能性があります。

④モラハラ+α があること

モラハラとの区別が難しい面もありますが、慰謝料が認められた事案には、不貞や怪我をするほどの暴力までいかなくとも、女性関係にだらしがない、浪費、暴力的言動がある、子供への躾が行き過ぎているなどの事実関係が認定されていることが多いです。こういった事実関係とモラハラ的言動が、不足する証拠を補完し合うことで、慰謝料が認められやすくなる傾向にあります。

また、モラハラをした側の主張(言い訳ばかりをして反省をしない)や裁判での態度が、そのモラハラ的な人格を自ら裏付けてくれることもあります。

⑤モラハラが原因で婚姻関係が破綻したこと

一般に、離婚で求める慰謝料は、モラハラが原因で離婚に至ったことに対する精神的損害を求めるものですので、基本的には、モラハラが婚姻関係破綻の理由となっている必要があります。

こういった観点から、慰謝料を否定された事案のなかには、モラハラ的な事実が認定された時期が、婚姻関係破綻後であることを理由としているものもあります。

慰謝料が認められた裁判例

それでは、モラハラによって慰謝料が認められた裁判例をいくつかご紹介します。

①モラハラにより、高額な慰謝料が認められた事案

東京地方裁判所 令和元年9月10日 判決

原告 妻(38歳・フルート教師)
被告 夫(43歳・IT関連企業の役員)

平成29年9月17日 マッチングアプリで知り合い婚姻
平成30年1月29日 別居
平成30年2月10日 協議離婚 (原告は妊娠中)

認定された事実関係

・夫は、自分が不満に感じる出来事があると、相手に対して徹底的に攻撃的な態度を示し、「頭おかしい」「バカ」「キチガイ」等相手を罵倒する言葉を連発した。

・妻が言うことを聞かないと、すぐに「好きにしろ」「勝手にしろ」「別居する」「離婚して犬連れて帰れよ」「クズ」「離婚して子供もおろせ」「何様なんだよ、このクズ野郎」「マジで死んでくれないかな」「親の教育が悪すぎる」「こんな最低な女見たことがない」等の突き放す言葉を発したり罵倒した。などの事実が、複数のエピソードと一緒に認定されています。

裁判所の判断

モラハラについて
 被告は、原告との婚姻後、次第に、原告の人格を否定して被告の価値観を押し付け、被告に従わなければ徹底的に罵倒するような暴言を吐くようになり、 その頻度や内容もエスカレートし、社会的に許容されるべき範囲を逸脱するものとなっていたことが認められるところ、 これら一連の暴言がいわゆるモラルハラスメント行為に当たり、 原告の人格権を侵害するものであることは明らか というべきである。

慰謝料額について
 原告は、被告の一連のモラルハラスメント行為及び離婚により、強度の不安を感じ、不眠や抑うつ気分等、精神科の治療を要する状態に陥ったことが認められる。
 このような原告の精神面の状況や、被告のモラルハラスメント行為自体の悪質性の程度、原告と被告との婚姻期間の長さ、原告が妊娠中の離婚を余儀なくされたこと等、 一切の事情に鑑みれば、原告が被った精神的損害に対する慰謝料としては、200万円と認めることが相当である。

②暴力的行為+モラハラで慰謝料が認められた事案

東京家庭裁判所立川支部令和3年9月17日判決

原告 夫
被告 妻(反訴でモラハラによる慰謝料を請求する側)

平成13年1月1日 婚姻
平成28年1月27日 別居
子供二人
判決時までの別居期間 5年半

※なお、離婚自体には争いがない事案です。

認定された事実関係(平成25年7月から平成28年1月にかけてのもの)

・夫が長男(当時11歳)に対し、謝罪を求め、謝罪している長男に対し頬から後頭部付近を平手で殴打

・夫が長男に土下座させることもあった

・夫が長男に立腹し、妻の胸倉をつかみ、それを静止しようとした長女の帽子を突き飛ばし、長男の髪を引っ張るなどの暴行を加えた(妻は警察に相談に行ったが、夫は警察からの呼び出しに応じなかった)

