本裁判例は,妻(B)及び夫(A)との子である長女(D)が,Aとその不貞相手(C)に対して,慰謝料を請求した事案です。
昭和45年,BはDを産んだ後,Aとの性交渉を持つことを嫌がるようになった。
昭和52年夏ころ,AはCと交際を始め,ほどなく肉体関係を持つようになった。
昭和55年ころ,BはAとCとの関係を知り,Aを非難したため,ACの関係解消。BはCから慰謝料100万円受領した。
昭和60年ころ,AはCとの交際を再開し,肉体関係を持つようになった。
平成元年10月ころ,Bは,A・Dとともに家族でアメリカに観光旅行
上記まで両者離婚の申し入れ等をしたこともなかった
平成6年3月26日,AはBに何も告げず,突然,Cとともにオーストラリアに出国し,駆け落ちした。それ以降,別居が継続。
本裁判例において,A・Cは,Bは昭和45年ころからAとの性交渉を拒むようになり,AとCとの関係が明るみに出た昭和55年以降は一切性交渉を持とうとしなかったこと等から,
AとCの交際が再開した昭和60年ころにはAとBの婚姻関係はすでに破綻していたため,不法行為責任を負わないとの主張をしました。
しかし,裁判所は,
「そもそも,婚姻は,男女の性的結合を含む全人格的な人間としての結合関係であり,その結合の内容,態様は多種多様にわたるものであって,性交渉の不存在の事実のみで当然に婚姻関係が破綻するというものではなく,破綻の有無を認定するにあたっては,夫婦間の関係を全体として客観的に評価する必要がある。」
との一般論を述べた上,上記事実関係からすると,破綻どころか,むしろ円満ともいえる通常の婚姻生活を営んでいたことが認められることから,
AとCは不法行為責任を免れることはできないとの判示をしました。
一般に,不貞行為に対する慰謝料請求の場合に,慰謝料請求を受けた側から,不貞行為があったことは認めるが,その時点で,夫婦間の婚姻関係が既に破綻していたため,不法行為責任は認められないという主張をすることはよくあります。もっとも,この「破綻」の判断をどのようにするかについては,裁判例上,統一的な基準はありません。
この点,本裁判例では,一般論として,破綻の有無は,夫婦間の関係を全体として客観的に評価する必要があると述べました。これには2つの意味があるといえます。
まず,破綻の有無は客観的に評価するという点です。これは,当事者の主観(婚姻関係継続の意思が一方になかった等)では判断しないとの意味を持ちます。
また,夫婦間の関係全体から判断するという点です。単に性交渉がなかったから破綻していると判断するのではなく,
別居の有無・期間等,
夫婦関係の悪化の程度,
子の有無,
離婚に向けた行動等
様々な事情を総合的に考慮して,婚姻関係の修復が著しく困難な程度に至っているのかどうか判断されるとの意味を持ちます。
以上述べたように,統一的な基準があるわけではなく,上記のことに鑑みると,不貞行為時点で夫婦間の婚姻関係が既に破綻していたと主張するのであれば,不貞行為前の事情で,婚姻関係が修復不可能だったことを基礎づける事実を,様々主張・立証する必要があると考えられます。
もっとも,この主張は,慰謝料額がゼロか百かの判断を求めることとなるため,認められることはあまり多くないと考えた方がよいです。
裁判例では,破綻までは認められないものの,関係が希薄であった,破綻寸前であった等評価して,慰謝料額を低額としたものも多く,個々の事案に応じた妥当な結論となるように判断しているといえます。
昭和58年12月,原告と原告の夫(A)が婚姻。夫婦関係は円満であったが,子はいなかった。
平成13年初春頃,インターネットを介してAと被告が知り合う
Aは,被告に対し,自分は妻がおり夫婦仲は円満であるが,子がなく,後継ぎがほしいと考えるようになったので,未婚の母となってくれる女性を探していることなどを伝え,生活費の支給を条件に婚外の男女関係を持つことを提案した。
被告は,かねてより子がほしいとの思いが強かったこともあって,Aの提案に興味を抱いたが,いったんは通常の結婚をして家庭に入る途を選択した方がよいと考え直した。そこで,平成13年6月20日,Aにその意向を伝えた。
