荒野(砂漠)には草木は育たず、実が結ばれることなどない。そのような隠喩でしょう。18世紀フランスのプロテスタントの婚姻を「荒野の婚姻」といいます。こうした婚姻から生まれた子らは嫡出親子関係を認められませんでしたから、この表現には嫡出子は生まれることはないといった意味合いが含まれているように思われます。
ナントの勅令が廃止され、次第にカトリックへの新改宗者とみなされていったフランスのプロテスタントは、法律上有効な婚姻をするためにカトリック教会で婚姻を挙行する必要がありました。しかし、プロテスタントの信者がカトリックの聖職者から許可を得ることは、決してたやすいことではありませんでした。
ある者たちは、王国に潜伏する追放されたはずの牧師の前で、密かに婚姻を挙行しました。1740年代には、グルノーブル高等法院、トゥールーズ高等法院、ボルドー高等法院がこうした秘密婚に厳しい有罪判決を下していたことが知られています。カトリックの主任司祭の前で婚姻を挙行しなおすまで(婚姻の補正式といいます)、事実上の夫婦から生まれた子らの相続権は認められないと判決で言い渡された夫婦もいました(グルノーブル高等法院判決1741年12月9日、グルノーブル高等法院判決1746年4月2日)。
実際、第5話でお話ししたように、ルイ13世の1639年11月26日国王宣言は内縁の夫婦のみならず、その子孫にいたるまで相続における無能力を規定していました。ルイ13世自身はプロテスタントの信者の婚姻にカトリックの方式を強いる意図は持っていなかったようです。しかし、18世紀前半の判例は、プロテスタントに対してもこの相続廃除の規定をあてはめたのです。プロテスタントがプロテスタントとして婚姻するための方式が欠けている王国で、法律婚の価値を高めようとすれば、否応なくカトリックの婚姻の方式をプロテスタントに強いることになってしまいます。今回は、1749年フランス西部コニャックの裁判所が作成した刑事訴訟手続のための調書をご紹介しましょう。僕ことジャン・ミシュレが「荒野の婚姻」について供述しています。
【調書】牧師が僕を結婚させた場所というのは、スゴン・ザック教区のネロル村にある雑木林のなかで、ラ・フォス・ド・ロブローと呼ばれるところでした。先月の9月9日から10日の夜か、10日から11日の夜の深夜零時ごろでした。・・・他にも多くのプロテスタントが集会に集まっていました。・・・僕たちは牧師の方へ歩み寄って、結婚させてくださいと頼みました。同時に、まず青い石で飾られた銀の指輪をひとつ牧師に見せました。ブリシエ牧師はその指輪を手にとって始めました。次に、アンヌ・ゴチエを妻として受け入れるかどうか僕に尋ね、アンヌ・ゴチエにも僕を夫として受け入れるかどうか尋ねたのです。僕らが「はい」とお互いに答えると、ブリシエ牧師はフランス語で「私は父と息子と精霊の名において汝らを婚姻させる」と言いました。それから僕に指輪を渡し、私はその指輪をゴチエの右手の薬指にはめたのです。
その後、ジャン・ミシュレには牧師から婚姻証書が交付されたといいます。合意の交換など、カトリックとの共通点も指摘されます。しかし、牧師の言葉はカトリック教会のようにラテン語ではなく、信者が日常使用しているフランス語でした。調書にはこの点がはっきりと記されていることがわかります。「荒野の婚姻」から生まれた子らの不安定な身分は、後に親の相続が開始された時、傍系親族からかっこうの攻撃の的となりました。この問題については、少し後で親子関係の身分占有にかんする判例について取り上げたいと思います。
(写真)ラベンダー
婚姻の合意の交換を聞き届けた後、カトリックの主任司祭ならラテン語で、プロテスタントの牧師ならその国の信者の語る各国語で「私は父と息子と精霊の名において汝らを婚姻させる」と言います。合意が存在することは婚姻において欠くことのできない要件です(実質的成立要件)。これに対して、カトリック教会で婚姻を挙行するのか、それともプロテスタント教会かといった方式の問題もあります(形式的成立要件)。