・家族での夕食中に、妻に対し頭を出せと言い、後頭部付近を平手で殴打する暴行を加え、妻に対し出ていけと述べた

・長男の態度について、妻に対し「母親に洗脳されているからこういう態度をとるんだ、出ていけ」と述べた

・長男に対し、「死ぬって言うのはこういうこと」などと述べながら、長男の背後からヘッドロックのような形で首を締めた。

裁判所の判断

原告・被告間の婚姻関係は、原告の被告及び子らに対する暴力・暴言により破綻したものであるところ、その態度は、原告の求めに応じて頭を下げて謝罪する被告を殴打する、 頭を下げて謝罪するだけでは足りず土下座を事実上強要する、出ていけというといったものであって、上記を逸した苛烈なものと言わざるを得ず、 夫婦間の喧嘩からは完全に逸れたものというほかはないことからすれば、これにより被告が被った精神的苦痛を慰謝するには、150万円が相当というべきである。

③モラハラ的なLINEを送信し続けたことで慰謝料が認められた事案

東京家庭裁判所 平成26年5月27日判決

原告 妻(モラハラの慰謝料を請求する側)
被告 夫

平成20年6月22日 婚姻
平成23年4月13日 別居

認定された事実関係

婚姻後すぐから(正確には入籍前から)、別居前まで、夫から妻に対し「轢いてやる」「縄でくくりつけて引き摺るの」「少しずつ殺す」「限界まで搾り取ってやるから覚えておおき」など、 多数の威圧的かつ脅迫的なメールを送信した。(判決の中には、50ほどのメールの内容が記載されています。)

裁判所の判断

原告と被告との婚姻関係は、主として、被告の原告に対する執拗で苛烈な脅迫的言動によって破たんしたものと認められるのであるから、 被告は原告に対して離婚に伴う慰謝料を支払うべき責任があるところ、上記被告の言動の態様及び原告と被告との婚姻期間その他本件に現れた事情を総合すると、 被告から原告に対して支払われるべき損害賠償の額については、これを100万円とするのが相当である。

離婚事件と配偶者の廃除

はじめに

離婚事件の依頼者さんから、万が一、離婚調停中や離婚訴訟中に依頼者さんが死亡したときに備えて、配偶者が依頼者さんの財産を相続できないようにしておきたいというご相談を受けることがあります。

配偶者には、相続権があり、法定相続分は2分の1です。配偶者は、離婚をする場合にも、財産分与として原則2分の1の財産を取得しますが、財産分与の対象となるのは、共有財産のみですので、婚姻中に相続等で取得した特有財産は含みません。

そのため、特に、多額の特有財産を保有されている方や婚姻期間が短くて共有財産がほとんど存在しないような方は、離婚の係争中に死亡し相続が発生した場合に備えたいとの思いを抱かれるようです。

対策

1.遺言を書く

配偶者に相続させないような内容の遺言を作成しておくという方法があります。 しかし、配偶者には遺留分が認められていますので、遺留分相当額の財産は配偶者にわたってしまいます。

2.廃除

推定相続人である配偶者の相続資格を奪う制度である廃除を利用することが考えられます。 廃除を求める審判が確定することにより、配偶者の相続資格がなくなりますので、配偶者は遺留分も請求できなくなります。

廃除の方法

  1. 生前に家庭裁判所に廃除の審判を申立てる(民法892条)。
  2. 遺言で廃除の意思を表示する(民法893条)。

被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

民法893条

配偶者への廃除を求めるパターンとしては、離婚を求めての離婚協議中の場合、離婚はしないけれども廃除を求める場合、相手方からの離婚を拒みつつ廃除を求める場合など、様々な状況があると思います

この点、生前に廃除を裁判所に申し立てた場合は、審判のなかで相手方配偶者と関わり合いをもつことになりますので、多くの方は、密かに遺言で廃除の意思表示をすることが多いのではと思います。 遺言で廃除をする場合には、遺言執行者をつける必要があるなど、注意点がありますので、詳しくは遺言書作成例12:財産を与えたくない相続人がいる!~相続人を廃除する遺言書~をご覧ください。