これに対して,Aは,被告が迷いを払拭できるまで待つ意向であることを告げ,また,被告との関係が継続する限り経済的責任を持つこと,子が出生した場合,自己の生涯にわたり経済的援助を行うことを伝えた。被告は,このAからの勧めを受けて,上京して同人との婚外子を設けることを決意し,そのことをAに伝えた。
その後,被告は,Aからの融資金300万円を資本金として会社を設立し,同社の取締役に就任した。また,被告は,平成13年9月からは,Aが所有していた都内のマンションに居住するようになり,そこでAとの肉体関係を継続した。平成14年4月には,被告はAとの子を妊娠したため,Aに伝えたところ,Aは子を胎児認知した。
平成14年7月頃,原告は,知人からAに交際相手の女性が存在する可能性を示唆された。そこで,Aのパソコンのデータを調べたところ,Aと被告との不貞行為の経緯や同年4月に被告の妊娠が判明したことなどを知った。原告は,これらに強い衝撃を受け,Aに対し強い怒り,嫌悪を感じて,別居するようになった。
①被告が不貞行為を決意するに至るまでの経過においては,Aが主導的役割を果たしたことは否定し難いものの,被告は,結局はAの提案を受け入れ,Aからの融資金で会社の設立・取締役就任を果たし,Aとの肉体関係を継続して子を出産し,以後もAに生計を依存しているのであり,このように解消困難で恒久的な不貞関係の形成,継続に加担した点で被告の責任は軽視し難いものがあること,
②①に起因してAとの約19年に及ぶ婚姻関係の破綻を余儀なくされた原告の精神的苦痛は想像に難くないこと等の事情を考慮すると,慰謝料額は300万円が相当である
と判示しました。一般的に,婚姻期間の長短は慰謝料の算定要素として考慮されており,婚姻期間が短い場合には減額要素として考慮され,婚姻期間が長い場合には増額要素として考慮される傾向にあります。
これは,不貞行為をした者に慰謝料が請求できるのは,
婚姻関係のある夫婦には平穏な夫婦生活を送るという利益を有しており,不貞行為により,
その利益を害した行為が不法行為として評価されることが根拠となっているところ,
平穏な夫婦生活というのは,婚姻関係が長く続くほど安定して強固になっていくため,婚姻関係が長いほど平穏な夫婦生活をより保護すべきと考えられているからであると考えられています。
本件では,被告とAの不貞行為によって,約19年に及ぶ婚姻関係の破綻を余儀なくされた原告の精神的苦痛は非常に重いと判断し,そのような結果に至った原因となる不貞行為について,Aが主導的だったとしても,被告の責任は軽減されないとして,一般的な相場より高いも300万円という慰謝料額を認定したものと思われます。
(1)本裁判例は、原告(元妻)が、被告(元夫)において婚約成立後に他の特定の女性との間で男女関係を継続していたことを知ってしまったことから、
被告の背信行為により婚姻成立後わずか約一か月で婚姻関係を継続することが不可能となって協議離婚を余儀なくされたことについて、
被告に対し、結婚式費用や、新婚生活のための家具・電化製品購入費用、新居への引越費用等のほか、慰謝料の支払いを求めた事案です。
(2)本裁判例では、婚約成立後、婚姻までの期間内に、被告が女性と相当数な回数の性的関係を持っていたことを認定した上、
「原告と被告は、婚約が成立したのであるから、正当な理由のない限り、将来結婚するという合意を誠実に履行すべき義務を負っているから、それぞれ婚約相手と異なる人物と性的関係を持たないという守操義務を負っていたというべきところ、
被告は婚約成立後、Aという名前の女性と性的関係を持ち、しかも、結納後も、当該女性に対し執拗に性的関係を持つことを執拗に求めていたのであるから、婚約相手である原告の被告に対する信頼を裏切ったことは明らかである。
原告が、被告の不貞の事実を婚約中に知ったのであれば、被告との婚約を破棄し、結婚式を挙げることはせず、新婚生活を送るために準備もしなかったであろうこと、さらに、被告の不貞により多大な精神的苦痛を被るであろうことは当然に予測し得たというべきである。
