2023年4月1日から、こどもが自立した個人として、ひとしく健やかに成長することができる社会の実現に向け、こども家庭庁が発足し、同月からこども基本法が施行されました。
こども基本法が制定された背景としては、近年、少子化の進行や人口減少に歯止めがかからない一方、児童虐待相談や不登校の件数が過去最多になるなど、こどもを取り巻く状況が深刻で、常にこどもの最善の利益を第一に考え、こどもに関する取り組みや政策を社会の真ん中に据えて、強力に進めていくことが急務となりました。
そこで、こども家庭庁の設置と相まって、従来、諸法律に基づいて、国の関係省庁、地方自治体において進められてきた、こどもに関する様々な取り組みを講ずるにあたり共通の基盤となるものとして、こども施策を社会全体で総合的かつ強力に実施していくための包括的な基本法として、こども基本法が制定されることになりました。
なお、こども基本法では、18歳や20歳といった年齢で必要なサポートが途切れないよう、心と身体の発達の過程にある人を「こども」としています。
こども基本法では、以下の6つを基本理念として定めています(こども基本法3条)。
①「こどもに関する施策」と②「一体的に講ずべき施策」を併せて、「こども施策」と定義づけられています(同法2条)。
かかる施策の中身としては、以下のようなものが想定されています。
なお、こども施策の実施にあたっては、こどもや若者の意見を聴きながら、国や都道府県、市区町村は、必要な措置を講ずべきとされています(同法11条)。
かかるこどもや若者が意見を言う機会や場として、以下のような方法が想定されており、これをこども家庭審議会などに届け出たりして、意見を反映するようにしていくとのことです。
こども家庭庁の発足・こども基本法の施行により、こどもを取り巻く環境に大きな変化が加えられることが期待されています。
もっとも、あるニュースによると、こども基本法につき60%以上が聞いたことがないと回答しており、依然として認知度が低いのが現状です。
まずは一人ひとりが関心を持ち、当事者意識を持つことが重要なように思われます。
参考までにこども家庭庁のホームページを引用しますので、またご覧いただけますと幸いです。
https://www.cfa.go.jp/policies/kodomo-kihon/
弁護士 田中優征
面会交流の取り決めをしても、必ずしも面会交流が実現できるわけではありません。
統計によると、面会交流の取り決めをしている場合で、面会交流を現在も実施している割合は、母子世帯では48.5%、父子世帯では64.8%といわれています(令和3年全国ひとり親世帯等調査結果報告)。
それでは、面会交流を実現するためにはどのような方法があるのでしょうか。
再度、面会交流調停を申し立てて、面会交流の実施について調整することが考えられます。
調停でまとまらない場合には、裁判所の審判手続に移行します。
家庭裁判所の手続に、履行勧告というものがあります。
これは、家庭裁判所の手続(調停・審判)でなされた取り決めが遵守されていない場合に、家庭裁判所にその申し出をすると、家庭裁判所が履行の状況を調査した上で、その履行を勧告するという制度です。履行勧告の申し出は、電話ですることができますし、費用もかかりませんから、まずは履行勧告をしてみるというのが一つ考えられます。
しかし、履行勧告では面会交流をするように強制することはできませんから、相手方が履行勧告を受けてもなお面会交流に応じない場合には、別の対応を検討しなければなりません。
正当な理由がないのに面会交流の実施を拒み続ける場合には、子を監護している親に対し、面会交流をすることができない精神的損害について慰謝料の請求をすることが考えられます。実際に、これを認めた裁判例もあります(横浜地方裁判所平成21年7月8日判決)。
しかし、面会交流の拒否を理由に慰謝料の請求が認められたとしても、相手方との関係がより悪化し、面会交流の実現はますます難しくなってしまう可能性も考えられます。
重要なのは面会交流が適切に実施されることですから、慰謝料請求には慎重になるべきだと考えることもできます。
面会交流について取り決めた調停・審判がある場合には、強制執行という手続をとることができる場合があります。なお、公正証書では強制執行をすることはできません。
面会交流は、継続的に実施されるものであることから、こどもを強制的に面会交流の場所に連れていくこと(直接強制)は適切ではありません。そこで、面会交流の強制執行としては、直接強制をすることはできず、間接強制の方法によって強制執行が図られます。