では、具体的にどのような場合に配偶者の廃除が認められるのでしょうか。

廃除の要件

廃除が認められる要件は、

  1. 被相続人に対して虐待をし、もしくはこれに重大な侮辱を加えたとき
  2. 推定相続人にその他の著しい非行があったとき

のいずれかに当てはまる必要があります。

遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべきものをいう。以下同じ)が、被相続人に対して虐待をし、もしくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を裁判所に請求することができる。

民法892条

配偶者は、離婚すれば相続権はなくなりますので、配偶者の廃除を考える際には、離婚との関連性が問題となります。 この点につき、大阪高等裁判所決定 令和2年2月7日は、次のような基準を示しています。

推定相続人の廃除は、被相続人の意思によって遺留分を有する推定相続人の相続権を剥奪する制度であるから、廃除事由である被相続人に対する虐待や重大な侮辱、その他の著しい非行は、被相続人との人的信頼関係を破壊し、推定相続人の遺留分を否定することが正当であると評価できる程度に重大なものでなければならず、夫婦関係にある推定相続人の場合には、離婚原因である「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)と同程度の非行が必要であると解するべきである。

上記裁判例は、離婚原因である「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)と同程度の非行が必要としていますが、結論として、配偶者からの①離婚請求、②不当訴訟の提起、③刑事告訴、④取締役の不当解任、⑤婚姻費用の不払い及び⑥被相続人の放置が主張されながらも、

上記①ないし⑥の各事由は、被相続人と抗告人との夫婦関係の不和が高じたものであるが、上記事業を巡る紛争に関連して生じており、約44年間に及ぶ婚姻期間のうちの5年余りの間に生じたものにすぎないのであり、被相続人の遺産形成への抗告人の寄与を考慮すれば、その遺留分を否定することが正当であると評価できる程度に重大なものということはできず、廃除事由には該当しない。

として廃除を否定しています。

配偶者には、共有財産について潜在的な持分が認められているところ、夫婦の財産の多くが廃除を求める側の名義になっていた場合に廃除を認めると、廃除された側は潜在的な持分までを否定されることになります。

配偶者の廃除を検討する際には、そういったところも考慮せざるを得ず、最低限の基準として離婚原因としての「婚姻を継続し難い重大な事由」と同程度の事情は必要となりますが、かかる要件を満たしているように思われるような事案においても、廃除についてはより厳格に判断されるのではないかと考えられます。

子の引き渡しを命ずる審判、子が嫌がっているのに引き渡さなければなりませんか。~間接強制が権利濫用にあたるのかが問題となった事案~

子ども

1.はじめに

 夫婦が不仲となり別居する際、父母のどちらが子供の監護者となるのかについて、夫婦間で取り決めたうえで別居するのが望ましいとは思いますが、取り決めができない場合、やむを得ず父母のどちらかが子を連れて出ていくこともあると思います。

 配偶者のどちらかが勝手に子を連れて出て行ってしまった場合、子を連れていかれてしまった側の配偶者は、子の監護者指定・子の引渡しの審判を申立て、子を自分のもとに引き渡すよう請求することができます。

 上記の申立てがなされると、裁判所は、父母のどちらかを子の監護者に指定することになります。
子を連れて別居した側の配偶者が監護者と指定された場合は、子の監護を継続する(子と一緒に暮らし続ける)ことになります。
一方、子を連れていかれてしまった側を監護者に指定する場合には、子を連れて行った配偶者に対し、子を監護者に引き渡すよう命じることになります。

2.子の引渡しを求める強制執行

1.強制執行の方法

 子供を連れていかれた側の配偶者が監護者に指定され、かかる審判に基づいて相手方配偶者に子を引き渡すように求めたけれども、応じてもらえない場合には、強制執行を検討することになります。
子の引渡しを求める強制執行には
①執行裁判所が決定により執行官に子の引渡しを実施させる直接的な強制執行の方法
②義務の履行まで一定の金銭の支払いを命ずる間接強制の方法
という2つの方法があります(民事執行法174条1項)。

 もっとも、①の直接的な強制執行の方法は、子の心身に与える負担を最小限にとどめる観点から
・間接強制の決定が確定した日から2週間を経過したとき
・間接強制を実施しても、債務者が子の監護を解く見込みがあるとは認められないとき
・子の急迫の危険を防止するため直ちに強制執行をする必要があるとき
のいずれかに該当する時でなければ、まずは間接強制から始めることになります(民事執行法174条2項)。