そうすると、原告は、婚約中の被告の不貞を理由にして、不法行為に基づき、相当因果関係にある損害として、次の損害の賠償を求めることができるというべきである。」
と判示して、婚約成立後に婚約相手と異なる人物と性的関係を持つことに対して不法行為が成立するとの見解を示しました。
そして、慰謝料額については、被告が女性と性的関係を持っていたことによる原告の精神的ストレスが大きく、蕁麻疹・不眠状態等の症状まで出て医師の治療が必要とするまでになったことを考慮し、200万円が相当であると判示しました。
(1)一般に、不貞行為は、婚姻関係のある配偶者の一方が、配偶者以外の者と性的関係等の親密な関係を持ったことを言います。
そして、不貞行為をした者に慰謝料が請求できるのは、婚姻関係のある夫婦には平穏な夫婦生活を送るという利益を有しており、不貞行為により、その利益を害した行為が不法行為として評価されることが根拠となっています。
そうすると、婚約関係にある状態では、未だ平穏な夫婦生活を送るという利益は有していないことから、利益を害したとのいえないのではないかということが問題となります。
しかし、これについては、本裁判例のとおり、婚約関係にある当事者には、互いに婚約相手と異なる人物と性的関係を持たないという守操義務があるとし、その義務違反行為に対しては不法行為が成立するという判示をしており、この点で本裁判例は重要な意義があるといえます。
(2)もっとも、本裁判例では、慰謝料額については、原告の精神的苦痛の程度が大きいことを考慮して判断しているのみであり、婚約関係であることが慰謝料額の算定においてどのように考慮されているのかは不明です。
この点、婚約当事者の訴訟において、「婚約関係は、法的保護の必要性が低い」と判示した裁判例もあります(東京地判平成22年4月14日)。
そのため、婚姻関係のある配偶者が有している利益よりも、婚約関係のある当事者が有している利益の方が保護の程度が低いということを根拠に、婚姻関係がある場合よりも低い慰謝料額が認定される可能性もあると考えられます。
妻(原告)が夫の不貞相手(被告)に対し、慰謝料5200万円を求めて訴えたのに対し、裁判所が500万円の支払いを命じた事件である。
(1)交際開始
具体的な事案は以下のとおりである。なお、夫と妻は離婚していない。
結婚3年目に、夫の職場で夫と同じ部署に勤務していた女性と不貞関係になった。
交際に際し、夫は、不貞相手に対し、妻の束縛が大きくて苦痛であると言い、離婚をほのめかしていた。
不貞関係が始まった当時、夫は自宅で生活しており、不貞関係が続く中、妻は不貞関係を気づかないまま長女を妊娠し、出産した。
また、それと同じ時期に、不貞相手も子どもを出産した。程なくして、夫は不貞相手の子どもを認知した。
妻は長女を出産した後も、夫の不貞には気づかずに生活していた。
(2)夫の別居と同棲開始
夫は、長女が生後半年になったときに、妻に対し不貞の事実を告げ、妻と生活していた家を出て不貞相手及び不貞相手の出産した子どもと同棲を開始した。
(3)妻が訴訟を提起
そこで、妻が不貞相手に対し、慰謝料として5200万円を請求した。
裁判の中で、不貞相手は妻に対し、「夫との同棲生活を解消する意思はない」と明言した。
判決の時点で、夫と不貞相手の交際期間は5年にもおよび、夫と不貞相手の同棲期間も3年以上におよんでいた。
(4)裁判での争点
裁判での争点は、
①不貞相手が夫と交際し、不貞関係になった当時、妻と夫の婚姻関係が破綻していたかどうか、
②不貞相手の妻に対する不法行為が成立する場合には、慰謝料の額はいくらにするのが相当か、
であった。
(5)裁判所の判断
①について、裁判所は、不貞相手は、夫と不貞相手が交際を開始し不貞関係になった当時、妻と夫の婚姻関係は破綻しておらず、不貞相手も婚姻関係が破綻していないことを知り得た、と判断した。
②について、裁判所は、「第1子が誕生して人生最大の喜びに包まれるときに、夫に愛人がいて、しかも、自分とほぼ同じ時期に子どもが誕生していることを知らされた妻の衝撃は、計り知れないものがあ」り、「どれだけの金銭的な損害賠償を得たとしても癒やされるものではない」としながらも、