間接強制とは、取り決めに従った履行がされない場合に、間接強制金の支払いを課すことで間接的に履行を確保する強制執行方法です。
面会交流の場合では、取り決めに従った面会交流の実施がされないと、1回ごとに間接強制金の支払いを課されることになります。
間接強制は、調停や審判とは別の手続ですから、裁判所に対し、間接強制をするように別途申し立てる必要があります。
そして、間接強制が認められるには、債務者がなすべきことが特定されていないといけません。具体的には、 面会交流の日時、場所、方法、子の受け渡しの方法が、具体的に特定されている必要があります(最高裁判所第一小法廷平成25年3月28日判決・民集67巻3号864号)。
もっとも、これらが特定されていれば常に間接強制が認められるわけではないことには注意が必要です。
裁判例では、面会交流の取り決めをした時から子どもがある程度成長し、面会交流を明確に拒否している場合や、面会交流の取り決めをした時から時間が経過し、事情の変更がある場合には、面会交流の間接強制を否定するものもあります(大阪高等裁判所平成24年3月29日決定等)。
こうした場合には、再度面会交流の調停を申し立てることも考えられますが、子どもが一定程度以上まで成長している場合には、子どもの意思が尊重されますから、子どもが面会交流を拒否しているのであれば、その実現は困難だと思われます。
こうした情報を知ると、面会交流の取り決めをするにあたっては、必ず面会交流の日時場所方法、子の受け渡しの方法を明確に定めなければならないと考えてしまうかもしれません。
しかし、面会交流においては、子どもの事情を無視するわけにはいきません。子ども自身や監護親の体調不良等による急な予定変更の必要が生じることもありますし、子どもが成長してくると、子ども自身の予定も増えてきます。 面会交流の内容を具体的に決めないということが、柔軟な面会交流を可能にし、子どもとの関係や、監護親との関係を良好に保つことに役立つ側面もあるのです。
したがって、面会交流の内容を定めるにあたっては、こうした事情や、相手方の対応(過去の取り決めが守られていない)等も考慮してどこまで具体的に決めておくかを考えることが必要になります。
コロナ禍になった頃から、お子様の安全確保や感染防止の観点から、親子に直接会っての面会交流が行われにくい状況だそうです。
顔を合わせることができる状況ならば、ZOOMミーティングを利用したり、 それすら難しい場合は、 プレゼントを送ったり、手紙を送ったり、LINEでやり取りしたり、写真を送ったり、動画を送ったり、、、
時代とともに種々な方法があります。
直接会うことが一番ですが、そうなると、それはそれで問題があります。
小さいお子様の場合、面会交流の当日、お子様の引渡しの際に、 相手と顔を合わせることになり、それは難しいです。 その上、相手に代わり相手の親が引き渡すとなると、相手の親と顔を合わせることになり、こちらもネックとなります。
面会交流をするのに第三者機関を利用するという方法があります。
法務省https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00284.html によりますと、親子交流支援団体が愛知県には3箇所あると紹介されています。
第三者機関の面会交流支援には以下の内容があります。
こういった支援で前述の問題が解決できそうです。
ただ、 事前相談が有料である 父親と母親双方の合意を得るため、それぞれの面接がある 等、簡単に利用することは難しそうです。
面会交流は、お子様の健やかな成長のために大切なものです。 お子様にギスギスしたお父さんとお母さんの姿は見せたくないですね。
弁護士 岩崎将之
本件では、すでに別居に至っており、母親が子らと一緒に生活をしていました。
双方自己が親権者として適格である旨主張していましたが、本件においては、取り分け母親に対し、父親の国籍の裁判所から逮捕状が発布されているという事情があり、かかる点も踏まえ、どちらを親権者と指定すべきかが争われました。
この点につき、裁判所は、まず別居に至る経緯を認定し、母親が主張しているような暴力の存在を認定することはできないとしつつも、母親が現に子らを養育監護していることを認めました。
そして、本件では家庭裁判所において調査官調査が行われていたところ、かかる家庭裁判所調査官は、母親、子らが在籍する保育園の延長、子らの担任保育士及び子らと面接したうえで、子の発育状況等を観察し、子らの監護状況について特段問題はみられないと報告されており、かかる意見等を踏まえると、母親が子らの親権者として適格であると判断しました。