 子の引渡しを求める側からすれば、直接強制によって一刻も早く子供を取り戻したいと思われるかもしれませんが、経験上、直接強制が認められるまでには相応の時間と費用がかかりますし、間接強制の方法は、子供を引き渡さない配偶者に対し、結構な経済的負荷を与えますので、思いのほか効果が認められる場合もあります。
そのため、差し迫った緊急性がない場合には、ひとまず間接強制を申立てたうえで、直接強制の準備を進めるのもいいのではと思います。
それでは、子供が引き渡しを拒んでいる場合にも間接強制が認められるのでしょうか。
この点については、参考となる最高裁判所の判例があります。

2.最高裁判所の判例

最高裁判所平成31年4月26日
子の引渡しを命ずる審判は、家庭裁判所が、子の監護に関する処分として、一方の親の監護下にある子を他方の親の監護下に置くことが子の利益にかなうと判断し、当該子を当該他方の親の監護下に移すよう命ずるものであり、これにより子の引渡しを命ぜられた者は、子の年齢及び発達の程度その他の事情を踏まえ、 子の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ、合理的に必要と考えられる行為を行って、子の引渡しを実現しなければならないものである。このことは、子が引き渡されることを望まない場合であっても異ならない。したがって、子の引渡しを命ずる審判がされた場合、当該子が債権者に引き渡されることを拒絶する意思を表明していることは、直ちに当該審判を債務名義とする間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではない。

 上記判例は、上記の基準を掲げ、当該事案については、①長男(9歳7カ月)が執行の際、拒絶して呼吸困難に陥りそうになり執行が不能とされた、②人身保護請求の期日において、長男が引き渡し拒絶の意思を明確に示し、自由意思に基づいてとどまっているものとして人身保護請求が棄却された、との事情から、長男の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ長男の引渡しを実現するため合理的に必要と考えられる抗告人の行為は、具体的に想定することが困難であるとの評価をして、間接強制の申立てを権利の濫用にあたるとしました。

 これに対し、最高裁判所令和4年11月30日は、上記基準にしたがって判断した結果、間接強制の申立てを権利の濫用には当たらないと判断しました。

3.事案の概要

  • 抗告人 母(子の引き渡しを求める側)
  • 相手方 父(子を引き渡す義務がある側)
  • 長男9歳
  • 二男7歳

 いずれも最高裁の決定が出た時点

1.経緯

令和2年8月 父が子らを連れて別居
令和2年12月 和歌山家庭裁判所が子らの監護者を母と指定
令和3年4月5日 母が相手方の自宅に赴き、二男の引渡しを受ける
長男は、2時間にわたり説得したが応じなかった
令和3年5月30日 長男と二男を面会させる機会を設けたところ、二男と一緒に母がいたことに長男が強く反発した。
令和3年6月9日 抗告人が間接強制の申立て

2.審判の経緯

 家庭裁判所
長男を引き渡すまで1日につき2万円を支払うよう命じた
↓ 相手方である父が抗告

 高等裁判所
現時点において、本件子の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ本件子の引渡しを実現するために合理的に必要と考えられる抗告人の行為を具体的に想定することは困難というべきである。 本件審判では考慮することができなかった本件審判確定後に明らかとなったこのような事情の下において、本件審判を債務名義とする間接強制決定により、抗告人に対して金銭の支払を命じることで心理的に圧迫を加えて本件子の引渡しを強制することは、過酷な執行として許されないと解するのが相当である。 そうすると、このような決定を求める本件申立ては、権利の濫用に当たるものであって認められない
↓ 抗告人である母が抗告