「それまでの判例の蓄積などによって自ずと一定の基準のようなものができていることも事実であり、社会的な判断である以上、そのような基準を無視することも相当ではない」とした。
その上で、不貞相手は、妻に対し、夫との同棲生活をやめるつもりはないなどと宣言していること、不貞相手と夫との交際期間は5年間に及び、また夫との同棲期間も3年以上に及んでいること、
妻や長女が夫や父親の存在を必要としているのに、不貞相手がこれを妨害していることを重くみて、慰謝料として450万円、弁護士費用として50万円の合計500万円の支払いを命じた。
妻と夫の間で離婚が成立していないにも関わらず、不貞相手に対して500万円という高額の慰謝料請求が認められた事件である。
裁判所が、不貞行為の態様(妻が長女を出産したのと同時期に、不貞相手が長男を出産したこと、夫と不貞相手が現在同棲しており、裁判の中で不貞相手が妻に対し同棲生活を止めるつもりがないと宣言していること、妻(長女)は、必要としているにも関わらず夫(父親)と不貞相手のせいで会えていないこと)の悪質性に加え、
婚姻期間8年の夫婦について、夫と不貞相手の交際期間が5年、同棲期間が3年以上であることを慰謝料算定の際の増額事由としたことが非常に興味深く、参考になる裁判例である。
財産分与は、主として、夫婦の協力により形成された実質的夫婦共有財産を清算する制度ですので、
婚姻前から一方配偶者が所有していた財産や贈与や相続のように夫婦の協力とは無関係の原因により一方配偶者が取得した財産は、一方配偶者の単独所有の財産(以下「特有財産」といいます。)であり、原則として、財産分与の対象とはなりません。
大阪高等裁判所平成17年6月9 家月58巻5号67頁は、夫が交通事故で負傷し、損害保険会社から5200万円の損害保険金を受領した事案で、妻が婚姻生活中家事・育児全般を担っていたところ、障害慰謝料、後遺障害慰謝料の部分は夫の特有財産というべきであるが、逸失利益の部分は、財産分与の対象となるとして、症状固定時から調停離婚成立時の前日までの逸失利益に対応する額のおおむね半額およびこれに対する遅延損害金の支払いを夫に命じた判決です。
今回のケースと似た事例で、夫が妻から受け取る小遣いで購入した馬券の的中により高額配当金を取得し、これを使って購入した不動産の売却代金は財産分与の対象となることを認めた上、競馬という射幸性の高い臨時収入による不動産取得については夫の寄与が大きいことから、分与の割合を3分の1とした審判例があります(奈良家庭裁判所平成13年7月24日審判)。
婚姻中に取得した財産は第三者から相続・贈与などにより無償取得した財産を除き、夫婦の協力により取得した夫婦共同財産として清算の対象となります。婚姻中の有償取得財産であれば夫婦関係それ自体から夫婦の協力があると認められ、個々の財産取得につき個別に夫婦の協力の有無を問題にする必要は必ずしもありません。
したがって、あなたの場合についても、夫の特有財産であるマンションの価値の減少防止のために協力した事実を考慮してもらうことで、その一部について財産分与を認めてもらえる可能性があります。その際、価値の減少防止のために協力した具体的事情が客観的に分かる資料を準備するのがよいでしょう。
第三者名義の財産は通常、夫婦共有財産であるとは認められないので、財産分与の対象とはならないのが原則です。
もっとも、たとえ名義は第三者でも実質的には夫婦の共有財産であると評価されるような特段の事情のある場合には、例外的に財産分与の対象となります。
これに対して、親が自らの金銭の支出により子の将来の教育資金のために貯めた預貯金や親の保険料負担による学資保険等は、実質的には夫婦共有財産として財産分与の対象としてよいと考えられています。
もっとも、正当な対価を受領することなく長期間に渡り、夫の実家の家業を手伝ってきた妻の貢献を全く無視することは公正ではありませんから、夫の実家の財産の一部について財産分与をの対象と認められる余地はあるでしょう(熊本地方裁判所八代支部昭和52年7月5日判決参照)。