そのうえで、母親に対し某国から逮捕状が発布されている事情については、上記のとおり、母親が現に子らを養育監護し、子らの監護状況に特段問題がみられないことからすれば、逮捕状が発布されていることの一事をもって、直ちに母親が子らの親権者として不適格であるということはできないとしました。
親権者の指定にあたっては、様々な事情を考慮することになります。
その中の一事情として、別居に至る経緯(子の奪取行為の違法性の有無・程度)という事情もあります。
子の奪取行為の違法性についても、別居に至る事情等を総合的に考慮して判断することになります。
本件では、別居に至る経緯につき、裁判所は母親の主張しているような暴力の存在は認定することはできないとする一方、単に逮捕状が発布されていることの一事をもって直ちに母親が子らの親権者として不適格であるということはできないとして、親権者の指定にあたり、別居に至る経緯も斟酌しつつ、監護状況等を総合的に考慮し適格性の有無を判断しました。
なお、上記判断にあたっては、母親の行為が日本国内では犯罪に該当しないとの前提に立っているものと思われるとの指摘もあります。
本裁判例はあくまで事例判断にはなりますが、親権者の指定にあたり興味深い裁判例にはなりますので、またご参考にしていただければと思います。
弁護士 杉浦 恵一
協議離婚をしてから、その後に財産分与の話し合いをすることは可能です。
この場合には、財産分与について合意ができないことを理由に離婚についても合意ができないということがなくなりますので、より早期に離婚に至ることができる可能性があります。
しかし、財産分与について取り決めをせずに離婚することには、問題点があります。
それは、収入がない場合又は少ない場合であっても、相手方から財産分与を受け取るまでの生活の保証を受けられないことです。
財産分与についての話し合いや手続が長引いた場合であっても、既に離婚している場合には、その間の生活費(婚姻費用)を受け取ることはできません(子供がいる場合の養育費は別ですが、養育費はあくまで子供の生活費です。)。
また、相手方配偶者名義の家に住んでいる場合には、離婚した以上は、そこに住み続ける根拠を失いますから、家を出ていけと言われた場合には、出ていかなければならないことになります。
そして、先に離婚してから財産分与の話合いをする場合には、財産分与について、すぐに話がまとまらないということも考えられます。
当事者間で話し合いがまとまらない場合には、裁判所の調停を申し立てることが考えられます。そして、調停でも財産分与について合意ができず、不成立になった場合には、裁判所の審判手続に移行します。この場合には、裁判所が財産分与について認める審判をし、それが確定して初めて、財産分与を受けることができます(それでもなお支払い等に応じない場合には強制執行の手続をとる必要があります)。
つまり、裏を返せば、財産分与を求められる側は、審判が確定するまでは、合意に応じなければ何も支払わなくてもいい状態を作れるということになります。ちなみに、合意に応じるかどうかは個人の自由ですから、合意に応じないこと自体を問題にすることは困難です。
裁判所の手続(調停・審判)を利用する場合には、離婚の成立の日から2年以内に申立てをしなければなりません。それ以後は、裁判所の手続を利用することはできません。
裁判所の手続が利用できないということは、相手方が話し合いで財産分与に応じてくれない限り、財産分与を求めることができないことを意味しますので注意が必要です。
このように、離婚を先行した場合には、相手方からの生活の保障を受けられないまま、財産分与も長期間受け取れない可能性があります。
財産分与の取り決めをせずに離婚する場合には、何らかの収入や援助で、離婚しても生活していけるか、生活の本拠を確保できるか等を事前によく検討し、それでもなお、離婚することを優先するかどうかを検討する必要があるでしょう。
お子様にとって、両親の離婚は大変大きな出来事です。
お子様が父親と暮らすのか、母親と暮らすのか、という「親権」を個々の事情を考慮して決めることになります。
その次に、養育費が問題になります。 養育費とは、お子様の監護や教育のために必要になる費用のことをいいます。 一般的には、お子様が経済的・社会的に自立する(高校卒業や大学卒業など)までに要するお金です。 たとえば、衣食住に必要な経費、学費、医療費などです。 離婚の前に、養育費の金額、何歳まで支払うのか、支払時期、振込先などを具体的に決めておく必要があります。