 最高裁判所
家庭裁判所の審判により子の引渡しを命ぜられた者は、子の年齢及び発達の程度その他の事情を踏まえ、 子の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ、合理的に必要と考えられる行為を行って、子の引渡しを実現しなければならないものであり、このことは、子が引き渡されることを望まない場合であっても異ならない。 したがって、子の引渡しを命ずる審判がされた場合、当該子が債権者に引き渡されることを拒絶する意思を表明していることは、直ちに当該審判を債務名義とする間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではないと解される(最高裁平成30年(許)第13号同31年4月26日第三小法廷決定・裁判集民事261号247頁参照)。
 そうすると、長男が抗告人に引き渡されることを拒絶する意思を表明したことは、直ちに本件申立てに基づいて間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではなく、本件において、ほかにこれを妨げる理由となる事情は見当たらない。原審は、上記意思が現在における長男の真意であると認められ、長男の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ長男の引渡しを実現するため合理的に必要と考えられる相手方の行為を具体的に想定することが困難であるとして、 本件申立てが権利の濫用に当たるというが、本件審判の確定から約2か月の間に2回にわたり長男が抗告人に引き渡されることを拒絶する言動をしたにとどまる本件の事実関係の下においては、そのようにいうことはできない。
 したがって、本件申立てが権利の濫用に当たるとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法がある。

4.コメント

 子の引渡しについての間接強制の申立ては、一般的に、比較的近い時期に裁判所が適正な監護者であるとしてお墨付きを与えた監護者の申立てによるものですので、執行裁判所は、 監護者指定の審判後に余程の大きな事情の変更がない限りは、審判内容をそのまま実現する方向になると思われます。
上記の平成31年と令和4年の判例で結論が別れたのは、平成31年の事案は、単に当事者間での引渡しが実現しなかったというだけでなく、 直接強制が執行不能となっていることや、裁判所の前で長男が明確に引き渡されるのを拒絶する意思を明らかにしたことで人身保護請求が認められなかったという、裁判所の目から見て、長男が引き渡しを拒んでいることの客観的に明白な事情があったからだと思われます。
重要なのは面会交流が適切に実施されることですから、慰謝料請求には慎重になるべきだと考えることもできます。

 したがって、単に子供が引き渡されるのを拒んでいたとしても、間接強制の申立てが認められないということは、可能性としては少ないと思われますので、子供を引き渡すことがどうしても困難だという場合には、早い段階で、再度、監護者を定める調停や審判を申立て、裁判所の判断を仰ぐなどことが必要になるものと思われます。

裁判所に財産分与の審判を申立てた側が、逆に相手方配偶者への給付を命じられることはありますか。

離婚調停

 財産分与の審判や離婚訴訟において、自分が支払いを受ける側だと思って財産分与を申し立てたけれども、財産を整理していく中で、実は、財産分与の申立人が支払う側であることが判明することもあります。

 逆に、財産分与を申立てられ、てっきり財産分与を支払う側だと思っていたけれども、財産を整理していく中で、実は支払ってもらえる側だったということもあると思います。

 最近は、共働きの夫婦が増え、共有財産中、妻名義の財産が占める割合が高くなってきていますので、こういったケースは、以前よりも増えているかもしれません。

裁判所が相手方配偶者への財産分与を命じる可能性

 それでは、一方の配偶者が財産分与の給付を受ける側の権利者であると考えて財産分与の申立てをした場合において、裁判所は、財産分与の申立てをしていない相手方配偶者への財産分与を命ずることができるのでしょうか。

 この点が問題になった裁判例を紹介します。

 下記裁判例は、「少なくとも相手方が、当該審判の手続において、自らが給付を受けるべき権利者であり、申立人に対して給付を求める旨を主張しているときは」、「申立人に対して相手方への給付を命じることができる」としています。

 財産分与を申立てた側が、逆に支払う側になってしまう可能性もあるということです。

広島高裁令和4年1月28日決定

 財産分与に関する処分の審判事件においては、分与を求める額及び方法を特定して申立てをすることを要するものではなく、単に抽象的に財産の分与の申立てをすれば足り(略)、また、裁判所は申立人の主張に拘束されることなく自らその正当と認めるところに従って分与の有無、その額及び方法を定めるべきものであるところ(略)、当該審判事件の審理の対象が、基本的に離婚の際の夫婦共有財産の清算であって、当事者の一方から他方に対する分与の是非並びに分与の額及び方法は、裁判所が当該清算の結果等一切の事情を考慮してこれを定めることとされていることからすると、裁判所において、財産分与に関する処分の審判の申立人が給付を受けるべき権利者となるように財産分与の内容を定めるか、そうでなければ当該審判の申立てを却下しなければならないものと解すべき理由はなく、相手方が給付を受けるべき権利者となるような財産分与を定めることも可能であると解される。