熊本地方裁判所八代支部昭和52年7月5日判決は、夫の父親が経営する畜産業に婚姻後夫婦ともに従事していた事案です。
妻に、夫婦の労働による寄与分があることを認め、「法律上は第三者に属する財産であっても右財産が婚姻後の夫婦の労働によって形成もしくは取得されたものであって、かつ、将来夫婦の双方もしくは一方の財産となる見込みの十分な財産も含まれると解するのが相当である」として、労働者の平均賃金を基準に妻への400万円の清算的財産分与を認めた判決です。
もっとも、当該法人が実質が家族経営的個人事業といえる場合(①実質的には一方配偶者の個人営業であり、②一方配偶者個人が法人の財産の管理処分権を有していると認められるような場合)には、法人の財産を夫婦の実質的共有財産として、貢献の程度に応じて、財産分与が認められることはあるでしょう(大阪地裁昭和48年1月30日参照)。
あなたも夫の会社の財産について、その形成につき貢献した事実について帳簿や、会社史を作成するなどして、ご自身がどれだけ会社に貢献してきたのかを証明できれば夫婦の実質的共有財産として財産分与を受けられる可能性があるでしょう。
大阪地裁昭和48年1月30日は、個人営業の延長として発足した飲食店営業の会社について「財産分与請求につき判断するにあたっては、被告個人の営業と同視するのが相当である」としました。
調停・審判による財産分与の請求、離婚時から2年以内にしなければ、その権利が消滅します(民法768条2項但書)。
この離婚時から2年という期間は、時効期間ではなく、除斥期間であると理解されています(仙台家審平16.10.1)。
除斥期間は、時効期間とは異なり、請求等による中断(民法147条)の制度はありませんので、注意が必要です。
なお、離婚時から2年以内に財産分与の調停・審判等を申し立てていれば、調停成立・審判確定時に離婚時から2年を経過していたとしても財産分与は可能です。
※除斥期間(じょせききかん)とは、一定期間権利を行使しないことにより,その権利を失うことになる期間をいいます。
離婚後の協議による財産分与については、基本的に離婚と同時に行う財産分与の場合と異なるところはありません。
前述のように離婚後の調停・審判による財産分与は離婚後2年以内に行う必要があります。
いきなり審判を申し立てることは可能ですが、通常、裁判所の職権により調停に付されることが多いので、まずは調停を申し立てましょう。
調停が不成立となれば、調停の申立時において審判の申立のあったものとみなされて、事件は自動的に審判に移行します(家事事件手続法272条4項)ので、改めて審判を申し立てる必要はありません。
そして、除斥期間には時効のような中断措置は認められませんので、仮に元夫に対して離婚時から2年を経過する6か月より前に内容証明により催告していたとしても離婚時から2年の経過により、あなたの財産分与請求権は消滅していまい、もはや元夫に財産分を請求することはできません。
但し、当事者間での合意による財産分与には期間制限はありませんから、元夫が任意で財産分与の求めに応じてくれるのであれば、財産分与は可能ですが、現実的は難しいと思われます。
もっとも、協議離婚書において「本協議書で定めるほか、今後名義の如何を問わず金銭その他一切の財産上の請求をしない」などの清算条項が記載されていた場合には、当該清算条項から財産分与を除外する旨の記載がない限り、財産分与を請求することは難しいです。
この損害賠償請求は財産分与請求ではありませんから、財産分与請求権の除斥期間経過後でも可能です(浦和地方裁判所川越支部平成元年9月13日判決)。
しかしながら、事案の内容によっては、例外的に錯誤による無効が認められることもあります。
その場合には、民法161条の類推適用により、錯誤無効確定時まで時効の停止が認められ、除斥期間経過後でも改めて財産分与を請求することは可能です(東京高等裁判所平成3年3月14日判決)。
夫婦で飼育していたペットは、離婚の際どうなりますか?