なお、養育費の金額は話し合って決めますが、裁判所が公表している「算定表」を目安にすることができます。 「算定表」とは、 子の年齢を、子の人数により、 義務者(支払う側)の年収を縦軸、権利者(もらう側)の年収を横軸で作成したグラフを使い、 養育費の金額を表示している表です。
養育費の取り決めができたら、「公正証書」にして養育費に関する債務名義を有する証書の作成しましょう。 もし、約束を守られない場合に、「公正証書」をもとに強制執行をすることができるからです。
知っていましたか。 名古屋市では、 「名古屋市養育費に関する公正証書作成費等補助事業」があります。
事業名の通り、公正証書作成と言っても、内容は、養育費に関するものに限ります。
・公正証書の作成にかかった費用(公証人手数料、戸籍謄本等添付書類取得費用) が補助対象です。
そうはいっても、離婚しようとしている夫婦がすんなり物事を決めることは困難なことでしょう。 家庭裁判所で離婚調停した場合の調停手続き費用にも利用できます。
・家庭裁判所の申し立てまたは裁判にかかった費用(収入印紙代、切手代、戸籍謄本等添付書類取得費用) が補助対象です。
上限は5万円、条件に当てはまる方で、申請をすれば補助が受けられるそうです。
詳しくは、 https://www.city.nagoya.jp/kodomoseishonen/page/0000142587.html をご参照ください。
配偶者の一方が不倫したら、不倫相手がもう片方の配偶者から慰謝料を請求される、ということはよくあります。この慰謝料を請求する権利というのは、法的には「不法行為に基づく損害賠償請求権」に位置付けられます。
最判平成8年3月26日は、「丙(筆者注:不貞相手)が乙(筆者注:配偶者の一方)と肉体関係を持つことが甲(筆者注:もう片方の配偶者)に対する不法行為となるのは、それが甲の婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為ということができる」と判示しています。不貞行為によって、婚姻共同生活の平和の維持が侵害されたことによる精神的苦痛に対する「慰謝料」なのです。
しかし、不貞=必ず慰謝料を支払う、というわけではありません。先述の最高裁判例は、「甲と乙との婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わないものと解するのが相当」と判示しています。保護に値する権利利益がないからです。
そこで、不貞行為をしたとして慰謝料請求をされた場合に、「不貞行為時に、婚姻関係がすでに破綻していた」と反論することがままあります。しかし、この反論が認められるためには大きなハードルがあります。「婚姻関係の破綻」です。
婚姻関係が破綻していたと認められるのはハードルが高いです。
夫が妻以外の女性と20年以上交際し、この女性について妻に話していた事案(大阪地裁平成11年3月31日)でも、夫と妻の間で、金銭感覚や育児に関する方針の違いから口論になり、夫が妻に暴力をふるっていたこともあり、妻が家庭生活に不満を抱いていた事案(東京地判平成21年4月23日)でも、夫婦でたびたび口論になり、夫が妻に離婚を切り出していた事案(岡山地判平成15年9月26日)でも、関係が修復不能な程度にまで悪化していたとは認め難いとして、慰謝料請求が認容されています。
一方で、夫が妻に対して暴力をふるい、「出ていけ。」と言って玄関に引きずり出し、別居状態になった後で、妻が他の男性と関係を持った事案(名古屋地判昭和54年3月20日)においては、不貞行為があった時点で婚姻関係はすでに破綻していたとして、慰謝料請求が棄却されています。
婚姻関係が破綻していたと認められるためには、別居しているか否かが重要になります。一度別居していても、再度同居したり、お互いの家の行き来があった場合は、婚姻関係が破綻されていないと認定される傾向があります(東京地裁令和3年11月25日、東京地判令和3年6月24日など)。
既婚者でありながら、他の異性にアプローチをかける人が、ことさら婚姻関係が破綻していることを主張することはよくあります。それを信じてしまった場合でも、慰謝料を払わなければならないのでしょうか。
不法行為の要件の一つに、故意または過失があります。そこで、婚姻関係が破綻していると認識していたため、不貞行為によって婚姻関係を破綻させることについて、故意または過失がなかった、と主張されることがあります。
しかし、「既婚者が好意を抱く異性の気を引こうとして配偶者に対する不満や自身の婚姻関係が順調ではない旨を殊更に強調することはまま見受けられる事象である」(東京地裁令和3年11月25日)として、既婚者のアプローチを鵜呑みにし、婚姻関係が破綻していると思い込むことについては過失ありと認められる傾向にあります。相手方が既婚者であることについての認識があれば、故意または過失は認定されると言っていいでしょう。