後に革命が起きたフランスでは、1792年9月20日「市民の民事身分を公文書に記載する方法を決定するデクレ」において、聖職者の関与を排除した民事婚という方式を導入しました。この方式は1804年民法典にも規定され、今も町役場では土曜日に町長の面前で民事婚が行われています。なおフランスでは、町役場で民事婚が挙行された後でなければ宗教婚をすることができません。刑法典433-20条(旧刑法典199条)は民事婚に先立って、常習で宗教婚を挙行した聖職者に対して罰金刑を規定しています。
土志田 佳枝(名古屋総合法律事務所事務員)
【論文】
「アンシャン・レジームにおけるプロテスタントの婚姻(一)フランス婚姻法の法制史的研究」名古屋大学法政論集240号(2011年)101-157頁
「アンシャン・レジームにおけるプロテスタントの婚姻(二・完)フランス婚姻法の法制史的研究」名古屋大学法政論集241号(2011年)55-105頁
夫婦でペットを飼われている方は多いと思います。
一般社団法人ペットフード協会によれば、平成24年度の全国の犬猫飼育世帯率は、犬が16.8%(前年度17.7%)、猫(外猫除く)が10.2%(前年度10.3%)ということです。
犬・猫を両方飼育している世帯があることを考えても、少なくとも5世帯に1世帯は犬または猫を飼育していると考えてよいのではないでしょうか。
犬や猫以外のペットを合わせて考えると、この割合はさらに増えるでしょう。
離婚に伴うペットの問題について、見ていきましょう。
日本の法律では、ペットは「物」としかみなされません。
例えば、ペットに怪我を負わされた場合、刑法上の罪名は器物損壊罪、民法上は物損事件として扱われます。
そのため、離婚の際にも、ペットは不動産や家財道具と同じように財産分与の対象となります。
子どものようにペットを可愛がっていたとしても、親権を定めることはありませんし、養育費を請求することもできないのです。
ただ、これはあくまでも法的には親権や養育費は問題とならないということですので、夫婦間の話し合いで、今後ペットにかかる飼育費用等の負担割合を決めることができれば、それは有効な契約といえるでしょう。
ペットは生き物ですので、預金や株式のように折半して取得することは、当然ながらできません。
車と同様、夫婦のいずれがペットを引き取るかを決めることになります。
どちらかが連れてきたペットである場合や、一方のみが引き取りを望んでいる場合には、それほど問題は生じないでしょう。
一方、夫婦のいずれもがペットの引き取りを望んでいる場合には、
ペットが財産分与の対象であることは上記で記載したとおりです。
そのため、ペットの引き取りも、基本的には通常の財産分与と同様に考えます。
夫婦が婚姻期間中に、夫婦の共有の財布からお金を支出してペットを購入した場合、そのペットは夫婦の共有財産となります。
その場合には、ペットの現在価値(市場で売却するときの値段)を評価し、引き取った方がその評価額の½を支払うか、又は、その評価額の½に相当する財産を譲るということになるでしょう。
夫婦の一方が結婚前に購入したペットの場合、そのペットは一方の特有財産となりますので、購入した方が引き取った場合には、他方に何かする必要はありません。
一方、まれなケースですが、一方の連れてきた特有財産としてのペットを他方が引き取る場合には、ペットの現在価値を、引き取った他方がペットを連れてきた方に支払うことになるでしょう。
ペットをいずれかが引き取る際にはペットの現在価値が問題になってきますが、通常の犬や猫であれば、1歳程度を超えると市場での評価額はほぼ無価値となりますので、引き取った側が評価額を支払ったり、評価額相当の財産を相手方に譲らなければならない事例は、実際にはあまりないでしょう。
離婚に伴い、夫婦の一方又は双方が転居したり、転職によりライフスタイルが大きく変わることも起こりえます。その際、ペット可の住宅に入居が可能か、ペットの世話をきちんとしていけるかを十分検討してください。
アメリカでは、離婚の際にペットに共同親権を設定し、離婚後のペットとの面会交流や、ペットにかかる費用の負担割合などを取り決めるカップルもいるそうです。
日本においても、当事者間で合意ができれば、このような取り決めも有効であると考えられます。
どのような合意をするにせよ、一度飼ったペットに対しては、最後まで責任をもって、ご夫婦もペットも幸せになるような解決策を模索してください。
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