離婚の際のペットの取り扱いは、財産分与の問題となり、夫婦間の話し合い、または家庭裁判所の審判により決めることになります。
ペットは、子のように大切に育てている場合でも、法律上は「物」として扱われることになります。
そのため、離婚するにあたって、夫婦間でペットの引き取りについて揉めた場合には、離婚における財産分与の問題として考えていくほかありません。そして、法律では、財産分与は、当事者の協議または審判によるものとされています(民法768条)。
このように財産分与の問題として扱われるのは、夫婦が結婚後に飼育することになったペットに限られ、結婚前に夫婦の一方が飼育していたペットは、従前から飼育していた者の所有物として扱われるため(民法762条1項)、夫婦の共有財産の清算である財産分与の問題は生じません。
以上のとおり、離婚時における夫婦で飼育していたペットの引き取りについては財産分与の問題となるので、まずは夫婦間での話し合いにより決めることになるでしょう。
しかし、どうしても話し合いで解決しない場合には、家庭裁判所に財産分与の調停あるいは審判を求める手続を経る必要があります。
家庭裁判所の財産分与についての審判は、「財産の額その他一切の事情を考慮して」なされるものと規定されています(民法768条3項)。
言葉だけを見れば非常に裁判所の裁量が広く認められているようにみえますが、実際には、そのペットの財産的価値、婚姻中の飼育状況、愛情の程度、離婚後の飼育環境等を考慮して決められることになるでしょう。
なお、ペットの問題に限らず、財産分与は、離婚から2年以内という期間の制限があることに注意が必要です。また、家庭裁判所の審判を求める場合、その前提として調停を起こす必要はなく、はじめから審判の申立を行うこともできますが、審判を申し立てても、裁判所の判断で最初は調停に戻されることが多いでしょう。
それでは、離婚後にペットを引き取った者が相手に飼育費を求めることやペットと離れることになった者がペットとの触れ合いの機会を求めることは認められるのでしょうか。
法律が定めているのは財産分与の問題だけであり、物であるペットについては、人間の子のように養育費や面会交流についての規定はありません。したがって、離婚後、ペットの飼育費を請求することやペットと触れ合う機会を求めることは権利としては認められず、あくまで当事者の話し合いにより決めていくほかないでしょう。
最後に、現状、離婚におけるペットの取り扱いはペットが法律上「物」であることを前提として取り扱うことになります。しかし、ペットは、命のある生き物であり、家、自動車、家財道具とは違います。
ですから、離婚後にペットを引き取ることになったものの、飼育費を請求することができず、その飼育が負担となったからといって、ペットを捨ててしまうことのないように注意しましょう。動物愛護法はペットを単なる物としては扱っておらず、ペットを遺棄することは犯罪であり100万円以下の罰金に処される可能性があります(動物愛護法44条3項)。
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離婚の際に夫婦間で行われる財産分与は資産の移転を伴うため、渡す側と受け取る側の双方に様々な税金の問題が生じてきます。
ここでは離婚時の財産分与に関わる税金の問題についてまとめてご説明したいと思います。
婚姻中に夫婦の一方が他方から財産を無償で受け取ることは夫婦間であっても贈与であり、原則として贈与税の対象となります。
しかし、離婚に伴い財産分与として相手から財産を受け取る場合は原則として 贈与税の対象とはなりません。
なぜならこれは財産分与が、夫婦が婚姻中に協力して蓄積した財産を清算すること、あるいは離婚後の生活費補助のための給付を受けたものと考えられているためです。
ただし財産分与の場合であっても、次のような場合は原則どおり贈与税の対象となります。