 このような解釈は、財産分与に関する処分の審判事件において審判を得ることについて、申立てを受けた相手方の正当な利益を保護するため、相手方が本案について書面を提出し、または期日において陳述した後は、申立ての取り下げについて相手方の同意を得なければ、その効力を生じないものとする特則を定めた家事事件手続法153条とも符合するといえる。

 もっとも、財産分与に関する処分の審判の申立てが、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができない時にされるものであること(民法768条2項本文)に鑑みると、審判の申立人が自らが給付を受けるべき権利者であると主張して相手方に対して給付を求める趣旨で申立てをし、かつ、申立ての相手方が給付を求める意思を有していない場合、すなわち、相手方が申立人から給付を受けないものとすることにつき当事者間に争いがない場合にまで、申立人に対して相手方への給付を命じる必要はないと解される。

 以上を踏まえると、財産分与の処分に関する審判の手続において、その審判の申立人が、自らが給付を受けるべき権利者であると主張し、相手方に対してその給付を求めたが、審理の結果、申立人が給付を受けるべき権利者であるとは認められず、かえってその相手方が給付を受けるべき権利者であると認められる場合において、少なくとも相手方が、当該審判の手続において、自らが給付を受けるべき権利者であり、申立人に対して給付を求める旨を主張しているときは、審判の申立てを却下するのではなく、申立人に対して相手方への給付を命じることができるというべきであり、このことは、上記の場合において、申立人がその申立後に財産分与に関する処分の審判を求める意思を有しなくなったとしても、そのことに左右されるものではない。

財産分与を支払う側からの財産分与の申立ての可否

 上記裁判例と関連する問題として、財産分与を支払う側の配偶者が、自分が相手方配偶者に対し、財産分与を支払うべきであることを求めて財産分与の申立てをすることができるのか、という問題もあります。

 わざわざそのような申立てをする人がいるのかと思われるかもしれませんが、離婚訴訟において、相手方配偶者が離婚自体を争っている場合、当該配偶者は、離婚を拒んでいる立場ですので、自らは離婚を前提とした財産分与の申立てをしてこないことがあります。

 かかる場合、仮に判決で離婚が認められたとしても、財産分与についての問題は解決されていませんので、離婚後、相手方が財産分与の申立てをしてくることが予想されます。こういったケースでは、せっかく苦労して離婚が解決しても、次は財産分与の争いが続いてしまい、何年も裁判所と関わり続けなければならないといった事態もあり得ます。

 そのため、どうせ財産分与を支払わなければならないのであれば、離婚訴訟のなかで一回ですべてを解決してしまいたいと思う当事者さんもいらっしゃいます。

 今回の裁判例は、かかる論点については触れていませんが、上記裁判例の差し戻し前の最高裁判所令和3年10月28日決定は、財産分与の申立てがなされた場合の相手方は、たとえ財産分与の申立てが却下された場合でも(相手方にとって何等の不利益もないように思える場合にも)、かかる結果に対して、相手方が即時抗告をすることもできるとしています。

 本論点については、明確に肯定した最高裁の判例はなく、学説上も肯定説否定説に分かれているようですので、裁判所にも相談しながら進めていくのがいいと思われます。

コメント

 財産分与は、一度申立てをすると、自己に不利益な結果となる可能性があることを踏まえ、慎重に申立てをするか否かを判断する必要があるといえます。

 逆に、財産分与を申立てていない側は、自らが申立てをしていなくても財産の給付を受けられる可能性はありますが、この点の裁判所の扱いが統一していない部分がありますので、そのような場合には、相手方からも財産分与について予備的反訴をしておくのが安全といえます。

 なお、離婚訴訟において、離婚を拒んでいる当事者が、財産分与の整理に消極的な姿勢でいる場合がありますが、財産分与を含む離婚判決が確定した後は、再度の財産分与の申立てが認められない可能性があることにも十分注意をすべきといえます(参考 東京高等裁判所決定令和4年3月11日)。

 以上のとおり、財産分与には、裁判所の扱いが必ずしも明確ではない争点が多数ありますので、疑問に思われることがある場合は、弁護士に相談してみることをお勧めします。

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