不貞慰謝料という、当たり前のように浸透している概念でも、掘り下げてみると様々な法的判断要素を含んでいます。請求をされるにせよ、するにせよ、まずは弁護士にご相談ください。
配偶者が不貞行為に及んでいた場合、不貞の相手方に慰謝料を請求することができます。
これは、不貞をしたことそれ自体によって生じた精神的苦痛についての慰謝料(不貞慰謝料)です。
不貞行為は、民法上は一方配偶者に対する不法行為(民法709条)に当たります。不法行為は、被害者が損害及び加害者を知ったときから3年間を経過すると、消滅時効により、損害賠償請求をする権利が消滅してしまいます。(民法724条1号)
そのため、不貞行為があったことを知ってから3年間が経過してしまった場合、基本的には不貞の相手方に慰謝料を請求することができなくなります(相手方が時効の完成を知ってなお支払うことは可能ですが、通常は支払うことはありません。)。
ところで、不貞行為など、配偶者の行為によって離婚せざるを得ない状況になった場合に、夫婦の一方が配偶者に対して、離婚の原因となった行為自体についての慰謝料の請求ができるのは当然として、離婚を余儀なくされたことについての慰謝料(離婚慰謝料)を請求することもできます。
これと同様に、不貞が離婚の原因となった場合には、不貞の相手方に対して、離婚したことについての慰謝料を請求することができるのではないかと考えられていました。
もし、不貞の相手に対して離婚慰謝料の請求をすることができるとすれば、離婚慰謝料の請求権は、離婚した時点から消滅時効が起算されることになるので、不貞慰謝料が消滅時効により請求できなくなった後でも離婚慰謝料の請求ができる場合があり、慰謝料請求をすることができる余地が広がることになります。
この点が争われた最高裁判所の判例があります(最高裁第三小法廷判決平成31年2月19日)。
本事案では、請求者は配偶者の不貞行為を知ったものの、離婚せずに別居していたところ、不貞行為を知ってから3年以上経過した後に離婚することとなりました。そのため、上記のとおり、不貞相手に対する不貞慰謝料請求権は時効により消滅していることから、不貞相手に対し離婚慰謝料を請求したという事案です。
結論からいうと、この請求は認められませんでした。
最高裁判所の判示内容は以下の通りでした。
「夫婦が離婚するに至るまでの経緯は当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが、 協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても、離婚による婚姻の解消は、本来、当該夫婦の間で決められるべき事柄である。
したがって、夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は、これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても、当該夫婦の他方に対し、不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして、直ちに、当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは、当該第三者が、単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。
以上によれば、夫婦の一方は、他方と不貞行為に及んだ第三者に対して、上記特段の事情がない限り、離婚に伴う慰謝料を請求することはできないものと解するのが相当である。」(下線筆者)。
離婚するかどうかはあくまで夫婦間の問題で、不貞行為があったからといって離婚するとは限りませんから、原則として、不貞行為をしたことのみを理由に、その先の離婚によって生じた精神的損害を賠償する義務はないという判断でした。
例外的な場合を除けば、不貞相手に対し不貞行為の慰謝料を請求する場合は、不貞行為の存在を知ってから3年以内に請求しなければなりません。今回紹介した判例のように、不貞行為の発覚後に別居期間を設ける場合などには、その後離婚することとなっても、消滅時効が成立してしまっていて不貞相手に慰謝料の請求ができないという事態に陥る可能性もあるので注意が必要です。
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