ここで言う「過当」と判断される場合について明記されているものはありませんが、通常2分の1を基準として分けられる財産が合理的な理由なくそれよりも多く分与される場合を指すものと考えられます。
ところで財産分与の場面でなくとも、夫婦間での土地家屋の贈与に対して贈与税が課されないという特例があります。
これは贈与税の配偶者控除という制度で、20年以上婚姻期間のある夫婦間で居住用不動産(ないしこれを取得するための資金)を贈与しても2,000万円までの部分は贈与税を課さないというものです(一般に「おしどり贈与」と呼ばれます)。
税負担なく名義変更ができますので、離婚を検討している夫婦がとりあえず自宅だけ妻の名義にしたいといった場合に利用することができる制度です。
ただ、この制度を利用される場合、贈与時点で夫婦であることが大前提となりますので、少なくとも離婚届を提出される前に贈与契約を成立させる必要があります。この点は十分ご留意ください。
財産分与として土地などの不動産、株式などの有価証券を相手に渡した場合、渡した側に譲渡所得税が課されます。
譲渡所得税は土地や株式などの値上がり益に対する課税で、通常資産の売却時に課される税金ですが、これが離婚時の財産分与による譲渡の場合にも対象とされます。
したがって、分与する資産の中に取得時よりも値上がりしている土地などがある場合は注意が必要です。
通常の売却に伴う譲渡所得税は、資産の売却価格から取得費等を差し引いた金額を所得として計算します。
財産分与の場合、この 「売却価格」に相当する金額がありませんので、分与した時の資産の時価を 「売却価格」に相当する譲渡所得の収入金額として税額を計算します(すなわち、この財産分与により土地等の資産を受け取った側が将来当該資産を譲渡する際には、この財産分与時の時価を取得費として譲渡所得税を計算することになります)。
また、不動産に係る譲渡所得税の税率は、その保有期間が5年超か5年以下かで異なりますが、財産分与に伴い不動産を譲渡した場合のこの5年の判定については、財産分与のあった年の1月1日を保有期間の終点として判断します(逆に受け取った側が将来譲渡するときは財産分与の日が保有期間計算の始点となります)。
ところで自宅を売却する場合に3,000万円までの所得には譲渡所得税が課されないという、いわゆる 「マイホーム特例」という制度がありますが、これは財産分与に伴い自宅を譲渡する際にも適用できます。
したがって、財産分与時の時価から取得費等を控除した金額が3,000万円以下であれば、自宅を譲渡しても所得税は課されません。
ただし、このマイホーム特例は、「売手と買手が夫婦など特別な関係でないこと」が要件とされていますので、離婚成立前に譲渡する場合には適用がありません。
この特例の適用を考える場合は、先の 「おしどり贈与」の場合とは逆になりますが、、離婚届を提出した後に譲渡(財産分与による名義変更)をする必要があります。
このマイホーム特例とおしどり贈与の適用要件を考慮すると、離婚に伴い自宅を相手に渡す場合は、20年の婚姻期間等の要件を満たす限り、2,000万円までは離婚前に贈与しておき、それを超える分は離婚後に譲渡しマイホーム特例の適用を受ける、という考え方が節税に効果的と言うことができます。
財産分与として土地や家屋の授受があった場合、不動産に関連する次の3つの税金についての課税関係も整理しておく必要があります。
不動産取得税は、土地や家屋を取得した場合に取得者に課せられる地方税で、不動産の所在する都道府県が課税します。
財産分与により不動産を取得した場合の取扱いについて明確には定められてはいないのですが、課税する側は、財産分与が婚姻中に蓄積した財産を清算する目的で行われている限りは不動産の取得とはみなさず不動産取得税の課税対象とはしないという取扱いにしているようです。
したがって、離婚に際しての不動産の分与が扶養や慰謝を目的としてなされている場合は不動産取得税が課税されます。
実務的には県税事務所から財産分与の内容につき問い合わせがあった際に、清算目的で行われた財産分与である場合はその旨を説明して、課税がなされないよう主張することになります。
財産分与に伴い不動産の登記簿上の名義を変更する場合、固定資産税評価額の1000分の20の登録免許税が必要になります。
固定資産税は、その年の1月1日に不動産を所有している人に対して課される地方税で、市町村が課税します。
課税に関する通知が届くのが毎年4月頃になるため、この存在を忘れていると、1月以降財産分与し所有者でなくなった後に納税の負担だけさせられるということが起きてしまいます。
不動産の売買が行われる際に売主と買主の間で固定資産税の負担につき所有期間に基づき日割り計算で事前に精算をしておくといったことが慣例として行われていますが、財産分与の際もこの固定資産税の負担につき当事者間に不公平感が生まれないよう、売買の場合と同様の精算を行うことを協議書などに定めておく必要があるかと思われます。
近年、国際結婚をする方が増えるとともに、国際離婚が問題となる場合も増えているかと思います。
離婚についての法律は、国によってさまざまです。
例えば、日本では当事者同士で話し合って行う協議離婚が認められていますが、裁判所を介さなければ離婚が認められない国も多いですし、フィリピンではそもそも離婚すら認めていません。
このように、どこの国の法律が適用されるかは、離婚できるか否かにも関わる大切な問題です。
日本人同士が離婚するとき、当たり前のように日本の法律を使います。
では、日本人と韓国人の夫婦の場合、日本法が使えるのでしょうか。
また、日本で暮らしている韓国人夫婦が、日本の法律を使って離婚できるのでしょうか。
今回はこのような「準拠法」の問題についてお話しします。
どこの国の法律を使うかというルールは、「法の適用に関する通則法」という法律が定めています。
同法律の27条及び25条によれば、次の三段階で準拠法を決定します。
1 夫婦の本国法が同一であるか
2 夫婦の常居所地法が同一であるか
3 夫婦に最も密接な関係がある地はどこか
まずは「1 夫婦の本国法が同一であるか」を考え、同一である場合は、その国の法律が適用されることになります。
「本国法」とは、本人の国籍のある国の法律です。
つまり、日本国籍を持つ日本人同士であれば、日本の法律が適用されますし、外国籍を持つ者同士であればたとえ日本に住んでいても外国の法律が適用されます。
問題となるのは、日本人と日本国籍を持たない外国人が離婚する場面です。
この場合、次の「2 夫婦の常居所地法が同一であるか」を考え、同一である場合は、その国の法律が適用されることとなります。
「常居所」とは、人が常時居住する場所のことです。
日本人の常居所は基本的には日本ですが、その日本人が日本を出国して5年以上経過していれば、出国先の国が常居所となります。
外国人の場合は、以下のように場合分けして考えられます。
・特別永住者、又は、永住者で1年以上滞在の場合 → 常居所は日本
・1年以下の永住者、ないし、短期滞在者 → 常居所は外国
このように、日本にいる日本人外国人夫婦の場合、外国人側当事者が日本に1年以上居住している永住者であれば、常居所は日本となりますので、日本の法律が適用されることになるでしょう。
常居所も共通でない場合、例えば、外国人側当事者が日本と外国を行き来していて、日本に1年以上滞在しないまま離婚となった場合には、「3 夫婦に最も密接な関係がある地」の国の法律を適用することとなります。
具体的にどこになるかは、個々の事情によって異なりますが、例えば、婚姻生活の大部分を日本で送っている場合には日本法が適用されるでしょうし、外国で大部分を過ごしているのであればその国の法律が適用されることになるでしょう。
離婚する際、準拠法や外国法による離婚がどのようになるのかについて悩ましい場合には、お近くの外国領事館へ問い合わせる、あるいは、専門家の弁護士へご相談されるとよいでしょう。
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